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アルコール・イン・マイ・マウス


「――『私は振り向き、お前の顔を覗き込む。

 鏡の中で泣き叫べ、寒さでのたうち回るがいい。

 無数の茨がお前を貫く』


 ――≪横たわる無数の茨(ライイング・ニードル)≫!」


 枝分かれした魔力の光が床を伝い、モンスターに触れると次々と巨大な石筍となって実体化する。


 ぎゃうっ、ぐぎゃあー、がおー、ぐふゅっ。



「ふう、久しぶりにまともに呪文の詠唱をしたな」

 獅子たちの死体の中、俺は大きく息を吐いた。

 詠唱は魔法の発動の補助となる、大切な手順だ。その中には、魔法の方向や威力の指定も含まれる。

 慣れてきたら省略することはできるが、酔っぱらって使用する場合には、やはり詠唱を推奨する。

 これは何も魔術に限らない。工場内でも同じようなことをしていた。指差し確認、ヨシ!だ。



 サクラが消えていった暗闇の先に、目を向ける。遠くで激しい魔力の躍動を感じる。

 俺にできるのは、サクラを信じることだけだ。


 吐き気は少しだけ収まってきたが、肉片の数を数える気にはなれない。めまいがする。

 数えられないわけではない、数える気がしないだけだ。

 俺の体をむしばむ(アルコール)は、まだまだ増加中だった。

 そう、懲りずに俺は飲み続けている。

 チェイサー代わりの梅酒ソーダ割りは、キャスリーから奪った。


 仕方ないのだ、眠るキャスリーと力尽きたレイチェルを置いて、ここを離れるわけには……っと、いろいろと考えているうちにサクラが戻ってきた。なんと、獣人の娘も一緒だ。



「イングウェイさーん、ってうわ! なんですかコレ! すっごい、大惨事ですよ!」


「ああサクラ、実は5匹以下の獅子(ライオン)に襲われてな」

「4匹しかいませんよ!?」

「じゃあ4匹だ。とりあえず倒しておいた。うえっぷ。……ところでそちらの娘さんは?」

 俺はサクラの後ろでドン引き気味の獣人に声をかけた。


「え? ああ、フィッツ・マクバーニィさん。獣人族らしいですよ。ええと、猫娘?」

 サクラは、美しい銀髪にぴょこんと飛び出た猫耳を見ながら言った。

 フィッツという娘は、思い出したように自己紹介をする。

「あ、はい、猫人族のフィッツです。さっきサクラさんに助けてもらったんですにゃん、ありがとうございましたにゃあ」


「猫族?」

 ああ、確かに猫耳だが。たぶんこいつ、混ざっているな。


「お前、猫ではなく獅子(ライオン)だろう? もっと言うと、ミルメコレオだ。珍しいな、人獅子蟻(ウェアミルメコレオ)とは」


 言葉を失い、絶句するフィッツ。あれ、何か俺、まずいことでも言ったか?


「にゃなな、にゃにーっ? みーのことを一目で見抜くとは、貴様、何者にゃん?」


 何者かと言われても、今はただのEランク冒険者だ。

 だいたい見た目で判断するから間違うのであって、きちんと内在する魔力を感じ取れば、蟻が混じっていることくらいわかるだろう。


 俺がどこから説明すべきか困っていると、フィッツが口を開いた。

「お願いですにゃん、このダンジョンから外に出たいんです、助けてくださいにゃん」


フィッツ・マクバーニィ……ビータリカのベース、クリフ・マクバートニーから名付けました。(クリフ・バートン+ポール・マッカートニー) 字面で見るとかっこいいのですが、バーニィの『ィ』が地味にめんどくさく、いつかミスタイプしてしまいそうで心配しています。

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