エンター・ザ・診療室
「いやですー、そんなに引っ張らないでくださいよー」
俺は泣き叫ぶサクラを引きずるようにして、レイチェルの診察室に連れていく。
「ねー、別にどこも痛くないですってー」
何を言っている、自覚症状のない病気なんていくらでもある。素人の自己判断はキケンだ。
「お願いします、イングウェイさん、見逃して―」
ダメだ。お前はレイチェルの治療を受ける必要がある。
「こんな状態であの子の前に出るとか、拷問ですー」
なんだそれは。
ダンジョン攻略後のレイチェルは、背がすっかり縮んでしまった。胸だけは以前よりも大きくなったように見えるが、今ではただの幼女である。
体の変化というのなら、レイチェルのほうがよっぽどひどい。
わがままを言うな、レイチェルだってあんな体になったというのに、悲観せずに頑張っているんだ。
そんな俺の励ましも、サクラには届きはしない。
「だからー、それが嫌なんですよー。こんな胸でレイチェルの隣に行くとか、かんっぜんに比べられるじゃないですか。敗北ですよ! 私の ただいちどの はいぼく!」
サクラ、俺は君の体が心配なんだ。頼むから言うことを聞いてくれ!
俺は心を鬼にして、診察室のドアを開けた。




