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小説の湧き出る小川

謎めいたエックス博士2

作者: レモン

第一章

エックス博士が戻ってきた


 牢屋の中で、エックス博士は怠け者の番人が寝るのを待った。そして、大きな耳の後ろに1カ月間隠しておいた小さな錠剤を取り出した。それを飲み、彼の体は虫の大きさに縮んだ。彼は牢屋の外へとつま先歩きした。柱やドアの下を容易にくぐりながら。

 「よしっ!」と彼は牢屋を出てから小さな声で呟いた。太陽を見たり、新鮮な空気を吸ったりするのはずいぶん久しぶりのことだった。スーパーや八百屋で何を食べても自由であったが、彼にはもっとしたいことがあった。彼は復讐がしたかった。

 車やタクシーやバスが通り過ぎて行った。彼は小さかったので、速く進むための交通手段が必要だった。しかし、車の車輪は動きが早すぎて、乗ろうとしたらきっと潰されてしまうだろう。

 その時、乳母車の音が彼の耳に入ってきて、彼は優しそうな女性と頭の良さそうな男性、そして乳母車の中でかわいい赤ちゃんが平和な表情を浮かべて寝ているのを見た。

 男性も女性も幸せそうな笑顔で赤ちゃんを見ながら、乳母車を優しく静かにゆっくりと押していた。

 これはチャンスだ!エックス博士は乳母車の車輪につかまり、よじ登り、赤ちゃんの服に入り、赤ちゃんの鼻の上に止まった。彼は点のような大きさだったので、お母さんもお父さんも大事な赤ちゃんについたこの邪悪なものに気づかなかった。

 最初にとまったのがスーパーだった。エックス博士はお母さんがビスケット、ミルク、チーズ、トマト、オレンジジュース、そしてリンゴの缶を買っているのを見た。

 すると突然、赤ちゃんが大きなくしゃみをした。「ひやーーーくしゅんっ!」

 エックス博士は宙を飛んでいき、シリアルの箱の上に着地した。パニックしながら、彼は棚の下に行ったが、カップルと赤ちゃんはその頃にはいなくなっていた。彼はレジへと走った。女性はお金を払っていて、男性はその横に乳母車を支えながら立っていた。

 エックス博士は乳母車の後ろの車輪に何とか行きつき、上へとよじ登り、男性の手まで辿りついた。そして男性の腕、肩、頭を登っていき、やっと頭の上の髪と髪の間に休んだ。「この方がずっといい」と彼は独り言を言った。

 次に金属製品の店に行った。食器や包丁、フライパン、大きなポットを買った。肉屋で肉を、パン屋でパンを、赤ちゃん服の店で赤ちゃん服を買っていった。何を買うか話し合っている時、女性も男性も絶えず笑顔だった。赤ちゃんは乳母車の中でスヤスヤと寝ていて、小さな寝息を立てて、時々親指をしゃぶった。

 ようやく家に着いた。上に行って、赤ちゃんをベビーベッドに入れてから、男性と女性は寝室に行き着替えた。二人は抱き合い、深くキスをした。気持ち悪っ!とエックス博士は思った。恋愛をしたことのないエックス博士には、その喜びが全く分からなかった。逆に彼は恋愛が大嫌いだった。彼は自己中だったので、自分のことしか考えることができなかった。人の気持ちや幸せについてはちっとも興味がなかった。しかし、彼は自分に対し悪いことをしてきた人々を苦しめることには興味があった。彼はそれを楽しみ、そういう人々が苦しんでいるのを見ると喜びを感じた。

 女性は夕食を作りに下に行ったので、男性は自室に行った。エックス博士は驚きのあまり目が飛び出しそうになった。その部屋は…実験室であった。

 男性は試験管や顕微鏡、それ以外の生化学的実験に必要な器具がたくさん置いてある机に向かって歩いた。左手を机につき、右手で試験管の一つを取った。エックス博士は急いで男性の髪から左耳、顎を下っていき、首や肩を通って、ようやく左腕を下り、手や指を通り、机に辿りついた。男性は一つ一つの試験管を確認した。実験の教科書を机から取り出し、手順を読んでから、何かしらの液体をいくつかの試験管に加えた。紙に何かをメモし、それをスーツケースに入れて、スーツケースを持って部屋を出ていった―エックス博士を一人実験室に置いていきながら。

