もへ
壁の向こうから聞こえる、意味のわからない不気味な笑い声。
昨日から家にやってきた「新しいお父さん」と、その顔色ばかりを窺うお母さん。
心休まるはずの自分の部屋で眠ることすら許されない、狂気と抑圧に満ちた夜の物語です。
もへ
もへもへ
もへへへ
ももへ
と、あいつが嗤っている。
もへへ
何で嗤っているのかはいつもながらわからない。
もへへへへへへ
そろそろ煩いと感じ始めた。
もへ
だが、その嗤い声はとまらないようだ。
こんなんじゃ眠れない。
これはいっそ勇気を出して苦情を言ってくるか?
思っては見るものの、わたしにそんなことをする勇気も根性もないのはわたしが一番よく知っている。
もへもへもへもへ
御隣の住人のフリをして、不動産管理会社の人に電話をして苦情を間接的に言ってもらうか?が、それでも誰が告げ口したかなどわかってしまうものなのどろう。朝の挨拶をしたときなどの空気感とかで。
わたしはもへもへ嗤うあのひとが怖い。
『お父さんの言う通りよ』
『お父さんに謝りなさい』
『お父さんがいなかったら生きていけないのよ』
もへもへ
『あのね、お父さんはパンが嫌いなの。我慢なさい』
『早くお風呂に入りなさい!』
もへもへ嗤うのは昨日からウチにやって来た新しいお父さん━━
もへもへ嗤われてたら寝られないのに、学校行かないときっと叱られるだろう。それは毎度のパターン。
わたしはそんなお母さんが大嫌いだった。
新しいお父さん」の不気味な笑い声と、それに怯えながら過ごす居場所のない夜を描いた短編です。
今回のお話は、家庭内の逃げ場のない空気感や不穏な雰囲気をテーマに執筆しました。最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!




