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融氷 ~氷結魔術師転生物語~  作者: 月見黒猫
1章:幼少期エルフェデット編
9/22

8:魔力性質を語る

説明回になります。


5/30、シェイムスの年齢がおかしかったので訂正しました。

 私がショックを受けているのを察してくれたんだろう。アリアはフォローするように言葉を紡いだ。



「とはいっても昔の話です。その魔術師がいたと言う西大陸では確かに差別されていたようですが今ではないことですし、中央大陸ではそんな風習はなかったんです。……それに、“氷結の悪魔”なんて言われていますが、当時使い捨ての駒のようにされていた魔術師を大勢救った、という話もあって魔術師の家系からは英雄視されているようですしね」


「そうなの? うちは魔術師の家系じゃないからそんな話は聞いたことなくて……」



 ああ、やっぱり今の情報はしっかり集めておかないとだめだった。

 いまさらあのときの私のことを調べてもどうにもならないことではあるけれど、やっぱり興味はある。

 ……なんとなく知っておかないといけない気がする。



「確かに、この国では魔術師の家系自体があまり残っていませんし、貴族になんてほとんど残っていません。……ですが、もし興味があるのでしたらアルトリア家に聞いてみるのはどうでしょうか? 今でこそあまり目立たない家ですが、元々はこのエルフェデットの有力魔術貴族だったと聞いています。代々魔術を習い、継承していく方式を今でも残した由緒正しき貴族家ですから」


「え? そうだったの?」


 

 素直に驚いた。つい先日連れて行ってもらったばかりなのに。

 と、なるとアストのお兄さんがいなかったのは魔術学校にでも通っているのかもしれない。

 代々魔術師である、と言うことはアストも魔術師になるのかな。

 ただ、アストは魔術を使えないと言っていたし、魔術学校に通うなら通常通り九歳からになるんだろう。

 


「ええ。何でも昔から続く魔術師の家では、親から子に魔力の性質が受け継がれていくんだそうです。生まれたときには既に性質を調べるんだそうですよ。ちゃんと性質を引き継いだ跡継ぎが生まれてきたかどうか」


「そうなのね。今でも残ってるんだ、その風習……」


 と、アリアに聞こえないように後半部分を小さくつぶやく。

 700年前もそうだった。私も魔術師の家系で育ったから分かる。

 私は両親から氷の魔力性質を色濃く受け継いでいたし、歴代ではその性質が最も色濃くでている、と言われたほどだ。


 魔力性質は簡単に言えばどういった魔術を発動させやすいか、を示す魔力を構成する要素のことだ。

 たとえば魔力性質が“火”に特化した人なら火を起こす魔術に必要な魔力量も減るし、逆に魔力性質に“火”の要素が少ない人だと火を起こす魔術に必要な魔力量はぞ題する。

 

 それはある程度は両親から受け継ぐものでもある。

 父親と母親の持った性質を子どもがどの程度受け継ぐかは分からない。どちらにどれだけ似るかも分からないし、親の持った性質のどの部分をどれくらい受け継ぐかによっても違う。

 魔力性質は一番濃くでた性質ほど強力な魔術を扱えるけど、絶対に個人の魔力は色んな性質を持っているものなので色んなものが混ざってしまう。

 時には両親にはないものも混ざり合った要素からたまたま発現することもあるって言うし。


 まるで色を混ぜるように出来上がる子どもの魔力性質を知る魔術もあるらしいけど、私はそれを両親から教えてもらう前に幽閉されてしまったし、両親も死んでしまった。


 最もそんな方法を使わなくても一番最初に自由にイメージをして使え、と言われて発動した魔術が一番濃い魔力性質を現しているというのが一般的で、アリアもそれで判断したんだと思う。

 前世が前世だけに特化した性質は同じものだろうとは思っていたけど。



「ありがとう、アリア。アリアって物知りなのね」


 なるべく子どもっぽくそういうと、私より九歳年上のアリアは「侍女の嗜みです」と言うが、どこか照れくさそうだった。



――――




 魔術の訓練を始めたその日の夕食のとき、お母様はとてもうれしそうに食卓に座っていた。

 二十人は優に座れるだろう、という長いテーブルの真ん中にいつもどおりお母様と二人向き合って食事をする。

 お父様は王宮に仕える貴族だ。遅くなるときのほうが多い。



「ラビ、聞いたわよー! あなた魔術を使えたんですってね! しかも絶滅危惧種の氷魔術だとか。歩けるようになったころから本を読んでいたから、きっと書斎の魔術書にも興味を持つだろうとは思ってたけど、まさか六歳で使えるようになるなんてね!

