<十四-二>
こちらはシィンサイド。
ほぼ同時に起きています。
=ここまで来たか。=
シィンは野営地で「影」と対峙していた。正確に言うなら「影」の幻影とだが。
「ああ、今度こそ決着をつける。」
シィンは答えた。
その声は、決して大きなものではなかったが、込められている感情と殺気は膨大だった。
並の者なら、その声に込められた感情に当てられただけで気死しているだろう。
そう、ほん刹那の間だが「影」さえ沈黙するほどに。
=そこまで成長したか、No.32。個体名「シィン」よ=
「待っているがいい、すぐのそちらに行く。」
シィンはそう言って会話を終わった。いや、終わろうとした。
これは戦う前の「いつもの儀式」のようなものである。常ならここで終わる。
が、今回は違った
=今回は別の者も招いてある。おまえのよく知っている者達だ。=
「何だと!」
愕然としてシィンは叫んだ。
=先に歓待しておくことにしよう。=
そういうと「影」の気配が消えた。
「…まさか…。」
つぶやいたシィンは、焦って、夜の森を進む身支度を始めた。
夜は「不死者」の領域。絶対的に不利だからこそ、明日の昼に強襲するつもりだった。
しかし。
(まさか、アル達なのか?)
この闘いに、彼らを巻き込むわけにはいかない。
決して生き残ることはできない闘いなのだ。
先ほどは、ああ言ったが、シィン自身勝てるとは思っていない。
相打ち覚悟で手傷を負わせられるかどうか…。それほどに彼我の差は大きい。
(無事でいてくれ。)
祈る思いで、最低限の身支度を調えたシィンは、夜の闇の中に身を投じた。
両話とも短めです。合わせて一話分?
これでストックが切れました。更新が遅れそうです。