月 7
親燕が巣の回りを飛んでいる。
小さな燕が羽をばたつかせて、一羽また一羽と空を滑空する。
最後の一羽が羽ばたいて空を飛ぶが、体は持ち上がらず地面へと落ちていった。
「こんな所に巣を作るなんて珍しいわねぇ」
グランマが今度は感心したように呟いた。
歌音は地面に落下した燕から目が離せずにいた。
ピピィ!ピピィ!
親燕が子燕の上を旋回する。
まるで、こうやって羽を動かして飛ぶのよ!と教えてみるみたいだ。
子燕は応えるように羽を必死に動かした。しかし、その小さな体は地面に縫いとめられているかのように浮き上がらない。
兄弟達は、もうコツをつかんだようで空を羽ばたいている。
ピピィ!ピピィ!
兄弟達がせかすように鳴く。
ピィ!
翼をいくら動かせても体は一向に浮かない。
兄弟達は青空をのびのびと飛んでいるにもかかわらず、地面に縫いとめられてしまっている。
ピィ
遠すぎる青空を見上げて子燕は小さく鳴いた。
「ねぇ、グランマ、どうしてあの子は飛べないの?」
「見た所…翼に異常は見られないから…体が弱いから飛べないのかしら」
グランマは心配そうに首をかしげた。
(お前も…私と同じなの?)
歌音は子燕を見つめた。
「グランマ、あの子は練習をいっぱいすれば飛べるようになる?」
「そうねぇ、ここは外敵はいなさそうだから旅立ちの時までに飛べれば大丈夫よ。」
(頑張れ!燕さん)
心の中で歌音は子燕にエールを送った。