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おうちに帰ろう


 旅立ちの前に、俺たちは全員でフィッツの住処を訪れた。

 地底湖のほとりにある墓の前で、フィッツは手を合わせる。

「お父さん、エマーソンさん、行ってくるね」


 エマーソンさんか。きっと誇り高いマンティコアだったのだろう。

「ねえレイチェル、マリアみたいにエマーソンさんも生き返らせられないんですの?」

「ムリね。死体は残っていても、魂がすでに無くなってるわ。それに彼女だって、そういう再会を望んではいないでしょう?」

「そうなんですのね。ごめんなさい」

 大丈夫だ、きっと気持ちは伝わっているさ。


「そういえば、ミルメコレオってすぐに死んじゃうんですよね? よくその、えーと、子供が作れましたね」

 レイチェルの問いに、フィッツは言った。

「少しだけ長生きしたんだってさ、うちのお父さん。なんでも尻尾が蛇だったから、卵を飲み込んでゆっくり消化してたとか」


 は? 尾が蛇? マンティコアもたしか、尾が蛇だったな。

 ……もしかして。

 俺の脳裏にある可能性が浮かんだ。

 もしかして、エマーソンとやらは、フィッツの父の父、つまり祖父にあたる人物だったのかもしれない。

 そしてフィッツは、マンティコアベースのミルメコレオと、人間とのハーフだ。蟻の血が薄く見えるのも、そのせいか?

 だが、今更それを伝えてどうなるというのか。


 ここはエマーソンズ・レイク。悲しい獅子の親子が眠る地だ。




「おっかえりー! お土産は? ねえ、お土産ある?」

「にゃあああー! ゾンビだにゃあ!」

 帰宅した俺たちを待っていたのは、マリアの歓迎。驚愕するフィッツ。


「なんだよ、失礼しちゃうなー」

「まあ、そういうな。こいつのおかげで、うまい酒が造れそうな地底湖を見付けたんだ」

「むー、インギーがそう言うなら……」

 へそを曲げるマリアを、俺はなだめる。


 だが、マリアにとって空振りだったのも確かだ。

 そう簡単に見つかると思っているわけではないが、酒に弱い彼女を救うため、早く毒消しのアイテムを見付けなければ。


「さて、とりあえずは歓迎パーティーと、冒険者登録ですね」

 レイチェルは早くもビールの瓶を出してきて、飲む気満々だ。

 こいつは本当に底なしだな。

 戦いもせずに、ダンジョン内では飲むしかしていなかったはずだ。まあいいけど。


「あ、インギー、皆がいない間に、王様の遣いから、手紙が届いてたよ。はいこれ」


 ん? 裏を見ると、確かにアサルセニア王家の紋章があった。

 ああ、また厄介ごとなのだろうか。重たい気持ちで封を切る。


 手紙を読み、ため息を吐くと、皆を招集する。


「さて、お前たち。ちょっといいか」

「「「はい」」」


 このギルド、ミスフィッツは、基本的にただのEランク冒険者の集まりだ。

 ひいきにしてくれるのはありがたいのだが、依頼に関しては、もっと別の高ランク冒険者に回した方が良いと思うのだが。


エマーソン……フィッツの育ての親であるエマーソンの名は、ELPの略称で知られるバンド、エマーソン・レイク・アンド・パーマーから取りました。

 レイクは地底湖として登場しましたが、元はグレッグ・レイクさんという人名です。

 マンティコアの名が付いたアルバムもあります。

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