ドロシー・オーランドゥ(アサルセニア再訪)
ひゅるるー、 どかーん。
イングウェイの魂は、アサルセニアののっぱらに着地した。
女神の魔力で再構築された肉体付きだ。
「あっぶな! よく考えたら、肉体が別の世界に構築されてたらやばかった? ま、結果オーライってことで」
ドロシーは水晶の鏡を使い、その様子をはらはらしながら見ていた。
「うわ、うわー! イングウェイ、めっちゃ美形じゃない!? やっばー! 若い頃ってこんな感じだったの? 前のしぶかっこいい顔もよかったけど、今の顔もいいわー。めっちゃイケメン! きゃー、どうしよー、こんなおばちゃんじゃ相手されなくない? やでも、今のうちに若返りしとけば、きっとばれないわよね? ばれるかなー」
懐かしいアサルセニアの情景。覗くしかできないとはいえ、その景色はドロシーの胸を熱くさせる。
緑の草木、魔素にあふれた空気。排ガスのかけらも見えない、青い空。ドロシーにはすべてが貴重な宝石のようだった。
「なにこれ、は? レベル85? あんのクソ女神、イングウェイがこんなレベル低いわけないでしょ? ムカつくわ。イケメン差別よ、絶対モテたことないんだわ、あのクソ女神。いやーん、でもかっこいいー! ヒドラとか普通に≪分子分解≫で砂くずにできるのに、逃がしてあげるとか優しすぎじゃない? ……は? 何このクソ女、インギー呼び? なれなれしすぎない? アホなの? アホに決まってるわ。何今の(声を高くして)「きゃー、もんすたーですわー♡」って。はぁ? バカじゃない? 死ね、くっつくな、死ね」
イングウェイは記憶を失っていたが、その力は健在d
「は? 健在なわけないじゃない。本当のイングウェイはあんなもんじゃなくて、もっとめちゃくちゃ強くてかっこいいのよ。って、おいい? このクソ女、勝手に私のイングウェイの体に触んないでよ、ふざけてんの? はい決定。あんた、私がそっち行ったら秒で脳ミソいじくって豚にするわ。絶対許さん」
それでも彼は順調に新天地で仲間を増やしていった。
ただ、女神により封印された記憶は、依然イングウェイの脳を固く縛っている。覚醒には外部からの刺激、何らかの助けが必要だろう。だが、それがこの地にあるかどうか。
ドロシーにできるのは、待つことのみだった。
サクラ・チュルージョと名乗る女性。彼女との出会いは、k
「ちょっと! ちょっと! はあ? やめてマジで、そっち行ったら豚にするクソ女リストがどんどん増えちゃうから! わかるわよ、そりゃイングウェイってめちゃカッコイイもん。わかるわ、でも、そんんんなにすぐ距離つめるのはダメでっしょー! あああーーー!! 揉んだ! イングウェイ、今、揉んだ! 胸! おっぱい! やだやだやだやだ、揉むなら私のにしてよ! こんな女よりおっきいから! ねえ、ほんとかんべんしてー。私のハートがひからびるー」
彼女との旅は、イングウェイを確かに変えt
「……ねえ、なんかイングウェイ、アホになってない? いや、顔はいいんだけどさ、なんてゆーか、こんな適当な性格だったかしら? 渋さが消えてるわ渋さが」
「うー、なにこのサクラって子、けっこういい子じゃん。いやでも、イングウェイは渡さないけどさ。愛人くらいなら許してやってもいいくらいには良い子じゃん? あー、いや、それは無茶でしょ。いや、オーガとか落ち着けばザコだからさ。ほら、がんばれー。あ、あっぶな! うー、じれったいわー」
「ちょっとー、やっぱりイングウェイ、頭も魔力もダウンしすぎでしょ。前の体に戻したら変わるかな? でも、あの渋い見た目で中身がアホなら、本格的に救いがなくないわよね。駄目だわ。はー、これが百年の恋も冷めるってやつ? いやでも待て待て、絶対に転生のせいよ。あんなアホに私が惚れるわけないわ。てことはやっぱりあのクソ女神のせいか、うん。女神は絶対いつかぶん殴りにいこう」
とまあそんな感じで、けっこう楽しみながら、アサルセニアでのイングウェイの様子を覗き見ていたのでした!(やけっぱち)




