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人質にはさせないさ


 城には俺とレイチェルだけで行くことになった。

 サクラは万が一に備えて待機させておく。あの時、女装をしていた俺はともかく、サクラは顔を覚えられている可能性が高いからだ。


 それに、またいつ王都が襲撃されて、メンバーが危険にさらされるかわからない。さすがに骸骨(マリア)になってしまうのは不憫だ。護衛はつけないと。


 俺に誘われたレイチェルは、不安そうだった。

「ついてこいっていうなら行きますけどー。でも、私、いざ戦いになったら足手まといですよ? 人質にされたら、迷惑かかっちゃいますよ?」

「そんなことさせないさ。それに、レイチェルが戦力外なのはわかっている。まさか王城に死体(グール)幽霊(ゴースト)を連れて行くわけにもいかないからな。大丈夫だ、俺達の命が狙いだというなら、こんな回りくどい手なんて使わないさ」


「そうですかねー?」


 うーん、お前一人くらいのほうが、かえって守りやすいんだけどなあ。

 それに、この世界の常識や政治などに一番詳しいのは彼女だ。

 頼りにしている。そう言うと、レイチェルは少しだけ笑ってくれた。



 城についた俺たちは、メイドに案内されて城の一室に通された。ずいぶん奥まった部屋だ、窓もない。部屋の入り口を通るとき、魔術結界をくぐった時のような違和感があった。

 のほほんとしているレイチェルに悟られないよう、俺は警戒レベルを2つほど上げておく。


 長いテーブルに座らされて茶を出されるが、当然口を付けずに待つ。


 少しして、二人の男が入ってくる。入り口に立っていた兵士たちは、緊張した様子で敬礼する。

 おいおい、そう緊張していてはとっさの時に動きがにぶるぞ。優しい俺は兵士の心配をしてやった。


 あ。


 入ってきた二人の男のうち片方は、見覚えがある。

 あの時とまるで様子が違うのですぐには気付かなかったが――


 俺は立ち上がり、さっと頭を下げようとする。え?と戸惑うレイチェルに、俺はそっと耳打ちする。

「この男は、この国の王だぞ」


「ふえっ? ええっ、おうさまぁ?」


 大声を出し、慌てるレイチェル。ため息をつき、うなだれる俺。


 そんな俺達を見て、王は気さくに笑って言った。

「はっはっは、まあよい、今回はお忍びみたいなものだ。楽にしてくれてかまわん」

 王に促され、再び椅子につく俺たち。


「さて、私はリチャード・トレント・アサルセニア。アサルセニアの国王だ」

「は、はいー」

 レイチェルは、テーブルに頭を擦りつける勢いで小さくなっている。


「で、その王が俺に何の用だ?」

「おい、貴様、少しは礼儀というものをだな……」

 隣の貴族が俺に小言を言ってくる。あいにくだが俺は、マリアのことで機嫌が悪い。仲間が死ぬ原因になった相手に、簡単に頭を下げるつもりはない。


「ごたくはいい。それより、何の用だと聞いている」


「かまわん、大臣よ。表面だけへりくだった態度をとる輩より、この男の方がよっぽど正直で信用できる」

「しかし……」

「わしが良いと言っているのだ」

「は、はい」


 王がじろりとにらむと、大臣はそこで沈黙した。


「まずは礼を言わねばな。君たちのおかげで、あの魔族を無事撃退することができた。情報はいろいろ集めさせてもらったよ。街で活躍した女魔術師や女騎士というのは、そなたたちのことだろう?」


「なるほど、そこまでわかっているということは、お飾りの王ということではないようだな」

「イングウェイさんっ!! しーーっ!」

 レイチェルの顔はすでに蒼白だった。


「はっはっは、正直だな。そんな君たちを信用して、一つ頼みがあるのだ。私からの直々の指名依頼だ、受けてくれるかね?」


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