 エックス博士は器具や化学物質を眺めながら、しばらくじっとしていた。ほとんどの物の使い方を知っていて、何のために必要で、どう反応するかなどを知っていた。玄関の扉が開いては閉じるのが聞こえた。鍵が閉まる音も聞こえた。彼は急いで窓を上り、男性が車に入るのを見た。きっと研究施設か何かに行って、何時間か戻ってこないだろう。

 あふれるばかりの興奮で、エックス博士は反対の耳の後ろに隠してあった小さな錠剤を取り出し、飲んだ。彼の体は徐々に大きくなり…最後は元の普通の大きさに戻った。エックス博士は時間を無駄にしなかった。実験室で、まず体を小さくもしくは大きくする錠剤を何十個も作った。そして、彼は復讐に使おうと思っていた新しい薬の開発を始めた…


第2章

ピーターは絶好調、スコットは絶不調


 ピーターは勉強的にも社会的にも今は頂点に立っていた。成績は優秀で、皆から尊敬されていて、女の子にも人気があった。

 「ピーター、今日新聞に載っているの見たよ!」

 「研究面白そうだね!」

 「最後のコメントがすごい好きだったよ:科学者でいるのは楽ではないけど、やりがいがあるっていうね。」

 「ありがとう」ピーターは大きな笑顔を浮かべながら言った。

 「よっ、人気者さん」ソフィアは彼の腕に軽くパンチをした。「今日一緒に帰らない?」

 「ありがとう、ソフィア、とっても一緒に帰りたいんだけど、学校が終わったらサリバン先生の研究室に5分ほど寄らないとで―」

 「ピーター!!今日一緒にお昼ごはん食べてくれるでしょ?」

 ローリーというピーターの大ファンの女の子が、後ろからピーターに抱きつくようにして言った。ローリーの金髪は編んで二つ結びになっていて、可愛らしいデニムの上下を着ていた。

 「あ、そうね、ローリー、もちろん」ピーターは顔がピンク色になった。

 ソフィアはバカにした表情で、しかし少し悲しそうに「じゃあまた後でね、ピーター」と言った。

 「ピーター、一緒に実験室に行こうぜ。」ピーターの親友のジョンが言った。そして「ローリー、こんにちは。」と笑顔で言った。ジョンはハンサムで茶色い金髪の男の子。いつもカッコいい服を着ていた。また、とても頭が良く、ピーターに続いてクラスで2番目だった。

 「あ、こんにちは」とローリーは早口で言った。そして、ピーターの腕をつかみ、「ピーターいつでも電話してね?今夜はどう、忙しくない?」

 「うーん、わからないな、ローリー。またお昼の時に話そう。」

 これだけのお誘いにピーターは目が回るほどであった。しかし、彼は確かに学校生活を満喫していた。


 一方、スコットの方は?あまり良くない。

 スコットは学校の最も悪名高いグループに入った。彼の髪の色は今はオレンジ色だった。他のグループのメンバーはそれぞれ、赤、黄色、緑、そして紫色の髪をしていた。このグループでは色んな挑戦をさせられた。

 「彼女を見ろ、美しいだろ。」

 「そうだな。」スコットは頷いた。

 「彼女を誘惑してみろよ、スコット!」

 「どういうこと!?」

 「デートに連れていけよ!それか一層告白してみれば?」

 「そんなことできないよ!」

 「お前はチキンか?」

 「いや、そんなことはないけど…話したこともないのに。」

 「行けよ、スコット!挑戦だ!」

 スコットは学年一人気な女の子が他の女の子二人と学校の前で話しているのを見た。彼女の名前はキミーだった。彼女はおしゃれでカッコよかった。彼は絶対無理だとわかっていた。しかし、彼のイカれた遊び好きの衝動が彼の中をよぎり、あまり考えずに、バカみたいに彼女の方へ寄っていった。

