登校中に自転車に乗った女の子とぶつかり自転車になってしまったので二人の恋を見守りながら後方サドル面する
短編です
「暑すぎる……。なんで今日部活あるんだよ」
今をときめく現役高校生、佐藤玲はセミが鳴く道を歩いていた。俺が通う県立利津健高校は駅から歩いて10分の男子校だ。
サッカーが強い! という理由で入学したはいいものの……
「出会いがない……」
こんなはずではなかったのだ。近くに女子高はあるし、サッカー部の応援に吹奏楽部やチアダンス部が駆けつけてくれることも少なくない。ないのだが、可愛い女子はみんなレギュラーの先輩の誰かと付き合っている。
俺みたいなベンチにも入れない平凡な部員など相手にされなかった。
「こうなることを知ってたら共学の高校に入ってたのになー」
そんな愚痴をこぼしながら高校へと向かう。そこの角をまがれば、校門が見えてくる。
俺が角を曲がった瞬間、
「きゃああああああああ!」
ドッカーン!
俺は自転車にはねられ宙を舞う。余りの衝撃に意識が飛ぶ。
「熱っ!」
アスファルトのあまりの熱さに意識が戻る。体中が痛いが死んではいないようだ。
ってあれ? なんで俺の目の前に俺が横たわってるんだ?
でもこのシチュエーション見たことあるぞ!女の子とぶつかったってことは……
もしかして俺たち……
入れ替わっ
「チャリチャリッチャリィィィ!?」
なんて???????????????????????
今のは俺の声だ! 目の前の俺がしゃべった!
「うーん。はっ! ぶつかった人! すみません、大丈夫ですか!?」
俺の後ろで女の子が起き上がり、目の前の俺に駆け寄る。
あれ? 俺と女の子がいるってことは残っているのは……。俺は目線を下げる。
そこには前輪があった。
なんで俺と女の子の自転車が入れ替わってんだよ!?
「チャリッ! チャリリャリチャリィィィ?」
「なんてこと……。ぶつかった衝撃でまともに喋れなくなっているのね!?」
違うよ? 中身が自転車だからだよ?
「チャリン! チリチリ、チャリ?」
「でも分かるわ。私にこうなった責任を取れと言ってるのね。あなたみたいな強引な男性、すごくタイプ!」
俺の目の前で女の子と自転車のラブストーリが始まろうとしていた。
「安奈どこいくの?」
「お見舞い! すぐ近くだから自転車で行ってくる!」
「そう。夕飯までには帰ってくるのよー」
サドルに柔らかいものが乗る。安奈が俺のハンドルを握る。
……悪くないな。
どうやら自転車の奴、自転車だけに頭の回転が速いらしい。退院するまでの1週間で日本語をマスターし、学校に通い始めていた。
「また玲君の応援?」
「うん! 今、県大会の準決勝まで勝ち進んでるの!」
チャリ玲は持ち前のスピードを生かし、サッカー部のレギュラーに定着。チームを初の県大会優勝に導いた。安奈は吹奏楽部として毎試合応援に駆け付け、二人の仲も急速に縮まって行った。
いつしか俺は安奈の生活の足として、二人のことを見守るのが楽しくなっていた。
そしてプロになったチャリ徹は安奈に求婚。二人は無事に人生のゴールにシュートしたのだ。
「玲奈どこいくの?」
「友達と遊びに行ってくる! 自転車借りるね!」
「夕飯までには帰るのよ」
玲奈ちゃんは元気よく玄関を飛び出す。
「あ、そうだ! お母さんは何でお父さんと結婚したの?」
「えー? 好きな人でもできた?」
「そっ、そんなんじゃないけど!?」
「ふふっ。それはね……」
俺がいなければ、二人は結婚してなかったんだぜ? でもまあ本当の事を全部話してしまうと玲奈ちゃんの頭がパンクしてしまうからな。
自転車だけにね!!!!
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