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ダーティー・ウィザード


【作品タイトル】:『補助呪文(サポート・マジック)しか使わなかったら、お荷物と勘違いされてパーティーを追放された天才魔術師。今更謝ってももう遅い、仲間がいなければ自分に補助(バフ)をかけて無双します! あれれぇ? 俺様を追放した君たちは、何でそんなザコ相手に攻撃力不足で泣いてるんですかぁ?』


【あらすじ】:ドラゴンを倒した後、仲間からかけられた言葉は、賞賛でもねぎらいでもなく、パーティー追放の宣言だった。 


 魔術師ロックは、実力も経験もある冒険者だった。しかし、彼の得意な術は補助魔法(サポート・マジック)

 主に味方の強化(バフ)や、敵の弱化(デバフ)である。


 彼のいるパーティーは実力以上の評価はもらっていたが、他のパーティーメンバーからの彼の評価は低かった。


 いわく、戦わないやつに席はないだの、後ろで楽をしているだけだだの。


 ロックは目を閉じると、パーティー最後の旅となった、ジフ火山の赤竜(レッドドラゴン)討伐に赴いたときのことを思いだす。


 ◇◇◇◇◇◇


 ドラゴンの硬い鱗に、戦士アンディーの剣はとても刺さらなかった。

 アンディーは言った。

「くっそ、ロックの野郎め、後ろで楽をしやがって。いつもの剣があればっ!」


 ロックは勝手にアンディーの業物の剣を売り、安物に変えていた。その資金は、女を買うのに使った。


 毒づくアンディーに、ロックは冷静に魔法をかける。

「ふん、任せておけ。ナマクラでもドラゴンの鱗程度、問題ない。 ≪腐食の刃(ラスティング・エッジ)≫!」


 ロックが唱えると同時に、アンディーの刃が怪しく黒く光る。

 と同時に、刃はするりとドラゴンの背に突き立っていく。


 ぐぎゃあああ

 

「アンディー、さっさと倒せ。ここは熱い、早く帰るぞ」


 ぐおおおぉぉ、ぐるぁぁぁっ!


 ドラゴンが最後の力を振り絞り、炎のブレスをまき散らす。

「ふん、その程度か。≪多重の被覆(マルチ・シュラウド)≫」


 ロックが手を振ると、淡く白い光が味方たちを包み込む。

 魔術師リリックの体力は、もう限界だった。王から賜った神道具(アーティファクト)、『白縄の祈り(レンズ・マスティカ)』があれば、炎属性と冷気属性を完全にシャットアウトすることができたのだが、それは二つ前の町で、借金のかたにとられた。

 ロックの賭けでの負けが原因だ。


「……はあ、はあ、くっ、やっと倒したか」

「うむ、ご苦労だった。回復してやろう。≪青き宝珠(クリスタル・エナジー)≫」

 回復呪文も使用できるロックは、戦闘後の治療も引き受けていた。青き光が傷を癒していく。




 息を整えた後、リーダーである魔法剣士のジャスミンは言った。


「ロック、もう君とはやっていけない」


 ロックはいきなりの言葉に、意味も分からず聞き返す。

「はあ? 何を言ってんだ、ジャスミン。お前、ドラゴンのくっせえ息で、脳ミソ溶かされたんじゃねえのかあ? 俺がいなきゃ、ドラゴンどころかここまでこれたかも怪しいんだぜ。

 だいたい俺の補助魔法や回復魔法なしで、ここからどうやって戦うつもりだよ?」


 たしかにその通りだった。ロックは適切なタイミングで、適切な術を使い分ける。

 魔術のレベルはもちろんだが、ロックの強みはその状況判断力だ。


「君、本当に理由がわからないのかい?」



 こうして、彼はパーティーを追放された。


 ロックは補助呪文には長けていたけれど、直接攻撃呪文は適正がなかった。

 だが、追放されて彼は考えた。


「ち、くっそう、あいつら、今までの恩をあだで返しやがって。許せねえ。しかし、どうやって復讐を……。そうか、ははは! 簡単なことじゃねえか!」


 彼は気づいた。補助呪文をかける仲間がいなければ、自分にかければいいのだ。


 これは、パーティーを追放された彼が、単独旅(ソロ)でかつての仲間を見返す物語。


 そして、彼の転生前の、知られざる物語(ストーリー)

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― 新着の感想 ―
[一言] あ、コイツ飲んでねえ。 ダメな奴だ。(アルハラ)
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