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Watch ~監視者~  作者:
「悲しみの森」
10/98

<八>

前話が暗かったので、ちょっとほのぼの?

「…で、シャリーは何してるの?」

 ケイトはビロウズの側で、何やらやっているシャリーに問いかけた。

 ここはミズネルンの森の中。アルフォードたちと「風追い人」のパーティは依頼を受けてから3日後にこの森にたどり着いていた。

 今は、小休憩中である。

 ケイトがシャリーに声を掛けたのは、自分の話し相手がいなかったからだ。カイトは今後の方針についてアルフォードと話し込んでいるし、グレンとファーサイトは、グレンが作成した新作の連弯れんどについて何やら議論している。フィリアは見張り番なので邪魔するのも悪い。

 誰か話す相手はいないか、と思っていたらシャリーが面白そうなことをしているのを見つけた。要するに暇なのである。

「ああ、ケイト。今、ビロウズさんに精霊魔術を習っていたところです。」

それに対して、いつもと変わらぬ口調で優しく答えるシャリー。

 ケイトはこういうところは真似できないな、と素直に思う。シャリーは誰に対しても優しく丁寧な受け答えをする。

 「風の止まり木亭」の冒険者たちの中でもシャリーの人気は高い。

 ただ惜しむらくは、シャリーは、そんな自分の魅力には気づいていない。

「宿の人たちはみんな優しいですね。」などといって笑っているが、みんな(特に男連中)が自分にだけ優しい、とは思っていないのだ。もっとも、シャリー自身はカイトが好きなため、周りからの好意が見えていないのかも知れない。

(ホント、兄貴には勿体ないよね。)

と、カイトに対して失礼なことを一瞬考えたケイトだったが、すぐに興味がシャリー達の手元に移った。

「精霊魔術って、そんな道具使ったっけ?」

疑問に思ったことをそのまま問いかける。

 ケイトは精霊魔術にあまり詳しいわけではないが、精霊に呼びかけ、精霊に魔法を使ってもらう精霊魔術は、基本的に道具が要らないことは知っていた。

「これは探査魔法です。」

と、ビロウズがケイトに答えた。

「精霊にお願いして、自分が探しているものが、どこにあるのか教えてもらうんです。」

 ケイトはまだわからないようで、

「精霊が言葉で教えてくれるんじゃないの?」

と問い返すと、今度はシャリーが、

「精霊語は距離や方角、時間を示す言葉が曖昧なんですよ。」

と教えてくれた。

 精霊は普通にどこにでも存在し、時間や距離の感覚も余り無い。そのためこのような道具を使って距離や方角を教えてもらうのだという。

(言葉のわからない人に絵で伝えるようなものか。)

 自分なりの解釈で納得したケイトは見物することにした。

シャリーはビロウズに習いながら寄生木の枝を配置していく。中央に逆さにした枝を置いた後、精霊語を唱えた。


-我は願う-空に漂いし風の精霊-求めし者-何時-何処-『精霊探査陣エレメント・サーチ』-


 すると、中央の枝がボウッと輝いて少し動くと、すぐに倒れた。 「…えっと、これで何がわかったの?」

 ケイトの眼には、ただ枝が倒れたようにしか見えなかった。シャリーも少し曖昧な表情でビロウズを見る。魔法発動の手応えはあったが、結果についてはまだ十分に理解していないのだ。

「中心の枝が自分の位置を示します。」

 ビロウズは一つ一つ指さしながら説明していく。

「周囲の最初に置いた枝が、自分からみて北の方角を表します。そして中央の枝が移動 した距離がここからどれだけ離れているかを示します。」

「…ということは、西に向いてすぐ倒れたから…」

 ケイトが枝の倒れた方角を向きながら顔を上げると、半ば予想したものが見えた。

 そちらには少し離れた場所で、アルフォードと話しているカイトの姿があったのだ。

「カイトを探したんだ。」

 シャリーを見たケイトは半分あきれた顔でつぶやいた。シャリーは

「もちろん。探したい人なんて決まってるじゃないですか。」

と、微笑みながら返してくる。

(なにが「もちろん」なんだか、目の前にいる人をどうしてわざわざ探すのよ!)

思わず心の中で突っ込んだケイトだった。


※連弯は連発できるボウガンである。通常ボウガンは一度使うと次矢をつがえるまでに時間がかかる、という欠点があるが、連弯はそれがない。ただし、機構が複雑になるため耐久性と威力が落ちる。ファーサイトがグレンに作ってもらったのは装填できる矢が少ない代わりに携帯性に優れた特別製である。


カイト達のパーティの雰囲気を出してみた回でした。

前半なので、ほのぼの色が強いですが後半は暗めになる予定。


戦闘をうまく描けるか不安がいっぱい。

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