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勝利ッ!!


 俺たちが奥に進むにつれ、レイチェルの記憶喪失はひどくなる。

 気が付くと、レイチェルは幼女になっていた。


「なんでちゅか、そんなじろじろレディを見るとか、失礼でちゅよ!」


 その豊かな双丘は悲しいほどにつつましやかで控えめに、というよりも、どこかへと消え去っていた。


「まずいな、急いでボスを倒さないと」

「倒すのは良いとして、これ、本当に元に戻るんですの?」


「あーっ、待つでちゅ! れいちぇるを置いていかないでくだちゃいー!」

「はいはい、みーが抱っこしてあげますからねーにゃん」


 俺たちは先を急ぐ。

 奥に行くほどに瘴気が濃くなっていく。


「お前たち、大丈夫か?」

 少しでも負担を軽減しようと防御魔法を展開するが、どうにも効きが悪い。編み上げた魔力がそのまま分解されていくようだ。


 いくつかの階段を降りると、そこからは空気が変わった。湿った空気に、鍾乳石のようなつるつるとした岩壁。

 くねくねとした回廊をさらに進むと、大きな空間にでた。


 奥にいたのは、巨大なマッシュルーム・ドラゴンだった。

 体の奥深くから、濃い魔力の波動を感じる。


 ぐぎゃーと空を切り裂くような叫び。

 その叫び声を聞くと、体から力が抜けていく。

 マッシュルームだけでなく、マンドラゴラの成分でも入っているのか?


 脳筋ダンジョンの奥のボスだから、どんな怪力のモンスターかと思えば、ヒステリックな植物系だったとは。




「いんぎー、わらわは、立っているのもつらい、ですの」


 なるほど。そのときようやく、俺はこの呪いを理解した。


 レイチェルの次に影響を受けたのは、キャスリー。そしてフィッツと俺には、まだ余裕がある。

 呪いは魔力に影響していたわけではなく、筋肉量だったのだ。筋肉量が少ない順に、力を奪われているのだ。


 この世界では、魔力は胸にたまる。

 しかし胸が無い女性はもちろん、男性も、闘気や肉体強化という形で魔力の恩恵を受けている。なぜか?


 その秘密はおそらく脂肪にある。魔力がたまるのは胸ではなく、厳密には脂肪なのだ。

 そして女性の胸の脂肪は、魔力をためておくのに非常に良質だとすると、女性の胸の大きさ≒魔力量という理論が成り立つのも無理がない。

 

 そしてもう一つ重要なことがある。筋肉には、魔力を固定・定着させる働きがある。男性でも少ない魔力で肉体強化ができる理由であり、さらに言えばレイチェルが呪いの影響を一番強く受けた理由でもある。


 すなわち、レイチェルは一番大きな魔力を持ちながら、それを吸い取られるのを防ぐ手段に乏しい。



 このダンジョンで筋肉系モンスターが多かった原因も、こいつにあるのだろう。

 マッシュルーム・ドラゴンの影響下では、むき出しの魔力は良い餌食だ。レイチェルの胸のように。

 ここで生き残れるのは、筋肉量が多いモンスターのみ。



「どうしましょう、インギー」


 決まってる、倒すぞ。


 俺は黒い剣を取り出す。マリアに鍛えてもらった、魔力を散らす剣、魔術師殺し(メイジキラー)だ。

 俺が剣を振るたびに魔力の流れが乱される。マッシュルーム・ドラゴンが吸い込み、食らっている魔力が、別方向へとかき消されていく。


 俺たちはがんばって勝利した!


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