月 4
グランマは今年で70歳だが、年齢よりも若く見える。白髪の髪を後で上品にまとめてある。桜色のタートルに薄紫色のカーデガン、濃い紫色のロングスカート。背筋だって真っ直ぐ伸びている。
グランマは歌音に近づいて抱きしめた。
「うふふ、私の可愛いオチビちゃん。元気そうで嬉しいわ。」
そう言って歌音に花束を渡した。
「ありがとう、グランマ。とっても綺麗でいい香り」
あまりにもでかい花束な為、歌音は半分埋もれかけてしまっている。
やわらかな甘い花の香りが鼻腔をくすぐる。
グランマはベットに腰掛け歌音も座らせた。
歌音は花束から顔を出して聞いてみた。
「ねぇ、グランマ、ママは一緒じゃないの?」
ほんの一瞬だけグランマの顔が強ばった。一瞬だったので歌音は気がつかなかったのかもしれない。
グランマは申し訳なさそうに歌音の頭を撫でた。
「ママはね、お仕事で海外に行ってるから来れないのですって、だから手紙とプレゼントを預かってるわ。」
グランマは深緋色のバッグから空色の手紙と小さな白い四角の箱に赤いリボンが飾られたプレゼントを出して歌音に渡した。
歌音は花束を横に置いて手紙の開封にかかった。出てきた誕生日カードを開けてみると、苺ケーキのイラストの上に『happybirthday』とだけ書かれている。隅々までカードを見たけれど、書かれているのはたったそれだけだった。
誕生日カードを閉じた時、ふわりとママの香水が香って歌音はまた泣きたくなった。
気持ちを変える為、白い箱を開けてみた。中には透明な水晶のペンダントが入っていた。
「わぁ。」
歌音は持ち上げて目の前に翳してみた。
水晶は苺くらいの大きさで楕円形の形をしていた。
透き通る透明な石はキラキラと輝いた。
「まぁ、綺麗ねぇ。光に翳すと虹が現れているわ。」
「え?どこに?」
歌音は水晶の角度を変えて見て見た。
グランマの言うとうり水晶内に虹色が見えた。
「本当だ、綺麗。綺麗ねー。」
頬を蒸気させて水晶を眺める歌音にグランマは柔らかな笑顔を向けた。