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空奏曲  作者: 猫福屋
3/16

月 3

午後からは、見舞い客が増える。

その為かドアの向こうでは、ひっきりなしに足音が聞こえる。

だからと言って私の病室のドアが開かれるわけがないのだけど。

歌音はベットの上で体育座りをして顔を伏せた。

個室はひとりぼっちだ。

初めは大部屋にいて仲の良い子がいたのだけど、翌朝にはいなくなっている。

退院したのだと、まわりは言う。

一人またひとりと減ってゆくに連れて恐怖すら覚えた。

個室になってからは、歌音は引きこもりがちになった。

友人を作るのが、いや、せっかく出来た友人をなくすことが嫌だからかもしれない。

「…お家に帰りたい。」

呟いたら、ますます思いがつのる。

「ママの作ったケーキが食べたい。」

以前に作ってもらった時、スポンジの上に生クリームやら苺をたくさん乗せすぎてローソクが立てられないと、オロオロしていた。

歌音は思い出して小さく笑った。

しかしすぐに泣きそうな顔になる。

(どうして、ママは会いに来てはくれないの?)

一ヶ月前から、ママは急に来なくなった。

「私、15歳になれたよ。ママ。…なれたんだよ。」

『15歳までしか生きられないかもしれません。』

いつかお医者の先生が言った科白が脳裏に浮かび上がる。

「ママに会いたい。会いたいよぉ。」

会ったらきっと、鬱々とした気持ちが晴れてくれるのに。

涙がでそうで、桜色の唇を真一文字に結んだ。


白いドアが勢いよく開いた。

「!?」

ピンク、白、赤、紫、黄色、緑、色とりどりの大きな花束が現れて、歌音は目を丸くした。

「ハッピーバースデー、歌音。」

花束の横から顔を出したのは老婦人だ。

「グランマ!」

歌音はベットの上で飛び跳ねた。

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