 「キミーーー、今夜は僕と付き合ってくれないかーい?」彼は歌った。

 キミーはまるで宇宙人を見るような目で彼を見た。「は?」

 スコットは照れて、足踏みした。「あの、僕と付き合ってくれませんか?僕は君のことが好き、わかるだろ、君のスタイルや顔やすべてが…僕は君のプリンスチャーミング、光輝く騎士になりたいんだ。」

 グループのメンバーは数メートル先で笑ったり、盛り上がったりしていた。

 「あいつらは関係ない、気にしないでくれ。」スコットは彼らを睨んだ。そして、キミーの手をとり、「だから僕と結婚してくれない?」と言った。

 この時点で、キミーの友達も笑っていた。

 キミーは顔が赤くなった。「あ、ありがとう、でも遠慮しておくわ。私、グループに所属している人と付き合うつもりはないの。あまりに悪名高くて。」

 「僕はグループに所属していないよ!」スコットは抵抗した。

 キミーは目を上に向けながら言った。「そんなの嘘よ、スコット。この数週間彼らと絡んでたでしょ。そうじゃなければ、なんで髪の毛の色をオレンジ色にしたの?」

 「あー…」スコットは下を見た。

 キミーは彼の肩を軽く叩き、「ごめん」と言った。そして、女友達に、「行きましょう。じゃないと授業に遅れちゃうわ!」

 女の子たちはスコットを残し、去った。スコットは肩をすくめ、地面を見つめていた。人に告白するのは初めてで、もちろん、フラれるのも初めてだった。

 「頑張ったな、スコット。」

 「じゃあ次の挑戦は…」


 「ねぇ、ピーターは私のことどう思っている?私のことを友達だと思っているのか、それとも、そうね、もしかしたらもう少し近い存在に思ってくれているのか…?」ローリーはピーターに寄りかかるようにして聞いた。

 「うーん、ローリーのことは好きではあるけど…」

 彼は何か心の中で痛いものを感じた。それは罪悪感なのか?

 「けど何?」

 「何でもないよ。じゃあ今夜電話するからそれでいいかな?」

 ローリーはピーターの手を握った。「私と付き合ってほしいの。付き合ってくれる?」

 「ちょっと…考えてみる。」

 ピーターはそっぽを向いた。自分が何を求めているのかわからなかった。ローリーと付き合うのはいいけど、ソフィアはどうなのか?彼はソフィアのことも好きだった。

 ピーターの悩みはスコットの悩みに比べればはるかに軽かった。ピーターが頭がいいことで有名になってきた頃から、スコットは悪くなった。スコットは比較されるのも嫌だったし、うらやましかった。彼はグループと付き合うことで、兄に別に気にしていないように見せたかった。しかし、グループにいることは彼に何のメリットも与えなかった…


 「わーっ!」

 社会学の先生が悲鳴をあげた。本物の蛙が机から飛び出てきたのである。

 「誰がこんなことしたんだ?」怒って彼は叫んだ。

 「僕だ!」と一人の男の子が立って叫んだ。その男の子はスコットだった。「それはお前の社会の授業がつまらなくて、もう二度と教わりたくないからだ!」

 スコットは校長室に行き、数日間停学になった。しかし、それでもグループの人たちと付き合い続けた…


 「ローリーに告白されたの?」

 「うん。」

 ピーターとソフィアは一緒に学校から帰っていた。

 「彼女のこと好きなの?」

 「よくわからない…」

 ソフィアはため息をついた。「決めなければ、ピーター。何か決まったら教えてほしいわ。」

 「うん。」

 ピーターは若干戸惑っていた。なぜソフィアは彼のローリーと付き合うことに反対しないのか?ソフィアも…彼のこと好きじゃなかったのか?

