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Watch ~監視者~  作者:
「精霊の迷宮」
45/98

<八>

地図を入れようとしたのですが…、うまくいきませんでした。

自分の文才で伝わるのだろうか。

それが心配です。

 「足跡がない。」

 入ってすぐのファーサイドの第一声だった。

 「やはり、な。血の臭いは?」

 「…左側の通路からだ。しかし、右からも微かにするぞ。正面からはしない。」

 「左から行こう。」

 迷宮にくわしいシィンが先頭に立ち、進む。

 その横にはファーサイドが罠の探索に当たる。

 「離れるなよ。離れると有効範囲からはずれるぞ。」

 「ああ、3ミトルだったか?」

 「そうだ。離れた瞬間、罠にやられると思え。」

 現在、シィン達は2列になって進んでいる。

 一列目はファーサイド、シィン、カイト。

 二列目はケイト、グレン、シャリー。

 シィンを取り囲むように並んでいる。

 これはシィンが持っている魔法具の有効範囲に全員が入るためだ。

 形状は捻れた鍵のような飾りのペンダントである。

 シィン曰く

 「倉庫の鍵のようなものだ。」

 ということだった。

 この迷宮に入るには、この鍵を持っていないと100%罠が作動する。

 しかし、この鍵があると発動率が100分の1に下がる。(ファーサイトが罠を警戒しているのはそのため。)

 発動率が0でないのは

 「鍵を盗まれた時のため、だと聞いている。」

 ということだった。

 この迷宮の創造主とシィンは知り合いらしい。 

 「友達なの?」

 というケイトの問いには首を横に振っていたが。


 「風追い人」は昨夜の野営の時に「還らずの迷宮」の詳細を聞いていた。

 構造は2層。ただしある条件をクリアしないと2層目の入り口が開かない。

 1層目の構造は正方形を4分割したブロックに分かれている。

 それぞれのブロックには螺旋状の通路があり、その終着点に部屋があるのだという。

 ただし、その通路には尋常ではない罠が仕掛けられている、とのこと。

 その罠を無効化する『鍵』をシィンが所有していること。

 『鍵』の有効範囲は3ミトル。その外では罠は発動すること。

 それぞれのブロックにある部屋での試練を、計4回乗り越えれば、次の階層への扉が開くこと…。

 その試練については詳しく語らなかったが、そのような説明を受けた。

 そして重要な点がもう一点。

 「…」

 シィンのその言葉に、普段は冷静なシャリーまで、一週唖然とした表情を見せた。

 「…すみません。もう一度言っていただけますか?」

 「あの迷宮は『生きている』。」

 「…よく分からないんだけど。」

 全員の思いを代弁してケイトが聞いた。

 「正確には『擬似的に生きている』だな。」

 「ごめん、よくわからない。」

 「あの迷宮は全体が一種のゴーレムなんだ。」

 「なるほど、だから『生きている』ですか。」

 周りが唖然としている中で、いち早くシャリーが立ち直った。

 「ゴーレムが人型をしていなければならない、という決まりはない。」

 「とは言っても、迷宮全体がゴーレムというのは流石に想像の外じゃ。」

 「最初からではなく、自己増殖させていったらしいが、詳しくは知らん。」

 「何でそんなことしたんだ?」

 「罠の自己修復と配置換えを自動にするためらしい。」

 「そうじゃなくて、何の目的でそんな迷宮を創ったのか、を聞いたんだが…。」

 ずれた答えをしたシィンにカイトが再度問い直す。

 「ああ、それか。『禁断の知識』の保管のため、だそうだぞ。」

 魔神召喚の法や禁呪法の類、あるいは途轍もない効果を持つ魔法具等がしまわれているそうだ。力のない者が持てば自己を破滅させ、力のある者が持てば世界を破滅させかねない物が、種々存在するという。

 「『彼奴等』が目をつけそうだな。」

 「いいや、無視するだろう。」

 「何故?」

 「彼処にある知識程度『彼奴等』なら、もう持っている」

 「…。」

 「でもその他の存在には、喉から手に出るほどでしょうね。」

 「一応『不死者』は進入できないぞ。」

 4つのブロックにある「螺旋」状の通路は方向を惑わすためだけの物ではなく、生命を象徴する「螺旋」を四方に配置することで不死者を退ける結界を構成している。

 「その他の存在も「4つの間」の試練を越えられるとは思えんが、な。」

 『鍵』の所有者が「合い言葉」を知っていた場合は難易度が下がる、とのことだったので、それについては一応安心はしている。しかし、迷宮の情報については聞くだけで、とても安心できる情報とは言えなかった。

 「でも、それを知らずに迷宮に入り込めば…。」

 「『新しき星』だったか?全滅は免れんと思った方が良い。」




 昨夜の会話を思い出しながら、ケイトは前を進むシィンの背中を見ていた。

 (悪い奴じゃない、というのは分かる。でも、やっぱり周囲に対して冷たい…)

 ケイトのシィンに対する評価は厳しい。ただ、それは前回フィリアに対するシィンの態度が気に入らない、という自分の感情が影響していることは自覚していなかった。

 共に旅をし、どこか妹にも似た感情を持って接していたフィリア。

 仕方なくとはいえ、そのフィリアに傷を負わせたシィン。

 シィンにはフィリアを渡せない、とケイトは息巻いているのだ。

 カイトあたりは(小姑みたいだな…)と思ってケイトを見ていた。

 もちろん面と向かってそんなことを言ったりしない。(「ケイトの相手よりはドラゴンの方がましだ」byカイト「俺はまだ死にたくない。」byファーサイト)


 同じようにシィンの後ろ姿を見ながらグレンは別のことを考えていた。

 (親しくなること、仲間を作ることをあえて避けておるのぅ…。)

 まだ、長い付き合いではない。しかし、この数日間共に旅するだけでも大まかにシィンの性格をつかむことはできた。

 そのグレンの目から見ると、シィンの性格は基本的にお人好しに属するのである。

 冷静で的確な判断力。卓越した戦闘能力。そういった面が目立つため、冷たい人間に思う者も多いだろう。

 しかし。

 口では無愛想なことを言いながら、おそらく「新しき星」の救出に一番熱心なのはシィンであった。

 本来なら同じ遺跡の宝物を狙う物同士、ライバルであり、そのライバルが減ることは冒険者の世界では歓迎する輩もいるくらいである。

 これまでの道程も極力休憩を省き、強行軍で来たのだ。更に小休止もとらず、いきなり遺跡に挑む。いくら『鍵』があるからとはいえ、いつものシィンからは考えられないことであった。

 (思えば、前回の山賊達も、一人も命をとらなんだわけじゃしな。)

 相手に刃を向ければ、自分の命を取られても文句を言えないのが当たり前。それなのに命を助けたばかりか、森を早く出るようにさえ促す。これをお人好しと言わずになんと呼ぶのか。

 (『彼奴等』の標的にされるのをできる限り避けるため、じゃろうな。)

 シィンの態度の理由を推測するグレン。

 (辛い道を歩んでおるの…。)

 グレンは、この不器用な若者のために自分の力を貸してやろう、そう考えていた。


地図を載せたかった…


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