人生ってやつはさぁ、
最近ダウナーな話が続いているので、テコ入れしていきます。
という決意を忘れないように書き記す。
「ただいまー」
「「「おかえりなさいー!」」」
サクラとレイチェル、そしてマリアが出迎えてくれる。やはりホームというのは良いものだ。
さて、まずは自己紹介だ。
「みんな、これから仲間になるキャスリー・レノンフィールドだ」
キャスリーは言った。
「これから当分のあいだ、おじゃますることになるわ。よろしくお願いするですの」
突然の来客。そして新入生歓迎コンパ。ほへー、とあきれ顔のサクラとレイチェル。そして――
「イラッシャイ、マセ! きゃすりー・サン。ワタシハ、ぞんびーデス、ナマエハまりあ、まり、うごええぇっぇーー」
マリアが急にがたぴしと妙な動きをすると、口からアルコールを吐き出しつつもキャスリーにとびかかった。
大パニックに陥るキャスリー。酔ったままケタケタと笑い転げるレイチェル。
大混乱だ。
「っきゃああああーーー!!ですのーー!」
キャスリーは涙目で玄関から飛び出す。ううむ、恐怖で呪い(お漏らし)が再発しなければよいのだが。
「おい、マリア、やりすぎだ。……マリア?」
「おええー」
「ほらほら、ゆっくりしんこきゅーですよ。すぐ水を持ってきますから」
サクラが手慣れた様子で、優しく背中をさすってやる。
事情を聞くと、どうやらマリアは酒に弱かったようだ。焼酎でゾンビの体を消毒し、維持するのはいいのだが、その代償として常にひどい二日酔い状態。いや、万年酔いと言うべきか。
まずいな、これは。
どこかに良い酒はないものか。
「イングウェイさん、ダンジョンに潜ってみるってのはどうです? 冒険者らしく」
レイチェルが悩む俺にアドバイスをくれた。
ふむ、ダンジョン?
「懐かしいな、この世界に来てからは潜っていなかったが。魔法武器や伝説のアイテムも、当然ポップするんだろうな?」
「もちろんです。あのですね、酔いも毒の一種ですから、常時毒を中和してくれるアクセサリーなんかがあれば、ビールをもっと飲めますよ! やったー!」
お前、マリア助けたいのと自分が飲みたいのと、どっちが目的だ。
しかし、いい考えかもしれない。
「よし、ではキャスリーのギルド参加祝いも含め、適当なダンジョンに潜ってみるか!」
パーティーメンバーは4名。
前衛のサムライ、サクラ。銃で攻撃しつつ、場合によっては剣でサポートもできる中衛のキャスリー。そして、後衛から死霊術で戦い、回復――ゾンビ化ではない、普通のやつだ――もできる魔術師レイチェル。
最後に、万能タイプの俺。
うむ、たまたま集まったメンバーにしてはバランスがいいかもしれない。
「じゃ、すぐ準備しましょう! キャスリーさんは、まずギルドで冒険者登録からですね!」
冒険者としての生活か。懐かしい。
それにしても、つい数か月前までは日本の工場で魔法を隠して働いていたというのに、人生とはわからないものだ。
自分を慕ってくれる存在がいるというのは、良いものだ。
人生の、冒険者の先輩として、彼女たちの笑顔を守ってやろう。彼女たちもそのうち成長し、巣立っていくのだ。
それを見送る第三の人生というのも、悪くはない。
その時の俺は、まさか彼女たちが俺に恋心を抱いているなんて、思いもしなかった。