 ソフィアは彼の目を見ずに、「それじゃあね、ピーター。」と言った。

 「うん、じゃあね。」

 ソフィアはピーターに背を向けて、走り去っていった。


 「スコット、先生の机に蛙なんて入れちゃダメじゃない。」スコットのクラスメイトのメリッサは優しく言った。「なぜそんなことしたの?」

 「挑戦だったからさ。」とスコットは答えた。「挑戦を却下することなんて僕にはできない。」

 「グループをやめればいいじゃない?私が支えるから。最後まで。」

 スコットは微笑んだ。「ありがとう、メリッサ、でも―」

 「おい、スコットが違う女と付き合ってるぞ!」

 スコットは内心唸った。メリッサに恥ずかしそうな申し訳なさそうな顔をして、「行ってくるね。」と言った。

 「よし、スコット、次の挑戦は…」ギャングのメンバーの一人がスコットの耳にひそひそと何かを言った。

 スコットは目を見開き、「えー、ジョウおじいさんはダメだよ!」と言った。

 「これは挑戦だ、スコット。お前は俺らの仲間だろ?」


 ジョンはローリーが一人で家に帰っているのを見て、彼女に走って追いついた。

 「ローリー!」

 ジョンは彼女の手を握った。

 「えっ―」ローリーは驚いた。

 息を切らしながら、ジョンは「ローリー、僕は君のことが本当に好きだ。僕の彼女になってくれないか?」

 「ジョン、ごめんなさい、私、ついさっきピーターに告白したの。」

 ジョンは凍りついた。「そっか。」ジョンはローリーの手を離した。「ごめんね、急に。じゃあ僕はいくね…」

 「ジョン。」ローリーは彼の腕に触れた。「あなたはとっても優しい人よ。本当にごめんね。」

 ジョンは悲しい笑みを浮かべながら、「大丈夫だよ。ピーターとうまくいくといいね。」と言った。

 ジョンはローリーの頬に軽くキスをし、強く赤面する彼女を一人道に残して去っていった。


 スコットは隣家に住んでいるジョウおじいさんとは親友のようであった。このおじいさんにいたずらなんて本当にしたくなかった。しかし、彼の良心は日ごとに小さくなっていった。

 「よし、玄関のベルを鳴らせ。」

 スコットは一瞬戸惑った。そして彼は走っていき、ジョウおじいさんの玄関のベルを鳴らし、グループの方に走って戻ってきた。彼はギャングと一緒にジョウおじいさんがゆっくりドアを開け、困惑した様子で辺りを見回し、ようやくまたドアを閉じるのを見た。

 その日から、スコットの成績はますます悪くなった。スコットはピーターに学校をやめたいと告白した。ピーターは自分のことしか考えていなくて、スコットに何が起きているか注意していなかったことに、酷く罪悪感があった。もっと弟と話したかったが、ローリーから電話を受けた。切るのに2時間かかり、その頃にはスコットは寝ていた。


第3章

エックス博士の計画が始まる


 土曜日だった。ジョンとスコットは二人ともフラれて沈んでいた。ピーターは二人のことを心配しながら、ローリーに何て返事すればいいのか迷っていた。ローリーは美しかったが、彼女から何か特別なものを感じることはなかった。それにジョンがローリーのことが好きだということも知っていた。従って、どう返事すべきかは明らかだった。

 しかし、電話では「付き合えない」とは言えなかった。人を傷つけるのが苦手だった。でも、遅くなればなるほど、ローリーは付き合えないと言われた時の傷つき方や残念さが大きくなるだろう。

 そこで、親友のジョンの家に行くことにした。

 スコットは家にいた。ピーターは父のように、自分の弟とどう接したらいいのかわからなくなってきた。スコットは自分と一緒に居たそうではない、一人かグループと付き合っている方がいい、とピーターは感じた。弟の本当の気持ちがわからなかった。

 弟とも話した方がいいことはわかっていたが…まぁそれはまた後でにしよう。

 外は寒かった。ピーターはマフラーを首に巻き、ジョンの家に向かった。


 エックス博士は復讐のための薬を作るのがもうそろそろ終わる頃だった。その時、ピーターが道を歩くのを見た。エックス博士は怒っている目、危険な目で、ピーターを見た。ピーターは道を挟んで反対側の右手の家に歩き、ドアを鳴らした。ピーターと同じぐらいの年の男の子がドアを開けた。待てよ、エックス博士はこの少年を知っていた!彼はピーターのクラスメイトで、仲のいい友達だ。ジョンという名前だったかな?

