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僕の人生○○ました。  作者: 亜希成
第3話 僕の人生詰みました。
6/7

その1

仕事をクビになってから、そろそろ一ヶ月が過ぎようとしている。

はずかしながら、今だに無職である…。

最初は、最低限の生活ができるくらいの給料さえ求めなければ再就職も難しくは無いだろうと考えてはいたけど、その考えが非常に甘かった…。

この不況の中の大不況と騒がれる昨今、資格無し、技術無し、取り柄無しの無いもの尽くしの僕を雇ってくれるところなんか無かったのですよ。

そんな、冷えきった社会と、非常なる銀行口座の残高減少を噛み締めながら、先の見えない状況いわゆる手詰まりなのである。

唯一救いだったのは、お隣の堀川さんつまり日向の母親が駅の近くのお弁当屋で働いているらしく、あれから時々、売れ残ったお弁当を差し入れてくれるようになった。

最初は、あの二人に関わる事に抵抗があったので断っていたのだが、食費にはかえられず、ありがたく頂く事にした。

そのおかげもあってなんとか、ここまでは生きて来れた。

だけど、銀行口座の残高から計算すると今月中に仕事がみつからないと家賃も払えなくなり、本当に路頭に迷う事になる…。

本当にピンチだ。

なんて事を、考えても僕には就職活動するしかない。

それしかできない。

先の事は怖くて考えられない…。 

いや、攻撃は最大の防御。

行動するしか無い…。

とりあえず、今日は面接の約束がある日なので、軽めの昼食を済ませ今では、着る事になじんだスーツ姿で家を出る…と、

同じタイミングで、お隣から堀川親子も出て来た。

まずい… 非常にまずい。

就職活動しているのをバレたくない、というか、クビになったのを知られたくない。

格好つけているわけじゃないですよ。

このタイミングで就活中ってさすがに自分たちのせいかも?って疑っちゃうでしょ?

っていうか実際はそうなんだけど…。

でも、仕事を失ったのは、僕自身の性格せいみたいなのも原因ってこともあるし、全部が全部この親子のせいってこともないんですよね…。

実際、堀川さんのお弁当に助けられてる事実もありますし…。

こんな僕でもさすがに感謝してるんだよね… こんな僕でも。


「こんにちわ」

言い訳を考えすぎて固まってる僕に堀川さんの挨拶で現実にひきもどされてしまった。

とりあえずなにか話さなければ。

「こ…こんにちわ 今日は日向ちゃんとおでかけですか?」

「さいきん日向と出かけられなかったので、たまには買い物にでもと思いまして。」

本当に仲の良い親子ですね。ほのぼのしますよ。

「浅野さんはこれから お仕事なんですか?」

やっぱり、この質問しますよね? 

「いえ、知人の結婚式なんですよ。それで、こんな着慣れない物、着ちゃいまして あははは…」

ナイス僕! このごまかし方は最高系でしょ!

「そうなんですか。いつもと違った感じでしたので見違えちゃいましたよ。」

なにげに、いい感じに場が和みましたね。

このまま、さりげなくこの場を去れれば…。っと思った所に日向からのこの一言です。

「おにいちゃん、さいきん いつもそのかっこしてるね。ひなた、かっこよくてすきだよ。」

僕は、かたまりましたね。引きつった笑顔ごと…。

日向ちゃん…ありがとう… うれしんだけど、そんなに毎日結婚式があるほど、友達もいませんよ…

お願いだから、この空気なんとかできるかな…。

そんな、無理な要求に答えてくれる訳も無く日向はいつものあったかい笑顔をしてるなか、乾いた笑顔で、僕は、その場を離れた。


面接は、今までの中で一番最悪だった…。

出かけ際の、堀川親子との、出来事に僕の精神バランスは脆くも崩れ去り、立て直す事ができなかった。

答える質問には支離滅裂。

志望動機にいたっては、僕の出生から語り始めてしまい、話を着地する前に中断させられてしまった。

本当に、痛い社会人のレッテルを張られてしまったような気がした。

また駄目なんだろうな…。

と思いつつ自分の部屋で、帰り際に買った、求人情報誌をパラパラめくり次の仕事を探してはいるが、

面接の反省より、別の事が気になり、集中なんてできなかった。

別の事…。

そう、昼間の堀川親子との事だった。

なんで僕は、嘘をついてごまかしたのか?

なぜ僕は、彼女達に心配をかけさせてくないんだろうか?

僕は、今まで、学校でも仕事場でも極力、人と付き合う事をしてこなかった。

それは、不要なトラブルの原因にもなるし、いらない気の使いもしたくはない。

はっきりいって面倒しか無い。

だから、親友と呼べる人間もいないし、友人と呼べる人間も一人ぐらいしかいない。

もちろん、恋人なんていないし、その前に異性の電話番号すら携帯電話にはいっていなくらいだ。

そんな僕が、ただの隣人に、いや僕の今の状況の根源に対して、そんな気を使うなんて、どうかしている。

そりゃ… 今更、彼女達を恨んではもういない…。

堀川さんが持って来てくれた食事は、この状況の中正直助けられたし感謝もしている。

子供だとしても、日向に慕われるのも悪い気はしないし、堀川さんみたいな人と今まで関わった事もなかったから少し浮かれていた自分もいた。

でも… わかってる。

いや今、気づいたよ。

僕は少し甘えすぎていた…。

今まで通りで良いじゃないか。

今まで通りに、人と関わらず、静かに暮らして行く… それが僕の望んだ生活じゃないか。

このままじゃ僕は、今までの生活の…、いや生き方のリズムを崩して今日みたいな失敗をくりかえしてしまう。

「これ以上、彼女達に関わるのは辞めよう。」

僕は、今決めた決心が揺らがないために、わざと言葉を口にした。


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