<十>
異変を感じたのはシィン。
(何だ、何が起きた?)
急に背負っていた身体を重く感じた。
(罠?いや違うな。他のメンバーに変調はないようだ。)
しかし、何か異変は起きている。このまま進むのは危険、と判断して一行を止める。
「どうした?」
たずねてきたカイトに、自分が感じた変調を伝える。
カイトは早速パーティのメンバーに確認していく。
結果、変調を感じているのはシィン一人ということが分かった。
「原因として考えられるのは『鍵』でしょうか。」
シャリーが推測を述べる。シィンと他の者の違いは確かに『鍵』である。
「試してみよう。」
そう言うとカイトがシィンから『鍵』を受け取り、首に掛ける。
「どうですか?」
シャリーの問いにカイトは
「別に変わりはないぞ。」
と答える。シィンも
「相変わらず、身体の調子が悪く感じるな。」
と返す。
「その子を背負っていて疲れたんじゃないの?」
ケイトが言うと
「疲れたと言うより、いきなり力が弱くなった感じだな。」
と答えるシィン。
「原因は分からない、ということですね。」
「で、どうする?」
「俺が弱くなっただけだ。やることは変わらん。」
「大丈夫か?」
「『試練の間』に入らなければ大丈夫だろう。」
「彼らがいる可能性は?」
「『鍵』が無ければ無理だ。そこまで辿りつけんだろう。」
「それでは進むか。」
何が起きるか分からないため、慎重に進んでいく。未だ「新しき星」の手がかりは見つからなかった。
シャリーもシィンも、そして「風追い人」の他のメンバーも失念していたことがあった。 それはシィン自身が「特別」だということ。
神にも届く「不死者」に念入りに呪われた「転生者」であること。
その魂には「不死者の呪い」が食い込んでいる。
そしてこの『迷宮』は不死者が入れない結界を持つこと。
実は、この迷宮に入った時点でシィンの弱体化は起きていた。ただし、それはそれほど影響のある物ではなかった。結界が不完全だったからだ。
しかし『鍵』が『迷宮』の深部に進むことで「試練」が開始され、『迷宮』の構造が変わってしまった。
「試練」が終了するまで、入り口が閉ざされたのである。
入り口が開いている状態では綻びがあった結界が、入り口が閉ざされることで完全に機能し始めた。
そのためにシィンの身体能力が弱体化したのである。この状態で戦闘になるのは非常に危険であった。
知らずに進むシィン達の行く手には予想以上の「試練」が待ちかまえていた。
一つめの「試練の間」に着いたのは、それから1ジアン後だった。
「ここまでには見あたらなかった、な。」
仲間に確かめるカイト。
それに頷く一同。
「扉には誰も手を触れた形跡はない。」
そう告げたのはファーサイト。
その事が示すものはただ一つ。
「新しき星」の生存者は一名、ということだった。
「引き返そう。」
シィンの言葉に全員が扉に背を向け戻っていった。




