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アンダーバスト


 俺は反省した。

 やらかしてしまったかもしれない。


 布教活動という名の金稼ぎをさぼって公園で休んでいた俺は、数日前に魔力を増強してやった女性に偶然出会ってしまった。

 あのときは顔を隠していたが、この特徴的な魔力の流れは覚えている。殺気を発していたことも思い出した。


 狙われるのはごめんだが、この女個人に恨みがあるわけではない。話を聞くと悩んでいたようだ。

 ひどい組織だ、本人が望まぬ魔力増強を施すなんて。いや、実際に施したのは俺なのだが。


 ということで助けてやったはいいけれど、この女、やけに俺にべたべたとくっついてくるのだ。


 女の名前は確か、ヒューラだったか。キャンポーテラ教のそこそこ偉い人のはずだ。

 ナウマンダーヴ教のとても偉い俺と一緒にいて、いいのだろうか。それこそ過激派に攻撃されないか。


 ヒューラは言った。

「たしかイングウェイ様とおっしゃいましたね。私、間違っていました。胸なんて、こだわるべきではなかったのです。大きかろうが小さかろうが、どうでもよろしいことですのよ」


「ふむ、それは斬新な意見だ。魔力量は多いほうがいいのではないのか?」

「魔力? 私が言っているのは、女性の魅力としての胸のことですわ。イングウェイ様のように、全ての男が胸の大小で女性を差別せず、中身を見るようになってくれればいいのに」


 俺は混乱していた。何を言っているのかわからなかった。

 胸の中身とは、この世界では魔力のことを指すはず。そして魔力とは胸の大きさ。魔力量を見ずに、中の魔力を見る、だと……? この女は一体何のことを言っている。


 待てよ、彼女はたしか宗教関係者。ということは、これは禅問答のようなものか。

 しまった。気付くのが遅れてしまったが、俺は、いつの間にか試されていたのだ。


 胸の大きさに限らず、変わらないもの。本当の値。


「ああ、なるほど、そういうことか」

「どうしたんですか?」

「ふふ、別に。君の言いたいことがやっとわかったんだ」


「あら、そんな……。ぽっ」


 ヒューラは顔を真っ赤にして、ほっぺたを抑えて可愛らしくうつむく。


「アンダーバストだろう?」

「……はい?」

「だから、アンダーバストさ。この国では言い方が違うかもしれないが、この位置のことだ」


 俺はそう言いながらヒューラの胸の下のあたりを指でなぞっていく。

「ひゃぅんっ!」

 胸の大きさというものは、単なる容量でも重さでもない。形は重要だが、カップ数という指標もある。

 美しい胸に大切なのは、アンダーバストの数値。

 それを考えずに魔力を注ぎ込めば良いと考えていた私が浅はかだった。



 俺はアンダーバストを慎重になぞりながら、その上の部分に魔力を集めていく。

 今度は失敗しない。

 形のしっかりと整った、美しいバストが生まれる。


「これで良いだろう。服が少し乱れていたので、ついでに直しておいた。乳袋はおまけしておこう」


「え、……ちょ。え、はいぃ? これって……」

 ヒューラは感動のあまり、声が出ないようだ。


 おっと、俺もあまりさぼっていてはまずいな。そろそろ帰らないと。

 俺は戸惑うヒューラに別れを告げ、公園を後にする。


 

「結局、あなたも大きいおっぱいが好きなんですかーーーっ!」


 ヒューラの絶叫が公園にこだました。


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