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鳴らせ!恋の防犯ブザー


 コンビニエンスストアとか言ったな、この店は。

 食料品店の一種だが、それ以外にも色々なものが置いてある。24時間営業を謳っており、閉まることはないらしい。24時間働けるとは、一体どんなタフガイが店番をしているのだろうか。

 デイヴのクソ野郎にも見せてやりたい。見習わせたいが、無理だろう。

 あいつなら、きっと言うはずだ。「うちの店だって休み無しだ。休んでるのはお前ら客の方だ」と。


 酒の種類も豊富だが、法律とやらが邪魔をして、今の俺には売ってくれないのが残念だ。不満と言えば、それくらい。


 ええと、なんの話だったかな。そうだ、コンビニだ。

 学校帰りの俺は、クラスメイトの女の子が、コンビニの前に立っているのを見つけた。

 まず間違いなく、俺のことを待っているのだろう。


 これは別にうぬぼれなんかじゃない。勝手に向こうから食いついてきたんだからな。ファッキンビッチってやつだ。

 アジアの女性がミステリアスだのって持ち上げられてたのは、いつのことだったか。

 結局男は、昔から(ジャック)に夢中になってるって証明されただけの話だ。顔や体なんかどうでもいいんだろう。


「ああ、佐倉じゃないか」

「インギー君!」

「待っててくれたのか?」

「ええ。誰にも見られてない?」


 そうだ、この女がサクラ。俺の探している女だ。少しだけ警戒はしたものの、カタナも持ってないし頭だってカエル並みだ。要するにガキなんだろう。


「別にいいじゃないか、見られたって」

「もう、言ったでしょう、うちはこういうの厳しいんだから。何かあったら、インギー君にも迷惑がかかるわ」

「オレは別にかまわないけどな。どう、少し家に寄って行かないか?」

「ダメ。今日は委員会のことがあったから、これ以上遅くなるとまずいわ」

「なら、ムリして待っててくれなくても――」


 おい、クサレ吸血鬼よ。どこかで見ているか?

 このくだらないやりとりは必要なのか? 俺の部屋でなくとも、保健室にだってベッドくらいあるんだぜ。

 胸やけがしそうな会話はまだ続くのか? それとも、次はフラグを立てろってことか?


「……他の女の子に告白されても、付き合っちゃダメだよ?」

「わかってる」

「じゃあね、また明日、学校で」


 ウソだな。いや、ウソというのとは少し違うか。

 わかっているさ。誰に声をかけたって、なんだかんだで許してくれるんだろう?

 お前の友達だって、こっちを見ていたことを知っている。たしか礼ちゃんとか言ってたな? 乳がでかい、レイチェルの面影がある女だ。あいつもきっと俺に惚れているはずさ。

 楽なもんだ。

 フラグが必要なら、片っ端から立ててやるさ。

 礼ちゃんとやらも、攻略対象のはずだ。



 初めての経験だった。

 ダイヴしたとき、普通は現実のことなんかろくに覚えちゃいない。まるで夢の中にいるように、脳みそのある部分にフタをされるのだ。


 今回のことは、イレギュラーなのだろう。バグかもしれないし、吸血鬼のおかげなのかもしれない。

 ただ一つ言えるのは、こんなイレギュラーなら大歓迎ってことだ。

 現実(リアル)からゲームのノウハウを持ってくるのが、こんなに楽だとは思わなかった。

 まあ、向こうは俺のことを殺そうとしたのだ。これくらいちょうどいいハンデだと思ってやろう。


 笑いがこみ上げてくる。

 サクラ。すぐにお前を落としてやる。


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