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Watch ~監視者~  作者:
「悲しみの森」
9/98

<七-一>

ちょっと暗め…

 最初に目に付いたのは赤。

 いや、2つ灯った禍々しい赫光かっこう

 次に見えたのは、黒い人影。

 手に持っているのはナイフ。

 近づいてくる。

 「…シィン…。」

 人影が呻く。

 わかっていた。ついに彼奴が来たのだと。

 この時が来てほしくはなかった。

 だから、明日は里を出るつもりだったのに。

 人影が近づく。月光がその顔を照らす。

 知っている、その顔はよく知っている。

 「…父さん、…母さん。」

 二人は泣いている。

 俺の頬にも、いつの間にか涙が流れていた。

 未だ、涙が流れるのか。そんな埒もないことが頭をよぎる。

 わかっている。

 二人を助ける、そのためにしなければならないことを。

自分の腰から短剣(ダガー)を抜く。去年の誕生日、父に送られた短剣。

 「もう、おまえも一人前の野伏だからな。」

 そういって笑いながら短剣を贈ってくれた父。その横で微笑んでいた母。

 もう、二人の笑顔を見ることはできない。

「…、…。」

 二人は何かを言っている。聞き取れないほどの声。でも、わかる。

 二人が何を求めているのか。

 俺が何をしなければならないのか。

 この日が来なければよかったのに。

 二人が腕を振り上げる。

 始めは父。

 そっと、一歩近づく。父は震えている。何かに耐えるように必死に。

 耐えているのだ。苦しんでいるのだ。

 「ありがとう、父さん。」

 自分のありったけの思いをその一言にこめて。

 そっと胸に短剣を潜り込ませた。

 流れる血は思いがけず少なかった。

 それでも、熱い血潮が顔にかかる。父さんの血。

 後ろから、母さんが来る。

 振り向く。

 母さんの顔は涙に濡れていた。

 ナイフが肩に刺さる。

 母さんからの最後のプレゼント。

 ナイフを肩に刺したまま、短剣を母さんの胸に。

 「ありがとう、母さん。」

 母さんの血潮も顔にかかる。

 両親の血にまみれた俺。

 瞬く赫光。

 二つの赫光の下に見えるのは闇の色をした三日月。

 嗤っているのだ。

 跳びかかろうとした瞬間。

 消えた。

 そこにはもう、何もいなかった。

 そして聞こえる悲鳴。

 ふりむくとそこに、彼女がいた…。


更新遅れました。

やっと主人公の出番ですが…。不幸だと思います。

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