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第12話 無慈悲な歴史

タヌキペン紛失事件が解決はしたが、憤り感じる悲しい事件の犯人は…… やはり『ヤス』だった。

クラスのみんなには茶番劇に付き合ってくれてありがとう! 感謝の気持ちは忘れない『シュウ』です。



教室で歴史の授業を準備していると


「シュウ、ちょっと良いか?」


「デッチャン、どうした?」


「いや、トイレに行きたいんだが、付き合ってもらえないか?」


「あぁ、いいぞ。ちょっと待ってくれ」


僕が歴史の準備が終わると、デッチャンに声を掛けた。


「準備が終わったから行こうか」


「――悪いな」


「なーに、気にするなよ。友達じゃないか」


「あぁ、そうだな」


二人でトイレに向かった。


『デッチャン』の名前はデッチャン・ライダー。

ライダー男爵家の長男で次期当主で少し騒がしいヤツだ。


――まるで果物のヘルメットを被り、電動バイクに乗っていそうなヤツだな…… やばいよ! やばいよ!


「こんなに大勢の生徒がいると、ちょっとトイレに行き難くてな」


デッチャンは、あまり一人で学院のトイレに行くのは嫌らしい。何となく解る気がする。


学院のトイレはベンチ椅子が並べてある。ベンチ椅子には何か所か穴が開いていて、その穴の下にはおまるが置いてある。あとで特別使用人がおまるに溜まった汚物を集めて、処理場に捨てることになっている。フロンシニアス王国と違うのは、全生徒数に対して十分数が足りているところである。なので校内は意外に清潔なのだが、隣りと隣りの間仕切りがない。 



――まさにフルオープン! オープン・セサミ!



隣りが上級生だと非常に気まずいらしい。一般的にはトイレ愛好家同士、世間話をしながら用を足す感じだ。


ちなみにトレスベン学院、寮にはシャワー室ではないが、常時、体を洗う所がある。風呂場の真ん中に大きなタライと大量の桶が置いてあるが、タライの中身は……

 

水である! お湯ではない! 決してお湯を沸かしてタライに運ぶのが面倒だからではない!


しかも、ただの水ではない。キンキンに冷えた冷水なのだ! 冷水なのには一応は理由があるらしい。冷水は筋肉をギュッと締める。という半信半疑な妄想話だ。 



――しかし真冬の冷水は、確実に極寒地獄行き決定だぜ!

 


なぜ、このような施設があるのかというと、筋トレをすると汗が出る。汗をそのままにしておいては、筋肉を美しく晒す事は出来ない。その為に身体を綺麗にするのだ。 


――見せる為じゃなく晒すのかぁ……





トイレに着き、中に入ると結構混んでいた。空いている椅子を探すと隣接で空いていたのでデッチャンと座る。用を足しながらデッチャンが話しかけてきた。


「次の授業は歴史だったろ」


「そうだけど」


トイレには、間仕切りが無い。最初は恥ずかしい所もあったが、今は慣れて、交友の場となっている。フロンシニアス王国の王宮でも時々だが、会議の場になる時もあった。



――まぁ正直。臭いけどな! 前世ではトイレに漫画本を持ち込んで長時間トイレに立て籠もって、妻によく怒られてたよなぁ……



「俺、歴史苦手なんだよな……」


「そう言う割にはデッチャン。歴史の成績良いじゃん」


「一応、テスト勉強だけはしているからな」


「そうなんだ。僕なんて授業についていくだけで大変だよ」


「シュウ、何言ってるんだよ! 慣れない土地に来て、一からの生活だろ! 勉強が少し置き去りになるのはしょうがないさ」


「デッチャン、君は良い奴だな」


「ハハハハッ、照れること真顔で言うなよ」


僕はこんな良い友達に恵まれて追放《留学》されて、良かったと思う。あのままフロンシニアス王国に居たら無能、役立たず王子として、一生を終えていたと思うと何のために生まれ変わったのかわからなくなるよなぁ……


お花摘みタイムも終わり、教室へ戻ってきた。



歴史のヒスト・リーファン先生の授業が始まる。


「まずは、教科書37ページ開いて」


教科書を開くと、『魔法と魔女の消滅』と書かれていた。


この世界に生まれ変わってから、魔法と言われる物を見たこともなければ、聞いたこともない。ましてや魔法使いに会ったこともない。この世界には魔法なんてものは存在しない。


前々世、前世では魔法なんて非現実的なものは無かったが、魔法や魔法使い、魔女っ娘はよくテレビや本には登場していた。まさにファンタジーの世界だ。


あっ! 魔法使いは実際に存在していた事を思い出した。確か童貞おっさんが30歳になると、魔法使いにクラスチェンジ出来たはず!


ヒスト・リーファン先生が授業を進める。


「教科書開いたか? では、魔法と魔女の消滅について説明するぞ。『魔法』とは、今から約400年前に存在していた不思議な力の事なのだが、現在どのような物だったかは、今だ解明はされてはいない。一部の研究者の話しでは指から火や水を出し、風を操っていたらしい。魔法を使う者を『魔女』と呼ばれていた。当時の人々はこの不思議な力。魔法を使う者を非常に恐れていた…… 魔法を使う魔女は悪魔と契約して国の破壊を企む背教者として、魔女の迫害へと繋がっていく。その迫害自体を国や教会が承認し、魔女裁判が行われるようになった」


先生は一呼吸置き


「罪に問われた魔女は結果ありきの裁判で、強引な方法で有罪にされ、処刑されたという。中には有罪となれば、その者の家の財産を国や教会が没収出来る為、金持ちの家の女性に魔女の疑いをかけて裁判にかけたという。また、政敵や気に食わない貴族、市民を貶める為に嘘の密告をして裁判にした事例もあったようだ。魔女裁判のほとんどが、無罪であり冤罪であったという。」


先生は憂鬱な顔をして


「このロースエニヤ大陸では4万から6万人の女性が冤罪で犠牲になったという」


昔の人たち…… 怖いな…… マジで怖いよ!……

お読みいただき、誠にありがとうございます。

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