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月 2
歌音はいつものようにベージュ色の体温計を受け取り、脇にさしこんだ。
看護婦のお姉さんが、窓へ近づき真っ白なカーテンを開けた。
薄灰色がかった青空が見える。雲ひとつ浮かんでいないことから今日は晴天なのだろう。田舎の自分の家で見る空は綺麗な青なのに、ここで見る空は灰色がかって見える。
(いつになったら帰れるんだろう。)
歌音は小さく嘆息し、窓から視線を反らした。
「今日は歌音ちゃんの誕生日ね。おめでとう。」
溢れんばかりの笑顔で看護婦のお姉さんが、祝いの言葉を述べた。
「…ありがとう、ございます。」
笑ったつもりだったが笑えなかったかもしれない。
(ひとつ、年をとったら…それだけ死期が早まってしまうのに…おめでたいの?)