 ピーターは中に入った。エックス博士にとっては永遠のように長い時間、ピーターは中にいた。エックス博士の頭の中では計画が出来てきて、彼は微笑んだ…

 ようやくピーターが出てくると、エックス博士は小声で、「復讐してやる、ピーター」とつぶやいた。


 「よっしゃ!」エックス博士は言った。土曜日の昼にようやく薬が完成した。時間を無駄にしないよう、彼はその薬を飲んだ。今度は、彼の体は小さくなったり、大きくなったりはしなかった。今回は彼の胸に黒い六角形のシールが現れた。それが彼の心と魂であった。シールを貼った人の体を彼が占領できる。もっと正確に言えば、その人が体を交換する人になる。

 そして彼は誰にこの黒いベトベトしたシールをくっつけるか決めていた。


 ピーターは鏡の前でいくつかのセリフを練習していた。

 「スコット、学校に行った方がいいと思うよ。」

 「ローリー、ごめん、僕は君と付き合うことはできない。」

 ピーターは大きなため息をついた。この二人の人にこの言葉を実際言えないようでは意味がない。

 ピーターはベッドに寝そべった。ジョンは本当のことを言った方がいいと彼に言った。たとえローリーの気持ちを傷つけても。自分の気持ちを否定するのは良くないと言っていた。でも、もしかしたらジョンは自分がローリーのことが好きだからそう言っているのかもしれない。しかし、ジョンは警察官の息子だ。友達に対して不忠実なことはしないだろう。ジョンはきっとピーターのことを親身に考えてくれているのだろう。

 しかし、ピーターは自分のためだとわかっていながらも、ローリーに伝えることができなかった。ローリーにとってもきっとその方がいいのに。携帯でローリーに電話しようかと考えた。しかし、やっぱりやめてしまった。今は無理だ。唸りながら、彼は眠ってしまった。


 「ピーター!電話だよ!ローリーから。」

 ピーターはベッドから飛び起きた。ローリー?やばいな…

 「もしもし?」ピーターは言った。

 「ピーター、こんにちは。私はただあなたのことがもう好きじゃないって言いたかったの。もう二度と話したくないわ!」

 電話は切れた。ピーターはベッドの上で呆気にとられていて、数分間切れた電話のビービーという音をただ聞いていた。

 「彼女がピーターの新しい彼女?」スコットはにこにこしながら聞いた。

 ピーターはゆっくり首を振った。

 「そうなんだ」とスコットは言い、去っていった。

 ピーターは自分がバカみたいに思えた。何か悪いことしたかな?まだ答えてもいなかったのに…まぁこれで彼は誰もフる前にフラれたわけだが。ある意味、少し安心した。だが、心の中で痛いものを感じた。ローリーの声の調子がとても真剣だった。一体何があったんだろう。

 電話がまた鳴った。唸りながら、ピーターは電話にでた。「もしもし?」

 「こんにちは、ソフィアです。ねぇ、正午に公園で会えるかしら?ちょっとお話がしたいの。」

 「い、いいよ」ピーターはちょっと戸惑いながら答えた。

 「わかった、それじゃあね。」

 ソフィアは電話を切った。

 ピーターは、女の子たちが一体どうしたのだろうと思った。ソフィアはとても急いでいて、緊急そうな感じだった。一体何なのだろう。


 公園の入り口にある、大きな木の下のいつもの待ち合わせ場所でピーターは待っていた。ソフィアがやってきた。突然、ソフィアは彼の手首をつかみ、「ピーター、私、あなたとはもう会えないわ。本気よ。」

 「え?何のこと?」

 「いやただ―もうあなたのことが好きじゃないの。それだけ。」

 彼女は突然走り去っていった。ピーターは呆然として立っていた。ソフィアはローリーが言ったことと同じことを言っていた。彼は一体何をしたというのだ。

 彼は大きな木に寄りかかり、大きくため息をついた。その時、彼は袖の中に何かが入っていることに気づいた。それは小さな手紙だった。ソフィアがきっと、手首をつかんだ時に入れたのだろう。何であるかは分からなかったが、直感的に家で読んだ方がいい気がした。

 それなので、彼は全速力で家に帰った。


 手紙には次のように書かれていた:


 ピーター

 エックス博士が牢屋から逃げ出した!彼はあなたのことを恨んでいるから気をつけて。遅くならないうちに警察に行った方がいいよ。


 ピーターはベッドから飛び跳ねた。エックス博士が逃げ出した?一体どうして?

