<三>
やっと登場人物が話し始めます。
主人公は…まだ(^^;)
「…人が多い…。」
ぽつりと小柄な人物がつぶやいた。その声を聞くとどうやら若い少女のようであった。
その声に、答えがあった。先頭の男である。
「この街はいつも大体このようなものだ。」
前を歩く男の声は静かで、しかし十分重みのある声であった。
おそらく彼がこの三人組のリーダーなのであろう。
そのまま彼を先頭に三人組は目的の建物に向かった。「冒険者の宿」である。
冒険者風の三人が、冒険者の宿に向かうのは、ある意味当然でもあった。
三人組が入った宿は「風の止まり木亭」という看板が掛かっていた。
見た目はそれほどでもないが、実はアズルの町では一、二を争う冒険者が集まる宿であり、シュメル王国でも有数の宿である。(見かけが立派でないのは宿の経営者の趣味。そのため、名前だけで探す依頼人がなかなか見つけられないことでも有名。)
その扉を開けて宿に入ると、中にいた冒険者の数組は三人組を一瞥し、また自分たちの会話に戻っていった。
この時間に宿にいる、ということは今日の依頼がない「ヒマな」冒険者達であることは想像がついた。三人組も特にその冒険者達には注意を払わず、奥にあるカウンターへ近づいていった。
ここで「冒険者の宿」について説明しておこう。
冒険者が依頼を受けたり、冒険者に依頼をしたりする仲介者が「冒険者の宿」である。
冒険者の宿は依頼者から、一定の仲介料を取って依頼を受け付け、その依頼を冒険者に回す。冒険者は宿から依頼を受け、依頼者に達成確認を行った後、依頼者から成功報酬をもらうことになる。
冒険者のミスで失敗した場合、依頼料の倍額を返すことになる。(冒険者が払えない場合は宿が肩代わりする。)
そのため、依頼の内容についてきちんと下調べをするのが宿の常識であり、冒険者も信頼できる依頼を回してもらえる安心を仲介料で買っていると言える。
冒険者は基本的に一つの宿を常宿としている。といっても固定されているわけでなく、その宿を常宿にし、そこを拠点として活動することが多い、ということである。
別に持ち家を持っていけない、というわけではないのだが、依頼を受けて遠出することも多いため、宿暮らしを好む冒険者は多い。
もちろん、これには当てはまらず、旅をしながら依頼をこなしていくタイプの冒険者もかなり居る。
ただ、常宿を持つ冒険者の方が、流れ者より一般的に信頼される傾向にある。
これは冒険者の宿の経営者自身が、より腕の良い冒険者を優遇することで自分の宿の評判を高め、より良い依頼を集めることを目指すからである。(そうしなければ宿を経営できない。)
特に腕の良い冒険者の場合、複数の宿を掛け持ちで常宿にする場合もある。掛け持ちでも依頼がこなせるのなら、宿の方もうるさくは言わない。
逆に常宿がありながら他の宿の依頼ばかり受けていると、常宿を取り消される場合もある。この場合後述の「冒険者ギルド」で回状を回されてしまう場合もあるので、冒険者は常宿の依頼を優先する。
どのみち冒険者は、流動が激しい存在でもあるため、腕の良い冒険者の囲い込みを完全にすることは難しく、どの宿でも、常に新戦力の開拓を目指している。(これは冒険者の活動範囲が広いことと死亡率が高いことにも関係している。)
また、この世界の「冒険者ギルド」では依頼を斡旋しない。ギルドは「冒険者の宿の経営者の」ギルドであって、「冒険者の」ギルドではないからである。
冒険者の宿の経営者は、その国の冒険者ギルドに属している。さらに各国の冒険者ギルドはゆるやかながらも、お互いに連携を取り合っている。これは、情報交換や場合によっては、遠方に出かけたそれぞれの宿の冒険者の便宜(送金や連絡、依頼達成の確認)を図ってもらうためである。
これには逆の面もある。犯罪に関わるなど悪評の立った冒険者の情報は、このネットワークを通じ、速やかに国中に(特に悪質な場合は他の国のギルドにまで)流される。
冒険者の宿や国が欲しいのは依頼をきちんと解決してくれる冒険者であり、ならず者や犯罪者ではないからである。常に武器を持つことが許されている冒険者が犯罪に走った場合、一般民衆の被害は大きなものになる。
以上のような理由で、冒険者は一般の民衆には難しい荒っぽい仕事を(山林での希少な薬草採集も含まれる。野生動物や魔獣の襲撃が予想されるため)引き受けてくれる何でも屋であり、高名な冒険者なら尊敬の対象にもなる、といった存在に位置づく。
会話より、説明が多い…。
ついつい設定に凝ってしまいます。




