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第一山田

エピローグ



思い返せば高1の春『それ』は唐突に目覚めた。


「今日体力テストかよマジだるい。」


俺は人生に辟易していた。だって仕方ねーだろ、同じような日々の繰り返しで宿題多いし先生怖いしそもそも男子校で女子いないしかと言って共学言っても付き合える訳ねぇ!!人生の終わりを自覚していた。


「お前ら…気合い入ってんのかァ!」


ここの学校は私立の中高一貫、そこそこ偏差値も高いので、運動苦手な子も多いのだ。だから体育の先生は厳しくて怖い...。その中でも一番といっていいほど厳しいのはこの、保最田ほもだ先生。いつも筋トレしてる脳筋野郎でホモっぽい。そんなこといってんの聞かれたらぶち殺されるがな。


「気合いが足りんようだからお前ら大好きの持久走から測定していくぞ!!」


やべえマジだるい帰りたい。まあ今日は朝から体が軽いし保最田の言うことだし頑張って走ろう。な?っと隣にいる最部山もぶやまとアイコンタクトを交わしお互いを元気付けた。てか1500m走で前を占拠する運動部邪魔なんだよなぁ。


「よおい!スタァートぉぉ!」


ーー1分経過ーー


(ふむふむ。このクラスには運動得意のやつが多いようだ。特にサッカー部の足早田あしはやだ。それに比べ、あそこで立ち止まってるのは誰だ!?あいつ…)


この時だった。自分の変化に気づいたのは。


「山田ぁ!何立ち止まっとる!!」


そう。俺の名前は山田。そしてこの話の主人公であり、



「あ、走り終わりました。記録は49秒です。」


人類の常識を遥かに越えた運動能力の持ち主である。

って自分で言うのもなんか違う気がするが。



ーーそして、現在ーー



ー俺は今人類最高の運動能力を持ちながらコンビニでバイトをして生計を立てるフリーターである。

1500mの記録は非公式扱いとなり、俺の能力を知っているのはその場に居合わせた生徒と先生だけということになっている。

(まぁオリンピックとか呼ばれても遠いしめんどくさいから別にこのままの暮らしでもいいんだけど。)


「あー!!三郎丸!!ダメだぁーーー!」


うるせぇなあ。この声はガキだな?三郎丸ってなんだよ。太郎丸と五郎丸の中間かよ。ルーティーンポーズやらなきゃ、なんてことを思いつつ、ふとコンビニの外に目をやる。目の前に広がっていた光景…それは


ー小柄の、三郎丸なんだろうか?それを守るように、包み込むように抱きしめ道路に膝をつく少年。その前には、止まる気配を見せない大型トラックー


「あのガキ!!」


母性?男としての意地?それとも...いや言葉では形容できない『何か』だったのだろう。それが、その『何か』が山田を突き動かした。トラックバの前までは20数m。山田はひとっ飛びでコンビニのガラスを破壊し、一瞬でトラックの前へと飛んだ。

(トラックを止めようにもトラック壊したら運転手死ぬし、トラック弁償とかになるんじゃないの?そんな金ねえよ!優しく…そうだ。できるぞ山田俺には出来る。優しく手のひらで受け止める!!)


「ひっ…引いちまったかぁ?」


「いや、大丈夫だぞ。それよりもう少しゆっくり運転しろよな。トラック少し壊れたけど…これはお前が悪いんだぞ!」


トラックの運転手はトラックの傷を確認すると驚き、謝りながら走り去っていった。


「坊主。横断歩道渡るときは青信号のときにしっかりと回りを見てからな。」


「は、はい!あの、おじさん!三郎丸僕を守ってくれてありがとう!」


「おじさんじゃねえ。お兄さんな。そんじゃ俺はもういくぞ。」



俺の力。他の人にはない力。つまり神は俺に何かをさせるために俺に、70億人の中で俺にこの力を授けたのだろうか?いや、神が俺に何をさせたいかじゃない。これは俺の人生だ。俺だけが俺の意思で生きる一生。俺が何をしたいか、だ。

(って今日の俺は詩人か?らしくないな。客来ないな…。)

山田は山田の道を行く。山田にしか使えないこの力を持って。

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