Shape shift, feeling I've been
ガーゴイルたちは動いた。妙な動きを見せた。
最初イングウェイは違和感を禁じえませんでした。それは、まるでコンピュータを思わせるようでした。
「妙だ、こいつら、動きが単調過ぎる。統率が取れているというわけではない、まるで操られているような動きだ」
イングウェイが最初の一撃を振りかぶったとき、ガーゴイルは避けようとしなかった。
まるでそれが無かったかのように、攻撃を受けた。
最初に疑われたのは、操作魔術の類だ。レイチェルの使う死霊術も、広義の上ではこの分野に属する。精神性のものと肉体性のものがあるが、対象者の体を人形のように操る術だ。
イングウェイはガーゴイルの爪を剣で受け止めつつ、慎重に相手の魔力を探る。操作魔術ならば、対象者の中に術者の魔力が混じるはずだった。
しかし、それは見つからない。
4匹のガーゴイルが飛んできて、一直線に横に並ぶ。
「レイチェル、援護を!」
「はい!」
レイチェルの指示で飛び交う、炎と氷の矢。それは的確にガーゴイルたちを貫いている。
威力は良いです。しかし、狙っている人は、素人魔術師。
ガーゴイルは魔素の濃い場所に住みつく、中位モンスターだ。初級冒険者たちが不意に出会った場合、逆に狩られることも珍しくない程度には強いはず。
それだけではない。戦場は混乱している。しかし、規則正しく動いてもいる。
兵士たちが忙しく動き回る。彼らは何をしているのか。誰と戦っているのか。
そうだ、兵士たちを観察すると、皆が一定の位置を往復しているように見える。
兵士たちは、戦っているように見えて戦っていない。
目の前でイングウェイたちが敵と戦っているというのに、兵士たちは何も手を出してこかった。手伝わない代わりに、邪魔にもならないように、一定の距離を保っている。
イングウェイが戦いながら移動すると、兵士たちの輪も移動する。
一体みんな、何をしているのだ?
決定的なのは、一人の兵士の動きに気付いたこと。
あいつは見覚えがある。イングウェイは気付く。あいつはたった今、俺の目の前を通り過ぎていったやつだ。鎧の側面に傷があったので、覚えていたのだ。
そいつが、今度は逆方向へと走っている。
これで、三度目だ。
兵士は、同じところを意味もなく往復していた。
まるでミキサーで頭の中をかき混ぜられているようだった。吐き気がして、無理やり唾を飲み込んで押さえつけた。
「イングウェイさん、こいつらなにかおかしくありませんか? その、弱すぎるというか……」
「ああ、わかっている。今考えているんだ、少し黙っててくれ」
レイチェルは異変を敏感に感じ取っているが、その正体には気付くことができない。
当然だろう、役者がモニタの向こうの観客を知ることは、決してないのだから。
気付く可能性がわずかでもあるのは、この場にはイングウェイのみだ。
イングウェイは、敵を目前にして、静かに目を閉じた。
感じるのは、世界の変化。転生をした時のような、次元のスライド。
求めるのは、真実の世界。




