A〇B48新戦略 -新たなステージへ
「ちょっと劇場が手狭になったなあ~」
プロデューサーのAは呟いた。
「でもな・・・」
彼は頭を抱え込んだ。
音楽業界では一人勝ちで目立ったことをすると、すぐにネットで叩かれた。
3年後の東京オリンピックを過ぎると、日本経済が低迷すると言われるが、
彼には無縁だった。
というよりむしろ海外進出計画がさらに進んでいた。
しかし彼は、業界や一部国民の妬みで嫌気がさしていた。
「何かスカッとすることないかな~」
彼は、ステージ上で躍る彼女らを陰鬱な目で見つめていた。
「・・・という事情なんだ。
藤崎、何か面白いアイデアないか?」
国会議員の太田は藤崎に事情を説明した。
「ないこともないがな~。
でも、国会議員のお前がどうしてA〇B48の心配するんだ?」
藤崎は小首を傾げた。
「A〇B48は日本の成長戦略の柱だ。
海外進出の有力なコンテンツになっている。
いわゆるクールジャパンだ。
でもこの頃、プロデューサーのAが引退するという噂が出ている。
総理が、何が何でもAを引き留めろと指令を出した」
「政治家も大変だな~」
「ところでどんなアイデアだ。
早く聞かせろよ」
「A〇B48をオリンピックに出す」
ふっ、と太田は息をこぼし、そのあと大笑いした。
「アイドルがオリンピック?」
バカげていると思ったが、なぜか愉快になっていた。
「もしそれができれば、A氏も喜ぶぞ」
「それだけじゃないぞ、もう一つの問題も解決できる」
藤崎は右手に胸を当てた。
「名探偵にお任せあれ」
彼は深く頭を下げた。
2020年、東京オリンピックが開幕した。
開会式が始まり、選手らが整然と競技場のトラックを行進している。
でも、違和感があった。
小さいッ!?
観客が騒然としだした。
選手にしては身長が低い。
それに全員、女子だった。
そう彼女らはA〇B48、S〇B48、M〇B48などのメンバーだった。
それは、オープニングセレモニーの始まりだった。
各国の選手に扮した彼女らは整然と入場し、
フィールドで見事なダンスを披露した。
藤崎のアイデア通り、彼女らの東京オリンピック出場は本当に実現したのだった。
でも、日本国民は驚かなかった。
というより予想通りだった。
多くの人々は、ここまでされるとむしろ痛快さを感じていた。
実は問題となっていた新国立競技場の建設費2500億円をA氏が払ったのだ。
表向きはA〇K48の新劇場として。
でも裏では、オリンピックセレモニーをプロモーションとして利用できるオプションも付いていた。
日本国民は太っ腹のA氏に賛同したが、
世界中のメディアの90%がボロクソに批判した。
後にA氏はそのことを聞かれ、インタビューに答えていた。
「いいんだよ。70億人の1%の人の心をガッチリ掴めば」