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始まりの唄2

その瞬間僕は意識を失った。

  夢を見ているような感覚で辺りは暗くなっていき先程まで酷かった、頭痛や目眩は嘘のようにさっぱり消えていた。

    パレットに白の絵具と黒の絵具を一滴二滴と垂らしたよう視界は広がり、瞬間画家が黒鉛筆一本で丁寧に模写をしたよう世界は膨張した。

ふと辺りを見渡すと建物なかに居るようだった。

    此処は何処だろうと思考する。

    視界は白と黒でできた病院である。しかし中央線大学であるはずが無かった。設備は古くカビや埃っぽい空気で、ゴミが散らばりシーツが一部分黒ずんでいる。血液であることは間違い無かった。なぜならば此処は手術室だったからだ。故にシーツから腐った魚みたいな、生臭い匂いが鼻に突き刺すたびに、胃の内容物を吐き出したくなる強烈な吐気を催した。

    血液がついてるメスやハサミやピンセットや開創器が、地面に雑に捨てられており、どれも時代を感じるほど古ぼけていた。

    白黒世界に来てしまったことを実感して、これから起こる惨劇が簡単に予想出来てしまった。  

    辺りは薄暗く足の置き場は大体メスやその他手術器具で満たされている。僕はいち早くこの場から離れたかった為、ゴミや手術器具を蹴飛ばして手術室から抜け出した。

        

廊下は古い木材で作られており歩くたびに軋む音が聴こえその都度、僕が床が壊れて落ちるのではないかと思うほど老朽化している。

    窓から外が見える。雨が降っている、全部が嫌な物に思える。ブランコは一人でに、後ろから前、後ろから前へと誰か乗ってるよう動いていた。

    遠くから人が発したとは感じられない奇声が木霊して何回も耳をつんざいた。

声室が異常に高く、喉に力を入れて叫んでいる声である。時折顎が外れるかと思えるぐらい大笑の声出して、独り言ばかり喋っている。

女であろう遠くからの声は段々と近づいているのが理解できる。僕は辺りを慎重に一つ一つ見渡し隠れる所を探した。

僕は急いで近くにある女子トイレにある。(用具入れ)に見つからないことを祈りながら隠れた。今は緊急事態でありやましい思考など、一切せずトイレで身を寄せている。

  

「もういいかい……  まあだだよもういいかいまだだはははははははひひひ 、ひひはもういいかい」


声と共に滑車の回る音が聴こえる。その音は乳母車を押している音にも聴こえ、僕の緊張のスピードは増していった。

    蛇口から落ちる水滴は時間を刻むように幾つもの音を響かせていた。

  心臓の音が今にも破裂しそうなぐらいに高鳴っていて怖さのあまり息が荒くなり僕は両手で口を塞ぎ耐えている。 

滑車の回る音が聴こえる。さらに近づいているのが声でわかる。ああ、幽霊にも色んな奴がいるんだなと感じる。


「あのねているなの!  はははははひはははひひ  に 失敗したからなの  ふふふふだから! みんなな」


女の化け物が女子トイレへ入ってきた。僕は何の思考も行動もできずにただ怖い早くこの場から立ち去ってくれと、願うばかりだった。

  体は何かに押さえつけられたように緊張して針金のように固まっている。

  用具入れの小さい穴から鏡の反射を食い入るように見つめた。化け物は看護婦であるようだった。肌は異様に白く常に満面の笑みである。瞳から黒い血液が流れ看護服は血液で黒に染まっていた。なにか小さい言葉で独り言を言っているが僕の耳には聞こえなかった。

  看護婦は常に台車を手で押していた。台車には手術器具である新品のメスが幾つも並んでおり、なかには血液のついたメスもちらほらと見えた。僕はもうそのこと迄は頭がまわらなかった。

荒波のような不安が心を騒がせた。

  看護婦が入口から最初のトイレのドアを開けた。


「一つ目」

「二つ目」

 

  三番目を開けていく。四番目も開けていく。そして五番目も開けていった。


「ふふふふふ」


そして用具入れの前に看護婦は台車の音と共に近づいてきた。台車の嫌な音が緊張のピークを構築していき嫌な汗ばかりが頬をつたった。


「六つ目」


看護婦がそう言うと勢いよく用具入れの扉が開いた。僕は瞬間的に用具入れに収納されていた汚いシーツを自分に被りその場で発狂しそうになるのをこらえてじっと息を潜めた。

   何も見えない恐怖が僕を襲っている。

嫌な人生だなとか数奇だなとか自虐ばかりを思考して怖さを必死に吹き飛ばしている。

  水滴の垂れる音だけが時間を表している。


「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

  

看護婦は用具入れの扉をしめた。

僕はそっと音立てずに、立ち上がり小さな穴から再度見つめた。

    看護婦は尚も満面の笑みを絶やさず独り言を呟いている。時折トイレの鏡で自分の髪をとかす仕草を繰り返し、その醜い容姿を綺麗と喜び音程が滅茶苦茶な鼻歌を披露した。昔、両親と聴いたことがあるベートーヴェンの(交響曲第九番喜びの歌)であった。


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