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悲しいけれど、本当のこと


 次の日。俺は何事もなかったかのように、パーティーのテントで目を覚ました。


「ふあー、昨日は疲れたなあ」


「お疲れ様です、イングウェイさん。良かったらもう少し寝ていてもいいんですよ」

 新妻のようなセリフをかけてくれるのは、レイチェルだった。


「レイチェル、昨夜の襲撃の後はどうなったか知っているか?」

「はい、もちろん。朝のうちに情報は集めておきました」


 魔王軍の襲撃があった時、レイチェルはホルスのパーティーメンバーたちと酒を飲んでいたらしい。

 急に騒がしくなり、武器を手に取り外に出ると、あたりはドラゴンの炎で大変なことになっていた。


「すまなかったな、助けに行けず」

「いえいえ。イングウェイさんが負けることなんてありえませんからね。私は自分の身だけ考えていればよかったし、かえって楽なくらいでしたよ」

 そう言って、余裕の笑みを浮かべるレイチェル。


 ドラゴンは上位ギルドのメンバーが中心となって対処したため、ホルスたちは火事の対処や追撃への控えといった後方支援を行っていた。

 そんなとき、ホルスとレイチェルがほぼ同時に、俺が戦っていることに気付いたらしい。


「ホルスさんは、すぐに助けに行こうと言いました。しかし、その瞳には黒いマナが……」

「それで、警戒して別行動をとった、というわけか」

「ええ。イングウェイさんが戦っているということは、キャスリーさんが単独で行動しているということですから。そちらのほうが心配でしたし」


 いい判断だ。

 その後は俺も知っている通りだが、問題は俺が逃げ出した後のことだ。


「はい、それなんですが。誰も覚えていないのです」


「……なに?」


「昨夜襲撃があったということは、覚えています。しかし、何と戦ったのか、どれだけ被害があったのか。誰も把握しておらず、なんとなく覚えているだけといったありさまです」

「ホルスは? 奴は死んだのだろう?」

「それが、ホルスというメンバーは、どこにもいませんでした」

「どういうことだ?」


「ホルスさんのギルド、フロイドのメンバーたちに聞いたのですが、誰もホルシュタインという名前の男は知らないと言っています」


 俺は声を失った。どういうことか、見当もつかなかった。

 唯一の心当たりと言えば、頭の中に響いたあの声だ。

 あの声のあと、俺は過去に戻ることになった。そして、現在を――ひいては、未来を――変えたのだ。


「どうします?」


「キャスリーだ。ひとまずキャスリーに合流しよう。彼女がどこまで覚えているのかで、対応も変わってくる」

「それが、キャスリーさんなのですが……」


 レイチェルが言いづらそうにうつむく。


「どうしたんだ?」


「キャスリーさんは、ゾンビになってしまいました」


「なんだと!?」


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