第10話 聖女オブ聖女マリー・パワーネット
驚愕の入学式が終わり、あまりの衝撃で椅子から立てなくなった『シュウ』です。
腰砕けになりながらも、やっとの思いで教室に帰ってきた。
先に教室へ戻っていたパトリックの隣の席に座り、
「なぁパトリック、さっきのマリー・パワーネット様すごかったわ~」
僕が平民扱いなので貴族様には『様』を付けた方が問題は無難だと思い『様』を付けている。
「ああ、マリーはいつどこでもパワフルさ!」
はぁ! パトリックって平民出の特待生だよな! マリーって呼び捨てかよ! 不敬罪で処刑されても文句は言えねーぞ! 僕は無関係だからな!
「パトリック、呼び捨てはダメじゃないのか? 不敬罪になっても知らないぞ!」
「気にしない! 気にしない! マリーはそんな奴じゃないよ」
「そうなのか?」
「あぁ、気の良い奴で、話してみればわかるよ」
「でも、『オッス! オラ、マリー・パワーネット! 筋肉がワクワクすっぞ! 以上』ってどんだけパワフルなのさ! 美少女がオラって!」
「あ~あれね、誓いの言葉はね! 『オッス! オラ、〇〇名前〇〇! 筋肉がワクワクすっぞ! 以上』と言うのが伝統なんだよ。男子でも女子でも同じ事言うんだ」
「マジか!?」
――どんな伝統だよ……
「あとさぁ、学院長の筋肉! 凄かったよな?」
「シュウ、筋肉って言うのは古いんだよ! 今は『マッソォ』がオシャレさんの間で流行ってるだよ」
――某超人アニメオープニング『キン〇マン Go Fight!』を思い出したじゃねぇーかよ! Go! Go! Muscle!
「パトリック、何、筋肉談義してのよ」
パトリックと話しをしていると後ろから女子生徒が割り込んできた。
「あぁ、マリー! 学院長の話しをしてたんだ」
僕たちの後ろにあのマリー・パワーネットが立っていた。
「私の名前も出てたみたいだけど、悪口とか言ってないでしょうね?」
「君の誓いの言葉はサイコーだったって話だよ」
「恥ずかしいから、それは言わないで! あら、そちらの方は? 初めて見る方だけど……」
「フロンシニアス王国から留学して来たロッシュウ・アルパトス君だよ」
「フロンシニアス王国から…… アルパトスって王族の関係の方かしら……」
鋭すぎるぞ! マリー・パワーネット!
貴族が名乗らない限りこちらから話すことは出来ないので否定出来ない。
「私はパワーネット公爵次女マリー・パワーネットよ。『マリー』と呼んでくれたらいいわ」
「はい マリー様、フロンシニアス王国から参りましたロッシュウ・アルパトスです。『シュウ』とお呼び下さい。今後ともどうぞよろしくお願い致します。 あと、アルパトスはフロンシニアス王国では意外に多い家名ですので、私自身は王家とは関係ないのです」
「あら!? そうなの! じゃ、シュウ。これからよろしくね! でも『様』は要らないわよ。 お父様が公爵であって私は何も偉くはないわ。 学院内だし『マリー』で良いわよ。ただ、公式の場だけはキチンとしてくれたらそれで良いわ。困ったことがあったら遠慮しないで相談してね!」
「ありがとうございます」
「まだ、言葉が固いわよ。同じ一号生の仲間じゃない、普通の話し方で構わないわ」
「うん、ありがとう」
「あっ! 今度、私の屋敷で一号生のお茶会を開きたいと思うの」
「その時は、パトリックは来てくれるわよね? 勿論、シュウもあなたもきてくれる?」
マリーからのお茶会のお誘いだ! 答えは……
「「行かせていただきます!」」
僕とパトリックは同時にお誘いを受ける返事をした。
「うれしい! じゃ、日程が決まったら教えるわね! お土産とかは無しで手ぶらできてね!」
――平民扱いの僕とパトリックにも気を使ってくれるなんて、なんて出来たご令嬢さんなんでしょ!
「パトリック、シュウまたあとでね!」
マリーは自分の席へ戻って行った。
こんな気さくな貴族の上級令嬢っているんだなと暫し考えていた。
「おい、シュウどうしたんだい?」
パトリックが話しかけてきた。
「いや~ あんな気さくな公爵令嬢、初めて見たよ」
「マリーは昔からああだよ」
「昔から知っていたのか?」
「殆んどの一号生は初等部からの付き合いだらね。かえってシュウみたいに中等部からの方が珍しいんだよ」
「そうなんだ……」
この後、パトリックからマリーの事を聞いた。
文武両道、筋肉スレンダー美少女、誰に対しても平等に優しい、しかもかなり性格が良い! 考えらる限り非の打ちどころない! まさに聖女の中の聖女、聖女オブ聖女!
当然、一号生筆頭になれるわけだ! ――か、完璧〇人を発見か!?……
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