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義兄姉がいることが判明しました

「いや。びっくりしただけで、怖くはない」

「へえ。それは、それは」


 即答する月影を、秘色ひそくが面白そうに見つめる。混乱が恐怖に勝っているというのが本当のところだったが。


 秘色は、月影から目をそらすと、寝台の端に座りなおした。


「ねえ、私はどうして毒を飲んだの?」


 月影は最も気になっていたことを聞いた。3人は顔を見合わせて黙り込む。


「ねえ、教えて。何があったか、知ってるんでしょう?」


 この中で一番答えてくれそうな秘色ひそくに視線を投げかける。緑青ろくしょうは、都合の悪いことははっきり答えてくれなさそうだし、浅緋は(うすきひ)これまで一言も口をきいていないのだ。秘色は小さくため息をつくと、口を開いた。


「自殺を図ったのよ、あんたは。毒に詳しくなかったから、致死量がわからなかったのね。飲んだ量が少なすぎたことと、あんたの兄さんがすぐに気づいて、解毒剤を飲ませたから命は助かったけど」

「私に兄がいるの?」

「姉もいるわよ。義理のだけどね。近衛隊長の息子と娘。でも、驚いたわよ。あんた、あの兄妹とうまくいっていたとは、とても思えなかったから、まさかあの露草つゆくさがあんたを助けるなんてね。あたしたちはあんたに以外には触れないし見えないから、何もできなくて。まあ、正直ほっとしたというか」

「そうなんだ。でも、どうして毒なんか飲んだりしたんだろう」

「それは…」


 秘色が顔が曇らせると同時に、ドアをノックする音が聞こえた。月影が短く返事をすると、医生が入ってきた。


「月影、気分はどうだね?」

「医生。ありがとうございます。だいぶ良くなりました」


 月影の返事に、医生は片眉を上げる。


「……そうかい。それは良かった。とりあえず熱を測ろう」


 医生はそう言うと、自身の手を月影の額に当てる。月影はおとなしく、されるがままにしていた。ちらり、と秘色たちの方を見れば、素知らぬ顔で寝台の脇に立っている。月影以外には見えないのだと彼らが言っていたことは、どうやら本当のようだ。医生のそぶりは、彼らが見えているとはとても思えない。


 医生は月影に二三質問をすると、大きく頷いた。


「快方に向かっているね。もう少し休みなさい。あとでおかゆを持ってこさせるから、ちゃんと食べるんだよ」

「はい。医生。それから、あの」

「なんだい?」


「実は……」月影は口を開きながら、秘色を見た。秘色は視線を受け止めると、ゆるゆると首を振る。何も言うなということだろう。

「いえ。なんでもありません。まだ少し体がだるいので、休みます」


「月影」医生は、月影の目を見て、少し迷うように唇を湿らせてから、ゆっくり口を開いた。

「君は、本当に月影だね?」


 医生の問いかけに、ドキッとしながら、月影は平静を装って聞き返す。


「どうしてですか?」

「いや、君がこんなにしっかりした受け答えするのははじめてだったから。いつもうつむいて、聞き取れないくらいの小声で話していたし。……いや、馬鹿なことを聞いたな。すまないね。私はもう出ていくから、ゆっくりお休み」


 医生が部屋から出ていくと、ほうとため息をついて、寝台に寝転がる。


「まあ、不思議に思うわよね。普通。あんた、記憶をなくしたって言ってたけれど、性格まで変わっちゃってるんだもの」


 秘色がボソッとつぶやく。


「え?」

「まだ目覚めてから一日しかたってないけど、はっきり分かるぐらい変わった。誰かに体を乗っ取られてるんじゃないかって思うほど。雰囲気も言葉遣いもね。まあ、あたしたちには、あんただって、感覚で分かるけどさ。普通の人は、これだけ変わった様子を見れば、びっくりするわよね」


(いや、たぶん乗っ取ってしまったのですが……)


 月影は内心突っ込むが、口には出さなかった。


「どうして、あなたたちにはわかるの?」

「そりゃあ、あんたの式鬼だもの。違うモノがその器に入ったら、すぐにわかる」

「そうなんだ。でも、もしも、だよ。その違うモノが入ってたらどうするの?」

「え?契約違反だもの。あんたを喰らうわ」

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