漁夫の利
ここは魔王が住処とする“魔王城”であり、城の周りは高い城壁で囲われている。
城の入り口に向かうには、まず、ここの城壁の門を通る必要があり、そこには警備兵として身長3メートルの巨人が2体配置されている。
「おい、聞いたか?勇者がこちらに向かってくるそうだぞ」
門の横に立つ一人の巨人がもう一人の巨人に話しかける。
「勇者が誕生したとは聞いたが、もう来るのか」
「ああ、しかも一人でだ。」
「なんだと!」
もう一人の巨人は大変驚いている。というのも、勇者が魔王城に来るときはいつもなにかしらの仲間と一緒であり、決して一人では来ない。
相当、自分の腕に自信があるものかバカに違いない。
「ここまで来ているのだ。相当、強いのだろう」
「いや、装備が見る限りしょぼいそうだ。装備している武器が木の棒らしいぞ!」
先ほど驚いた巨人がもう一度驚く。魔王城のまでの道のりには強力なモンスターが存在しており、木の棒でここまで来るのは無理だと知っているからだ。
「どうやってここまで来たのかは知らないが、ここは俺一人に任せてもらおう」
「おい、せこいぞ。そうやって手柄を立てるつもりだろう。俺が教えたのだぞ。俺が一人で戦う」
「俺のほうが強いのだ。お前はそこで見ているのだ」
「いいや、俺のほうが強い。お前の方こそ見ているのだ!」
「そこまで言うなら、どちらかが倒れるまで戦い、残ったほうが戦うというのはどうだ?」
「いいだろう。すぐに勇者が来るわけでもないからな」
「ここは戦うのには狭すぎる。手前の森の奥にひらけた広い場所がある。そこに向かおう」
2体の巨人は森に向かって歩き始め、森の奥へと進む。森の中に完全に入った後に、一人のある人物が手前の道からやってくる。
「あれっ、門番いないじゃん、ラッキー。今日は休みなのかな?」
勇者マモルであった。
「漁夫の利」
【意味】
当事者同士が争っているうちに、第三者が何の苦労もなく利益をさらうことのたとえ。