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身を捨ててこそリビング・デッド


「≪不可視化(インヴィジビリティ)≫、≪肉体強化(グレートマイト)≫、≪飛行(フライ)≫」

 祝福(バフ)を重ねがけすると、俺は空高く舞い上がった。闇夜に兵たちの喧騒も相まって、飛んで接近するには好都合だ。


 敵は黒いマントを羽織っていた。動きはまだない。

 あれが誰かは知らないが、ある程度の立場の将ならば話が早いのだが。俺は以前、城で戦った魔族、キョニーのことを思い出していた。

 俺はメイジキラーを構え、メタ梨花(りか)と作戦を立てる。


「メタ梨花(りか)、お前は適当に相手を攻撃しろ。俺の身を守ったりなどは気にしなくていい」

「え、いいんですか、そんな適当で?」

「地上ならまだしも、空中だからな。下手に連携しようとしてリズムを崩すくらいなら、勝手にやった方がマシだろう」

「りょーかい」


 メタ梨花は白銀の蛇の姿を取ると、くるんと俺の体に巻き付いた。相手がどの程度のやつかはわからんが、予想外の方向から隙を作るくらいはできるだろうかもしれん。


 俺は敵の左斜め後方から、勢いをつけて切りかかる。

 奴の数メートル手前には、薄い魔力の覆い(ヴェール)が展開されていた。気付くのが遅れたが、今さら止まれるはずもない。無視して突っ込む俺。振り向いて即座に剣を抜く魔族。


 奴は体をのけぞらせ、ほとんど寝そべるようになりながら俺の剣を避けた。その直後、俺の足元から伸びたメタ梨花の刃が、奴の肩口を貫く。

 だめだな、浅い。舌打ちをする。

 奴が指が動くのが見えた。次の瞬間、俺の眼前で黒い閃光が弾けた。

 

 あらかじめ展開していた防御魔法のおかげでダメージはないが、爆風を利用して距離を取られてしまった。一瞬の隙をつき、奴は地上へと逃げていく。


「イングウェイさん、奴は地上に降りましたっ!」

 メタ梨花が叫ぶ。わかっている。

 俺もすぐに後を追うが、奴の漆黒の鎧が闇に紛れてしまい、見失いかける。


「くそっ、メタ梨花、どっちに行ったかわかるか?」

「ええと、たぶん向こうですっ!」


 メタ梨花が指さしたのは、本陣。まずいな、すぐに追いかけなければ。



 俺は低空を飛びながら、一直線に本陣を目指す。

 奴は獅子顔のなんちゃらと対峙していた。慌てふためく兵士たちの上を飛び越し、両者の間に割って入る。


「諦めろ、俺が来たからには、これ以上人は殺させん」

「ちっ、しつこい奴だ。邪魔をするなっ!」

 魔族が腕を振ると、紅蓮の炎が巻き起った。こちらもすぐに防御魔法で抵抗(レジスト)する。


 魔族は俺を無視して、タントゥーロに切りかかる。訓練された兵士たちが果敢にも立ちふさがるが、さすがにモブ兵士では、束になっても相手にならないだろう。

 俺は兵士たちに下がるように言うと、強引に魔族とタントゥーロの間に割って入る。


「おい、冒険者よ、この魔族は誰だ?」

 さすが獅子顔と言われるだけはある。魔族を前にしても、その怖い顔と威厳は崩れていない。


「空中から本陣を狙っていたのでな。まずいと思って攻撃を仕掛けたのだが、すまん、取り逃がした」


 実際に打ち合ってみてわかったが、こいつは結構強い。

 魔族だけあって、――少々癖は強いが――剣の腕はなかなかだし、扱う呪文のレベルもかなり高い。そして、片方だけにこだわらず、剣と魔法を柔軟に組み合わせた戦い方をする。

 俺は小技でけん制しつつ、相手の攻撃の出だしをつぶしていく。器用にも剣の合間に織り込んでくる術は、反属性で打ち消した。


「まあ、そうはいっても、俺の相手ではないな」


 奴が焦って大振りになったところで、死角からメタ梨花が飛び出し、剣を弾き飛ばす。

 勝負ありか。


 尻もちをついた魔族に、俺は剣を突き付けた。


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