 シェイムス君より早いんじゃないかしら……確かあの子が魔術を使えたのは七歳って言ってたような」


 と言うような感じで、お母様はとても機嫌が良かった。

 やっぱり親バカなんだ、この人は、と娘の立場から言うのもどうかとおもうけど、それと同時にここまで喜んでくれるとうれしい。

 多分本気出せばもっと派手な魔術も使えるんですけどね。



「シェイムス……? お母様、その方の名前は聞いたことがないのですが……」


「あら、この間アルトリアのお屋敷に行ったときに何回も話にでてたでしょ? アスト君のお兄さんよ。話、覚えてないかしら? 正式なアルトリア家の跡取りとして今は魔術学校に通っているみたいだけど、七歳でアルトリアのメインの魔力性質“雷”を使えるようになった優秀な子よ。今は九歳だからあなたたちとは三歳離れてるのねー」


 あー、そういえばそんなことも言っていた気がする。

 あの時はアストと伯爵の関係が気になって仕方なかったからあまり話を聞いていなかったのは確かだ。


 “雷”特化の性質はありふれているけど、家系的にしているなんてよっぽどなんだろう。

 そういえばあの時私と一緒に戦った魔術師たちにも“雷”特化の魔術師は結構いたけれど、私が死んだあとどうしたんだろう。

 歴史には私の事しか載っていなかった。 



「そういえばそんな話をしていたような気もしますね……。そういえば、また今度アルトリアのお屋敷に遊びに行きたいのですが、構いませんか?」


 と、思い出した。アストがまた遊びに来て、と言っていた。

 正直屋敷にいてもすることといえば書斎にいるかこれからは魔術の特訓をするくらいだから、せっかく出来た同年代の友達と遊びたい。



「ええ。もちろんよ。また伯爵やメルに連絡しておくわね。ラビが遊びに行きたいって言ってるってね!」


「ありがとうございます」


 アストはあれからいじめられてはいないんだろうか。

 ついつい家名の力を使って追い払ってしまったけど、私がいないことを悟ったらまた来るんじゃないだろうか、と少し心配になる。


 それに良く分からない伯爵との仲だってあるし、次に遊びに行くときには何か分かったらいいな、と思う。

 


「さぁさぁ、今日はご馳走よ! 私の自慢の娘の才能を祝して、色んなものを作ってもらったの! ほら、見て。貴重なタイニィーフェザーのローストなんてのもあるの! 後は……最後のお楽しみもあるわよ!」


 なんてことを重く考えていたらお母様はこれでもかっ、と言わんばかりに合成に作られた目の前のご馳走を指差していた。

 タイニィフェザー、そういえばそんな名前の魔物がいた気がする。魔物なんて魔導兵器の陰にすっかり隠れてしまって脅威とは思われていないけれど。

 それ以外にも確かに貴重な食材が並んでいた。屋敷でのパーティなんかでも見る高価なものもたくさんあった。


 本当に、お母様は親バカだ。とは言いつつも顔は笑っているので仕方ない。

 正直なところ食べるものにはあまり興味がないので食べ物で祝われることに関してはそこまでうれしくないけれど親に喜ばれることに関しては少しうれしい。

 “氷結の悪魔”だって元を正せば人間なんだから。




 と、並べられた晩餐を食べると最後にはシャーベットがまっていた。

 私にとって数少ない大好物であるシャーベットに我ながら年相応に喜んでしまったと思う。

 さらに言えば、私は今は子どもだったんでした。

 

 



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