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嘘つき

 俺たちはレイチェルの家へと戻ってきた。


「レイチェルー、もどりましたよー?」

 サクラが警戒しながら、ゆっくりと歩みを進める。モンスターもだが、混乱の中で暴漢が入り込んでいないとも限らない。なかなかいい心がけだ。


 まあ、魔力で探知する限りは大丈夫なんだけどな。油断するよりはずっといい。


 地下室へと降りていく。

 がちゃりとドアを開ける。



 カタカタと俺たちを出迎える骸骨(スケルトン)の奥で、ベッドに寝かされているマリア。

 俺が近づくと、なんと死んだはずのマリアが、のそりと起き上がった!


 マリアはこちらを見て、言った。

「ア、いんぐうぇい・サン、オカエリナサイ。ボク、イキカエッタヨ!」


 どことなくぎこちない動作で立ち上がるマリア。艶のある青い髪こそそのままだが、顔は青白く、ところどころに荒い縫い目が見える。

 こちらを見てはいるものの、その目からは感情が読み取れなかった。


 前の世界にはフランケンシュタインズ・モンスターという怪物がいたが、彼の花嫁にぴったりだろう。


 レイチェルはぐったりと壁にもたれかかり、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てていた。

 おそらく魔力を限界まで使ったのだろう。


 俺は笑顔でマリアを受け入れた。

「良かったよ、死ななくて。いや、死んだのか。とりあえず、無事生き返ってくれて、良かった」


「よくないですよー! マリアさん、まりあさぁんっ。ぐずん、へぶしっ、ずびー」

 泣くな、鼻をかめ。


「ぞ、ゾンビ―になっちゃって、かわいそう。うええーん」

 泣きじゃくるサクラに、俺は言った。


「受け入れてやれ。マリアだけではなく、頑張ってくれたレイチェルにも悪いぞ?」


 あっ、とサクラは気付いた。そして下を向き、小さく言った。

「ごめんなさい、でも、でも……」

 床にぽたぽたと涙の染みが広がる。


 あー、しまった。やりすぎたか。


「おいマリア、やりすぎだ、普通に話せ」

「さくら・サン、ナカナイデ。 ……って、バレてたのかー」


 当たり前だ。まったく、いつまで遊んでいるのだ。


「大丈夫だよ、サクラ。ボクの体はゾンビーになっちゃったけど、頭まで腐ってはいないから! これも迅速に死療術(ネクロマンシー)を使ってくれたレイチェルのおかげさ!」


「すまない、間に合わなくて」

 そうだ、体は死亡してしまったことに変わりはない。まずは謝らなければ。俺はマリアにぶたれるのも覚悟していた。

 が、マリアが口にしたのは、感謝の言葉だった。


「大丈夫だよ、気にしてない。レイチェルから聞いてる。他の人を助けてたんでしょ? 死んじゃったのは悲しいけど、途中でみんなが子供たちとかを見捨ててたら、それも悲しいもの」

 おそらく、師匠に先立たれた自分と、その子供たちを重ね合わせているのだろう。


「そんなことより、ゾンビになっちゃったけど、変わらずに接してくれる?」

「もちろんだ」

「でも、言葉だけじゃ信じられないよ」

 まったく、どうしろってんだ。俺が困っていると、マリアは言った。


「ボクの体、気持ち悪くない? 大丈夫なら、その、……抱きしめられる?」


 なんだ、そんなことでいいのか。

「簡単だ」

「え? っひゃっ、そんないきなり」

 俺はマリアの手を引き、そのまま優しく抱きしめた。

 ひんやりとしているが、女性らしい柔らかい感触は、しっかりとある。


「あ、ちょっと、ずるい! 私だってがんばったのにー」


 後ろでサクラがふんすかと鼻息を荒くしていた。めんどくさいのでぽんぽんと頭をなでてやると、でへへーとだらしない声をあげ、後ろから抱き着いてきた。

 おい、同時にくっつくな、動けないじゃないか。


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