 とにかく警察署に行って何が起きているか把握しなければ。彼とスコットは保護が必要かもしれない。でも、まずは一人で行こう。


 ピーターは警察署に行った。彼は焦りながら事情を説明しようとした。「あの、犯罪者のジェイソン・ラングレンが牢屋から逃げ出したと聞いたのですが―」

 その時、ピーターに背を向けていた若手の警察官が振り向いた。その若い男はジョンだった。

 「全くその通りだ!」ジョンは大きく笑いながら叫んだ。

 ピーターは困惑した。ジョンのお父さんは警察官かもしれないが、ジョンは一体ここで何をしているのだろう?

 ジョンは警察署の小さな部屋の中で、突然催眠作用のあるガスの入った爆弾を爆発させた。「ピーター、勝負だ!この家の裏庭に6時に来い。お前の彼女が危険な目にあってるぞ。」

 地図のついた小さな紙がゆっくりとピーターの方に飛んできた。ピーターは眠っている警察官から念のため銃を一つ取っていった。


 ピーターは長らく使われていない家の裏庭で緊張しながら待っていた。お化け屋敷のようであった。カラスは屋根の上を飛び、猫は唸り声を上げながら家の周りを歩いていた。

 霧の中から二人の人物がゆっくりと歩いてきた。

 ジョンはソフィアを抱え、彼女の額に銃を当てていた。

 「動くな!手を上げろ!」

 ピーターはショックを受けながら手を挙げた。

 「ああピーター、私はずっとこの時を待っていた。お前の彼女をお前の目の前で殺した時のお前の顔が見たくて―」

 「そんなことさせないぞ!」と声が聞こえた。

 「イーーハーーーッ!」

 スコットはロープにつかまってやってきて、ジョンの頭を蹴った。ソフィアはジョンから離れるように走った。

 「ピーター、僕が来たよ!」

 「ああスコット!」ピーターは弟を抱きしめようと前に走った。

 その時、ジョンが「くそがき!」と叫び、スコットに向けて銃を発射した。銃弾はスコットの右腕に当たった。

 「スコット!!!」ピーターは叫んだ。ショックと恐怖で目が大きく開いていた。

 「大丈夫だよ、ピーター」スコットは弱った声で言ったが、負傷した腕を持ちながら痛がっていた。

 「フン!」ジョンは叫んだ。

 ピーターは怒り狂った目でジョンを見た。

 「お前!」ピーターはジョンの腕にむけて銃を発射した。当たった。

 ジョンは同時に発射したが、当たらなかった。

 ジョンは銃を落とし、腕を押さえた。

 もう一度銃を持とうとしたが、その前にピーターが走ってきて、ジョンのことを押し倒した。ピーターはジョンの額に銃を当て、「動くな。」と言った。

 「ピーター、お前は自分の親友のことを殺すことなんてできないだろ?そんなもの下ろしなさい、小さな子猫ちゃん。」

 ピーターは唸ったが、ゆっくり銃を下げた。

 「臆病者!」

 ジョンはピーターの顔に平手打ちをした。銃は飛んでいった。スコットがそれをつかまえた。しかし、ピーターとジョンはもう一つの銃をとるために戦っていた。ジョンの指があと少しで銃に届く時、ピーターは何とかジョンの手を払いのけた。

