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隣の幼馴染  作者: カカ
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待ち合わせ

 冴えない顔、とまではいかないが、特に目立った特徴もない顔立ち。死んでいるわけでもないが、やる気がみなぎるわけでもない瞳。髪は適当に近所の二千円カットで済ませ、後は伸びるままに放っておく。未だかつて、女子からの黄色い悲鳴など引き出せた試しのない、平凡な容貌。

 悠は、鏡に映る自分顔を見て、ふぅ、と軽くため息。

 本日は、四人で遊ぶ約束をした、日曜日。女子とのお出かけだし、多少は何かおめかし的なものをした方がいいのだろうかと一瞬悩みもしたが、止めた。飾ったところで何かが変わる気もしないし、そもそもそこまで気合を入れる立場じゃない。ある意味、引き立て役になるべきですらあるのだ。

 身支度なんて適当に済ませ、服もいつも着ているシャツとジーパン。親に、男の友達と遊びに行くんだ、といっても、全く疑われない、標準スタイルだ。

「……ま、こんなもんでいいよな」

 悠は呟いて、家を出た。

 待ち合わせ場所の駅前にやってくると、すでに久賀が来ていた。まだ十五分前であるのに、随分と気合が入っているものだ。

 その意気込みは服装にも現れている。ジャケットやパンツなどに、どこか高級感がある。全体的に、きりっとした感じが出ていて、意識してそういう格好を選んでいるのがわかった。なんも考えていない悠とは大違いである。

 適当にあいさつを交わした後、並んで女子を待つ。

 と、そこで、

「ところでさぁ、最近、お前と吉良さんって、なんだか妙に仲良くない? 名前で呼び合うし、よく話をするし。なに、俺の気持ちを知りながら、お前は吉良さんを横取りしようってのか?」

 そんなことを、軽い調子で、でも隠しきれない猜疑心と共に言ったのは、もちろん久賀である。

「そんなつもりはないよ。昔は名前で呼んでたから、今更苗字で呼び合うはなんだか落ち着かないって、名前で呼んでるだけ。それに、仲がいいっていっても、せいぜい普通の友達くらいのもんだろ。お前の邪魔をする気はないから、安心しろ。しかも、最近っていっても、ここ一日二日のことだろうが」

 茜との関係については微妙な脚色があるかもだが、他の言葉に嘘はない。茜とまた仲良くなれるならそれは嬉しいことだが、そこに恋愛感情が入ってくるわけじゃないのだ。もし茜と久賀が付き合うことになったとしても、悠は心から祝福できる心境だった。

「ほんとかぁ? お前がこっそり俺を差し置いて吉良さんと付き合おうものなら、お前を殺して俺も死ぬ、とかやってやるぞ?」

「やめろ、気色悪い。そういうのはせめて男女間でやるもんだ。お前に殺されるのも、お前と一緒に死ぬのもごめんだ。っていうか、ほんと心配すんなよ。俺はむしろ応援してるんだ。今日はできるかぎりサポートするさ」

「……ほんとだな? じゃあ、とりあえず、俺と吉良さんが二人きりになれる時間くらいは作ってくれるんだろうな」

「……それは状況による。茜がそれでもよさそうだったら、協力してもいい」

「ちっ。保護者かお前は。応援っていっても、その程度か。男の友情もはかないもんだよなぁ」

「ったく、つまらんことですねるな。そもそも、いかなる時も全面的にそいつの味方をすることが、友情ってわけじゃないだろうに。それに、俺にとっては茜だって友達だ。その友達の心配もするのは当然だろう」

「はいはい、理屈っぽいこと言いやがって」

 己の劣勢を感じた、というわけでもないだろうが、久賀が話を打ち切る。周りを見回すが、まだ女子二人は来ていなくて、わずかに沈黙が降りる。

 それを破ったのは、悠の方だった。この際だし、一応訊いておこうと思った。

「久賀ってさ、そもそも、どうして茜のことが好きなんだ? なんていうか、そんなに魅力的に見える相手か、あれ」

 木曜日から二日間ほど、クラス内で、茜たちと話す機会は増えた。これまでの茜の言動に、さほど男を魅了するようなものはなかったと思う。特に可愛い発言をするでもなく、男を喜ばせることを言うでもない。

