<九>
主人公が追いつめられる。
ストックも追いつめられてきた…
「…で昨日の街で聞いた情報、どうするんだ?」
自分の横で何が起きていたのか気づいていないカイトは、アルフォードと今後に関わりそうな新情報について話し合っていた。
「野盗の集団だったか?」
アルフォードも自分達の目的に関わることなので、真剣な表情で答える。
「ああ、通常なら出会ったら殲滅、で特に方針を立てる必要もないんだが…。」
カイトが悩んでいるのは、昨日泊まったミズネの街の、冒険者の宿で仕入れた情報のためだった。
そこに野盗の討伐依頼が出ていたのだが、その裏情報が問題だった。
宿のマスター曰く「ダメ貴族が妾にしたかった女に逃げられて、逆ギレして殺そうとしている。」とのこと。
町中の噂も、むしろ野盗達に同情的で、中には密かに協力している者もいるらしい。
そんなことを聞いては、もちろん捕まえる気も関わる気もないが、相手から見て、森に入ってきた「冒険者の集団」がどう見えるか、というのは別問題である。
自分達を捕まえに来た、と考えるのは当然だろうし、「殺られる前に殺れ」的に襲いかかってくるかもしれない。
そんな騒ぎを起こしたら、本来の追跡対象であるシィンに気づかれ、逃げられてしまう恐れもある。
そこで野盗にどう対応するのか、ということをアルフォードと打ち合わせしていたのだ。
アルフォードにしても相手を殺したいわけでも、捕まえたいわけでもない。追跡に邪魔になりそうなので騒ぎも起こしたくない。
「出てきたら、一気に無力化するしかないだろう。」
「そうだな。出てこない方が良いんだが。」
二人は顔を見合わせて、そう結論づけた。いくら悩んでも、相手と連絡を取る手段も、時間もないのではどうしようもない。誠に不本意だが臨機応変に対応するしかない、というのが二人の結論だった。(行き当たりばったりとも言う。)
決まったことを伝えようと振り向くと、こちらを向いてにこにこしているシャリーと、それを見てあきれているケイトが眼に入った。
(いったい何をやってたんだ?)
と思いながらも、今後の方針について打ち合わせようと近づいていった。
見張りのフィリアを含め、全員を集めて、アルフォードとカイトは野盗についての方針を伝えた。パーティメンバーにも特に異論はなかったため、出てこない限り無視、出てきたら一気に無力化、ということで方針を決定した。(ケイトは話に出てきた貴族が自分にも因縁のある貴族-例のケイトにはり倒された-だったので若干複雑な顔をしていたが)
方針を確認した後、一行はミズネルンの奥に向かって出発した。もちろん相手の場所はビロウズが先ほどの精霊魔術で確認している。
「それにしても、こんな便利な魔法があるなら、もっと早く相手を捕まえられたんじゃないのか?」
カイトは疑問に思ってビロウズに問いかけた。他の仲間達も同じようにビロウズに眼で問いかける。しかし、その問いに答えたのはアルフォードだった。
「同じ魔法はシィンも使える。対探知の魔法も、な。」
次いでビロウズも補足する。
「彼は私たち二人の弟子みたいなものなんですよ。」
「つまり、手の内がバレているということなんだな。追跡するにはつらいな。」
自分自身が探査者であるファーサイトは、自分の経験からそう言った。
彼自身、過去に何度か捕縛依頼をこなしたことがあるが、相手に手の内を読まれていると、追跡の難易度が格段に跳ね上がる。他のメンバーも身に覚えがあるので納得していた。
「それで、どうしてわかるんでしょうか。相手は対探知の魔法を使ってるんでしょう?」
魔法のことなので、今度はシャリーが質問する。
「先ほどの魔法は、探す依頼をする精霊を変更することができます。普通なら風の精霊、隠れているものを探すのなら闇の精霊、といように使い分けるのですが。」
「普通じゃない精霊を使った?」
「正解です。通常は使わない光の精霊に頼みました。精度は落ちますが、相手の対探知にもかかりにくい。実際、効果がありました。」
「なるほど、いろいろ工夫できるんですね。」
ビロウズの探査結果によると、目標のシィンはどうやら4、50ヘロルほど先にいるらしい。相手も移動中なので時々探査魔術をかけながらの移動になる。
一行の中で一番足の遅いグレンに、シャリーが移動補助の魔法をかけると、全員で追跡にかかった。
森の中の移動なので思ったほど速度は上がらないが、それでも着実に、追跡者達は獲物との距離を詰めていた。
後2,3話でストックが無くなりそうです。
いつの間にかユニークが100超えました!
とりあえずの目標は達成。次は200目指すぞ!