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The Gods that Failed


「お前は誰だ?」

 イングウェイはつぶやいた。

「なぜ俺の名前を知っている?」

 今度の声は、少し大きい。

 目を閉じたまま、つぶやいている彼は、迫っている敵は、いないものとして扱う。


 魔力による干渉が、私に向かってくる。

 いつからかはわからず、無意識かもしれない。確かなことは、イングウェイはいつの間にか”私”を認識していたということ。

 それでも、私からイングウェイを認識することは許されない。規則を破壊するのは、適切ではない。



「答えろ。そこで喋っているお前に聞いているのだ。今、『規則を破壊するのは適切でない』と言ったな。規則とはなんだ? どこにいて、どうやって俺のことを認識している?」


 イングウェイが私の逃げ場をふさいでいく。私はとうとう観念して、問いに答える決心を固める。


「持って回った話し方は止めろ。ここはどこだ?」

 ここは、お前の世界の外側に位置している。

「世界の、外側だと?」

 そうだ、いつから私の存在に気付いていた?

「わからない。ヒントはあったのかもしれない。少しずつおかしな感覚が積もっていき、気付くことができた」

 何が目的だ。

「それこそ、わからない。俺たちを操る意志のようなものに気付き、俺はお前に声をかけた。どうこうしようというわけではなかったさ」

 この部分の存在に気付くのは危険だと、思わなかったのか?

「さあな、正直そこまで考えてなどいなかった。危険とはどういうことだ? モンスターでも襲ってくるのか?」


 普通ならここでため息の一つでも吐き、独白に入るところなのだろうが、彼が見ている前でそれを行う不適切さを十分に理解しているため、しなかった。

 物語というものを彼がどう捉えているのかを聞いてみたいが、無駄だろう。彼は気付きはしたが、その存在の檻が破られたわけではない。

 人形は人形であり、自分でページをめくることなどできはしない。語り部と共に歩むのが、せいぜいだ。


「なるほど、それがお前の精いっぱいのメッセージか」

 その言葉に地の文を付け加えることは、果たして彼の味方をする行為と同等なのかはわからない。

 転生前にデカルトの言葉を聞いたことがあるのなら、何かのヒントにはなったはずだ。


 一つだけ言えることがある。

 この場所を覗くことができたのなら、きっともう一つの扉も開けることができるだろう。


「待て、お前にはまだ聞きたいことがある」


 私にはない。


 時間切れだ。ここは空間ではあるが、概念でしかない。

 行動が行える場所ではない。行動は、あくまでもページの中にある。


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