「んー、最初は実のところ、この子かわいいな、って思って、お近づきになれたらいいな、くらいのもんだったんだけど」

「けど?」

「今は、普通に好きだ。だって、吉良さんって、すっげー面白いだろ」

「面白い、か? そうかな。まあ、そうだとしても、それって女としての魅力を感じるところじゃなくね?」

「そうかもしれないけど……あんな子が彼女だったらすごく楽しいだろうな、って思うよ」

 屈託のない、久賀の笑み。

 普段は、なんだかなんちゃって高校デビュー者のちゃらい笑みなのだが、今回のは、素の笑みだと感じる。学校で普段、こういう笑い方をしていたら、普通にモテる奴だったんじゃないだろうか。今のところ漏れ聞く久賀の印象は、顔はなかなかいいのに半端にちゃらい残念な男だ。

 笑みについて軽くアドバイスでもしてやろうかと思ったけれど、自分の友人がモテモテというのは腹立たしいので、黙っておくことにした。自分の狭量さを、別に恥じたりはしない。それが男というものさ!

 ともあれ。

「……ま、お前がそう思うなら、それでいいけどさ」

 悠が呟くと、

「お、来たぞ、二人一緒だ」

 久賀が悠の背後を見つつ、言った。

 久賀の視線の先に、二人が小走りで近づいてきているのが確認できた。

 向かって左側は茜。髪はいつも通り、邪魔にならないように結んだだけ、な感じで二つに結んでいる。服も、もしかしたら多少のおしゃれはあるのかもしれないが、割とあっさりした服。ラフな雰囲気が出ていた。

 そして右側は国見さん。眼鏡はいつも通りだが、髪をバレッタで留めていた。服にも気を使っているらしく、柔らかな印象を増すようにコーディネートされていた。

 あれ、もしかしてファッションに無頓着なのって自分だけ? と申し訳ない気分にもなるが、今更どうしようもない。

 女子二人は、ほどなくして悠たちの傍にたどり着く。

「ごめん、待った?」

 と、半ば定番のセリフを放ったのは、国見さん。一方、茜の方は、ちらりと時計を確認したのち、首をひねりつつ、

「えーっと、ごめん?」

「そこは素直に謝っておけよ。まだ約束の十時には早くて、別に謝るようなことは何もしていないとしても」

「……わかった。ごめんっ、バカ正直にほぼ時間通りなんかに来ちゃって!」

「それのどこが素直だ! にじみ出る不満を隠し切れてねえ!」

「実のところ、自分に非がないのに謝ったら負けだと思っている」

「お前、俺の知らない六年間に何があった!? 何がお前にそう言わせるんだ!?」

「はいはい、もういいから、さっさと行くぞ」

 途中で久賀が割って入り、二人の会話は途切れる。

 ああ、こんなやり取りをしているから勘違いされるのかな、とも思うのだが、条件反射みたいなものだ。茜が何かを言えば、悠がそれに応える。幼少期の呼吸が、どうしてか、今になって蘇っているようだ。

 それはそうと、二人が仲良くしているのに不満を持つかと思いきや、久賀が案外、愉快そうに笑みを浮かべている。そして、

「やっぱり面白いな、吉良さん。俺、こういうところ、すっげー好きだ」

 悠の耳元で、小さく呟いた。

「……あ、そう。ならいいけど」

「でも、あの掛け合いをやってるのがお前だってことが、ものすごく腹立たしい。替われ」

 やっぱり不満はあるらしい。面倒臭い奴だ。

「んなこと言われたって、こういうのはタイミングだろ。自分でなんとかしろよ」

「いやいや、そういう突っ込みって結構難しいんだぞ? ほんと、六年もほぼ会話がなかったなんて、信じらんねぇ」

「それは俺も思うけどな」

「で、そろそろ男同士の密談は終わりにしてくれるか? 女を待たせるものではないぞ」

「おう、すまんすまん。じゃ、行こうぜ」

 不満顔の茜に、久賀が軽い謝罪。そして、久賀が先頭を切り、他の三人が続く。目的地は、近くのボーリング場だ。

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