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エピローグ

「・・・というわけで、かつて大地が鮫に食われ、それを一匹の鮫と一人の少年により救われ、そして今日に至る。これはこの資料によれば真実です。ここから考えるに、各国に残された神話は、この事件が元になっていると考えられます。」

 とある学生が教授に論文の説明をしている。

「例えば日本の神話にある三種の神機が剣と鏡と勾玉なのは何故か。北米、何故青い獣に乗った巨人が開拓した伝説があるのか。英国のアーサー王神話の―」

「ストップ。」

 教授が話を遮った。

「全体的に話が飛躍しすぎています。各国の神話の年代のバラバラで、同じ神話が元になっていると考えることは困難です。第一証拠が不足しています。その資料だけでは、その神話が真実かどうかは断定できません。その資料が本物かどうかの確証も取れていないのでしょう?・・・まだ時間はあります。テーマを見直すことも、出来なくは無いと思いますよ、ノーマン。」

 不合格、赤点、留年スレスレ。要約するとそういうことである。教授の言うことは尤もであるし、自分でも自覚はあった。先程の説明中の生き生きとした姿とは打って変わったように力無く、ノーマンと呼ばれた彼は「はい」と返事をすると、論文や資料を鞄にしまい退室しようとした。

「それと。」

 ドアを開けたところで教授は呼び止めるように言った。

「鮫に乗った少年という時点で荒唐無稽です。神話としても無理が在り過ぎます。」

 彼は足を止めて振り返り、一言だけ言って会釈してドアを閉じた。

「それだけは現実でも在り得ますよ。」


 大学からの帰り道、ノーマンはブツブツと教授の陰口や世の中への不満を口にしながら歩いていた。ノーマンはある資料を手に入れた事で「鮫に乗った少年」の神話に対する研究を始めた。だがそれ以上の資料が無く、まともな成果には繋がっていなかった。それに資料の真贋鑑定も自分の資金ではままならない。教授の言う通り、テーマを変えた方が良いのかもしれない。

 だが彼は諦めていなかった。確かに各国の神話に繋げるというアプローチは誤りかもしれない。しかしこの話自体は真実だ、そう彼は確信していた。他のアプローチをすれば証拠が出てくるかもしれない。きっとそうだ、彼は自分に言い聞かせた。それに彼にはその神話が真実であると確信している理由がもう一つあった。それは彼が教授に真実と認めさせたい理由の一つでもあった。


 彼は埠頭に着くと口笛を吹いた。口笛に呼応するように鮫の背ビレが近づいてきて、ノーマンの前で止まった。

「いつかきっと認めさせてやるさ。なぁ、スーザン。」

 するとスーザンと呼ばれた鮫が海面から顔を出し、そして彼の方を見て吠えた。彼の考えを肯定するように。そして彼を励ますように。

「ああ、ありがとう。・・・いつかきっと認めさせてやるさ。きっと、ね。」

 彼はそう呟くと、スーザンの背に乗り、港から少し離れた浜辺にある自分の家へと向かっていった。


 彼の鞄の中の文書には、数千年の時を経てボロボロになった、ノアとスージーの姿が描かれていた。

こんな拙い文章を読んで下さった方、ブックマークして下さった方、評価して下さった方、皆様本当にありがとうございました。途中色々雑でしたが、何とか予定通り書き切ることが出来ました。

慣れるためにと、短編として短めにかつ勢いで全て何とか処理してしまおうと思って書き始めたのですが、途中勢いだけでは乗り切れていない部分はあったと思います・・・。(特に5話と6話)

その辺りは今後の反省点として、次回以降に繋げていきたいと思います。


改めてになりますが、皆様本当にありがとうございました。

次回作が書けましたら、その時はまたお読み頂ければ幸いです。

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