 「もう終わりよ!」ある女性の叫び声がした。それはサリバン先生の声だった。

 警察が一緒だった。

 「サリバン先生、私です、あなたの理科の授業の生徒のジョンです」とジョンは変に礼儀正しく言った。

 「私は知ってますよ。あなたは変装したエックス博士ですね!」

 ジョンは大笑いした。「変装した?それは間違っているね!」

 大きく笑いながら、シャツを脱ぎ、胸に黒いベトベトのシールが貼ってあるのを見せた。

 「ゲームはまだ終わっていない!私の勝ちだ!」

 ジョンはシールを胸から剥がした。シールから何か黒いものがどこかへと飛んでいった。

 ジョンは倒れた。

 「ジョン?」ピーターは恐る恐る聞いた。

 ジョンは目をパタパタさせ、ゆっくり開けた。「ピーター?」

 「ジョン、元に戻ったんだね!」ピーターは親友を抱きしめた。そして起き上がり、みんなが疑問に思っていたことを口にした。「エックス博士はどこに行ったの?」

 「僕は知っているかも」ジョンはそう言いながら弱々しくゆっくりと起き上がった。長い間何も食べていなかった。

 「大丈夫だよ、ジョン。場所だけ教えてもらえれば。」ピーターは優しく言って、ジョンをまた座らせた。

 「彼はきっと僕の家の地下にいる。」


 警察の車は急いでジョンの家に向かった。しかし、驚くべきことに、エックス博士はジョンの家の庭の芝生の上で既に横になっていた。

 スコットの賢い友達、すなわちグループは、ジョンの家の地下の窓の近くで待機していた。長い黒いコートを着たエックス博士が出てきた時、バン!

 ポットやフライパンや自転車が二階から彼の上に落ちてきた。グループの一人である赤色の髪の男の子は野球のバットでエックス博士の頭の後ろを殴った。紫色の髪の男の子は素早くエックス博士の手首を紐を使って背中の位置で結び、足首も紐で結んだ。黄色い髪と緑色の髪の男の子達はエックス博士を庭に連れていき、仰向けにした。彼らはエックス博士の上に座り、動けなくした。

 スコットは笑いながら、友達に「よくやった!」と言った。

 エックス博士はもちろん、逮捕され、全身をくまなく捜査され、これ以上薬を持っていないことを確認された。

 ピーターはジョンの家の前で、ソフィアを腕の中に抱えながら、安心したため息をついた。


エピローグ


 スコットは、ピーターやソフィア、ジョンとグループのメンバー達とともに、エックス博士の逮捕への貢献が新聞に載ったのは嬉しかったが、グループをやめて、真面目な生徒になろうと決めた。

 「ピーター、信じられないことがあった。」

 「何だ?」

 スコットとピーターは新聞を二部買い、10回目ぐらいに読み直していた。

 「メリッサに告白されたんだ。彼女は新聞を読んで、僕にすごく感心してくれたの。」

 「で、何て答えたの?」

 スコットは大きな笑顔で答えた。「オッケイ、君かわいいね、ぜひ付き合おう!って言ったよ。」

 ピーターは笑った。

 ピーターはジョンがローリーと付き合っていることも聞いた。ローリーがジョンに告白した。先日二人は一緒に学校から帰っていて、幸せそうだった。ローリーはジョンの肩に頭を寝かせ、二人は手をつないでいた。

 ピーターはそろそろ自分の番だと思った。ソフィアに告白する時がきた。


 今度は練習しないことにした。学校でソフィアに会ったら、彼女の耳元に「学校が終わったら教室で会おう」と囁いた。

 みんなが帰って誰もいない教室で、ソフィアと二人きりの時、彼は大きく息を吸い込んで、正直に「ソフィア、僕は君を愛している。付き合ってくれないか?」と言った。

 ソフィアは嬉しそうなため息をついた。まるでこの時をずっと待っていたかのように。「もちろん付き合うわよ、ピーター。私もあなたのことが好き。すごく心が広くて優しくて…私の理想の彼氏よ。」

 そして、先生の机の後ろに立ち、二人はキスをした。


 ピーターは自分にとって大切な人たちをこれからも大切にしたいと思った―それは、優しい彼女のソフィア、親友のジョン、彼の一番好きな理科の先生であるサリバン先生、そして彼の一番好きなヒーローである弟のスコットである。

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