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ルルの朝

作者: アミンタ

ララちゃんの朝の様子をスケッチしてみました。


 ララは、今朝、早く目が覚めた。壁の時計を見ると、なんとまだ六時前だ。

 今日は土曜日なので、幼稚園はお休みだから、本当はもっとゆっくり寝ていても良かったのだ。

 ──早すぎた。

 と思ったけれど、とても気分がいいのでもう一度寝る気にはなれない。

 きっと、昨日いつもより早く寝たからだろう。

 ベットから抜け出して家の様子をうかがうと、やっぱりまだ誰も起きていないようだ。

 ──洗面所で顔を洗うと、水の音でお母さん達を起こしてしまうかもしれない。

 一階の音は、二階の寝室へは案外によく響くのだ。

 そう思ったララは玄関ロビーへ行って、背伸びをしたり、体を横に倒したりして静かに朝の運動をした。

 玄関には、春から通う小学校用の新しい靴が下駄箱の前に飾ってある。メーカーのロゴがくっきりと入った白いスニーカーだ。この前の日曜日にショッピングセンターの靴屋さんで買ってもらった靴だ。でも本当は、黒い靴が欲しかったのだ。

 外で見かける大人のお姉さんたちは、格好いいスーツに黒い革靴を履いている。私もあれがいいと思っていた。

「黒いのがいい」と言うと、「あなた黒がいいの? 変な子ねえ。小さい子は車からよく見えるように、目立つ色がいいのよ。じゃあ、白にしなさい」と言われてしまったのだ。

 ──いつもは。大きい、大きいと褒めてくれるのに。

 ひまわり組で一番背が高いララは、ちょっと不満だった。


 居間から庭へ広がっているテラスには、窓際にアロエの鉢が並んでいる。祖母の家から貰ってきたものだが、初めは一つだったものがいつの間にか五鉢にまで増えた。根本から子供が沢山出てくるので子分けしていると二年もしないうちに五倍になったのだ。それでもまだ、鉢の中には三つ四つと子が出ている。何とかしないと、と思っているうちにどんどん増えるのだ。

 体操が終わったララは、早速アロエを見て回った。鉢植えの水遣りはララの係になっているからだ。

 一番大きなアロエの葉がどうも元気がなくて、垂れ下がっているように見える。摘んでみると葉の腹がペコッとつぶれた。

 ──あれ、この前、水を上げたのはいつだっけ?

 冬は、部屋の空気が乾燥しているので窓際の鉢も乾燥しやすい。日曜日ごとに水遣りしていたのだが、先週は家族で出掛けたので忘れたようだ。

 ──ごめんね。

 早速、水を遣ろうとあたりを見回したが、いつものジョウロが何処にもなかった。洗面所にもお風呂場にも、洗濯機の横も探したが見つからなかった。

 ──物置の大きいのはダメだ。

 庭用のジョウロは首が長くて使いづらい上に水の勢いが鉢植えには強すぎるのだ。仕方がないので、ガラスのコップに汲み置きの水を入れて、植木鉢の縁からそろそろと流してやることにした。

 でも、使い古したミネラルウォーターの二リットルもあるペットボトルから溢さずにコップへ水をいれるのは難しい作業だ。ペットボトルの口から水が吹き出さないように、ゆっくり傾けるのには、かなり頑張らないといけない。その上いつもは、このペットボトル二本半分の水を使うのだ。小さいジョウロでも七回になる。

 ララは抱え込んだペットボトルと一緒に自分も体ごと斜めになった。


 そうして、家のみんなが起き出したころ、アロエの水遣りが漸く終わった。

 お母さんが台所からでてきた。

 「ララ、おはよう」

 「おはよう」

 お母さんは、コップを持っている娘を見た。

 「おや、床に水が溢れてるわよ。ララ、ちゃんと拭きなさいよ」

 「はーい」

 台所からは、炊きたてのご飯の香りが漂って来ている。

 ララのお腹がググッと鳴った。




これはフィクションです。

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