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お題小説

ゴミ箱

作者: 水泡歌

 ここに、何でも捨てられるゴミ箱がある。

 高さも重さも大きさも存在も何も関係なく捨てられる。

 そんなゴミ箱があったら、あなたは何を捨てますか?


 1人の老人がやってきた。

 老人はゴミ箱を開けて一つ叫んだ。

「わしの老いによる病気を捨てさせてくれ」

 ゴミ箱は一度小さく揺れると老人から老いによる病気を受け取った。

 老人はそれまで曲げていた腰をピンとのばし、軽やかにその場から去っていった。

 老人の老いによる病気は捨てられた。


 1人の少女がやってきた。

 少女はゴミ箱を開けて次々といろんなものを捨てた。

 手紙、写真、プリクラ帳、携帯電話……。

 少女は全てを捨て終わると、すっきりした顔でその場から去っていった。

 少女の周りの人々との思い出は捨てられた。



 1人の小太りの中年男がやってきた。

 男はゴミ箱を開けて叫んだ。

「俺の地位を捨てさせてくれ」

 ゴミ箱は小さく揺れると男から地位を受け取った。

 男は携帯電話でどこかに電話をするとニヤッと笑い、「これで自由だ~!」と言って去っていった。

 男の地位は捨てられた。




 男が去った後、ゴミ箱にはしばらく誰も来なかった。

 しかし、しばらくたって、前に来た老人がやってきた。

 老人はゴミ箱をあけ、焦った様子で叫ぶ。

「前に捨てた物を返してくれ! わしのばあさんが死んでしもうた! こんな健康な体はもういらん! 1人で長生きなんてしたくないんじゃ!」

 ゴミ箱は何も反応しない。

 老人がうなだれていると、次は前に来た少女が来た。

 少女は老人をどかすと、必死にゴミ箱に叫んだ。

「前に捨てた物、やっぱり返して! みんなと仲直りしたいの! あれが必要なの!」

 ゴミ箱は何も反応しない。

 少女が泣いていると、次に前に来た男が来た。

 老人は少女をどかすとゴミ箱に叫んだ。

「俺の地位を返してくれ! 自由なんていらない! こんな不自由な自由なんていらない!」

 ゴミ箱は何も反応しない。

 男はその場に崩れ落ちた。



 ここに、何でも捨てられるゴミ箱がある。

 高さも重さも大きさも存在も何も関係なく捨てられる。

 ただし、一度捨てたら二度と戻ってこない。


 そんなゴミ箱があったら、あなたは何を捨てますか?

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