5/16
月 5
「歌音にもう1つプレゼントがあるの。」
「わぁ、何?」
グランマは微笑んで歌音の手に冷たい金属質の物を握らせた。
歌音が驚いてグランマを見た。
「グランマ、これ!」
歌音の手のひらの中にあるそれは、古金美色の懐中時計でその色から長い年月がたったものであろう。装飾も中々に凝ってあって蔦が這うように縁を飾り斜め上には優雅な薔薇が施され鳥や獣が彫られている。
しかし、この懐中時計は開かない。修理に何度も出したが、固く閉ざされたままで時計盤が見えない。そして秒針も止まったままだ。
「グランマが大切にしていたものじゃ」
「前に歌音はこれを欲しがっていたでしょう?」
「いいの?」
ぱっと歌音の顔が輝く。
壊れて動かなくなってしまった懐中時計だが、歌音はこのデザインが気に入っていた。
「ええ。歌音が大きくなったらあげようと思ってたのよ。大事にしてね。」
「うん!大事にする。ありがとうグランマ大好きよ!」
歌音はグランマに抱きついた。