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警戒されています

「あの、すみません」

  

 唐突に目の前に現れた月影に、先頭を歩いていた少女、深紫しんしは目を見開いた。


「何者?!」


 とっさに彼女の女官の数人が月影と少女の間に体を滑らせ、月影に対して敵意を露わにする。そして、現れたのが月影一人だと認識すると、途端に蔑むような目つきに変わった。


「あなたでしたか。部屋から出てくるなんて珍しい。こんなところで何をしているのですか」

 

 女官の一人が、月影に声をかけた。明らかに険のある言い方だ。月影は、それには気づかないふりをして口を開いた。


「えーと。お風呂に入りたかったんですけど、場所がわからなくて迷ってしまって。お風呂の場所を教えていただけませんか?」


 すると、先ほどの女官は眉を顰め、無遠慮に月影の全身を眺める。そして、ぷっとふきだした。連鎖するように周囲の女官たちも笑い出す。


「あなたが、お風呂、ですって」

「ここに来てから一度も湯あみなどしたことのないくせに」

「今更きれいにしてどうするの」


 月影は驚き、そして納得した。なぜ緑青が部屋から出るなといったのか。なぜ月影があの小さな部屋にこもりきりだったか。


 原因はこの露骨ないじめだ。

 内向的な性格で幼い月影では、年上の女官たちにかなうはずもない。


 月影は素知らぬ顔をして言い返した。


「あら、いけないの?」


 月影の問いかけに、女官たちは顔を見合わせた。


「いけないってことは……、ないけれども」

「だったらいいってことでしょ。今からきれいにしたって、私にはあなたたちの倍は長い人生が待っているの。別にあなたたちの手を煩わせるつもりはないから、ただ、お風呂場の場所を教えてくれるだけでいいの」

 

 月影に言い返されたことで目を白黒させている女官の後ろで、くすり、と小さな笑い声が聞こえた。


「わかった。あたしが案内してあげる」

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