明日と昨日は紙一重
おぼろおぼろおぼろろおぼろろろ。
「ぐっ……」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い前が見えない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見えなくていいビジョンを映すな。
いまはネオンライトも見たくない。掃き捨てられたゴミすら見たくない。お前達などゴミ以下だ。
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!
聞きたくない聞きたくない聞かせるなうるさいうるさい黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!
「黙れェ……ッ!」
おぼろろおぼろろ。
目の前が暗い。瞼を強く閉じたからだ。
何も聞こえない。両手で耳を塞いだからだ。
頭が痛い。コンクリートに頭を打ち付けているからだ。
身体が冷たい。季節が冬を呼んできたからだ。
喉が焼けるように熱い。痛い。
草のにおいを少々に、いましがた自分から湧き出た泉が鼻を刺激して不快にさせる。
「なにもかも消え去ってしまえばいい」
深い。深い。深い。ここは深い。
どこだ。なぜだ。教えてくれミカエル。イエスでもいい。イザベルでもいい。閻魔でもアッラーでもいい。
僕はどこに向かっている?
色は、そうだな……。緑だ。深い緑色をしている。
暗い。何も見えない。これは緑色だ。
深い、緑の闇だ。
舌は痺れているのか? 食の戻りがねっとりと絡みついている。
ひどいにおいだ。自身のそれとはえい、あまりにも鼻を刺激する。少なくとも長時間嗅いでいたいにおいではない。
ここはどこだ……。駅か、駅なのか。そうなのか。
コンクリート、すっぽり開いた空間に2列の線路。駅だ。駅員もいる。客が……こっちを見てる。
なぜだろう、見られても不快ではない。
さきほどはあれほどの苦痛だったはずなのに。
「……ミ……キミ!」
誰だ、誰が話しかけているのだ。
「キミ! 聞こえるか!」
ああ、駅員だ。たぶん駅員だ。なにか制服のようなものを着ている。そうに違いない。
「何か用ですか……。僕は平気です」
大きな声で返事をした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ここは……?」
ピクっと誰かが反応する。白衣を着ている。
「起きたか。ここは病院だよ」
「はぁ……」
よく分からない。なぜ病院へ来なければいけないのだろう?
「キミは昨日のことは覚えているかい? ほら、駅のホームで暴れていたときのことだ」
「えぇ、覚えています」
「普通に話せるようでなにより。早速だが、本題に入らせてもらうよ。こちらのほうで君のことを検査させてもらったよ。君は……」
続けて言う。
「ひどい病気だ」