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29話 ケリーとイズナ

 講義は各学年別でアタシ達1年生は元の教室からかなり離れた別館第一講義室だ。

 職員室からも離れていてファンタジアの連中もそれなりに先生達を警戒しているみたい。


 

 講義室に入ると白を基調とした空間で横に長い机と一人用の椅子がずらりと並び前にはスクリーンが張られていた。

 そして二人。黒いハット帽とスーツ姿でサングラスをつけた如何にもな男と女が直立して入室する私たちに顔を向けていた。

 


「あれがファンタジアの党員なんだな」


 

 隣を歩くお兄ちゃんが息を呑んだ。敵を目の前にして緊張しているようだ。九条家との戦いではそんな緊張なんてしなかったはずのお兄ちゃんだけど、今回は家族以外で初めて対する敵だ。それも人間の……。

 気を引き締めてかからないと何が起きるかわからない。


 

「気を付けてお兄ちゃん。お兄ちゃんは世界で唯一の男ウィザードなんだから注目されてるはずよ? そんなジロジロ見たら何か勘付かれちゃうかも」


「それもそうだな。ありがとう鈴」


 

 とは言えつい目を向けてしまうのは私も同じね。

 それほどまでに異質。異様な雰囲気が二人から漂っていた。頑張って目を合わせないように教室内を歩いて席に向かう。なんと丁寧に机には番号が振られていてそれが学籍番号だと理解することができた。

 


 前のスクリーンを見るとどこに自分の席があるか番号で示されている。

 お兄ちゃんの番号を見ると私とかなり離れた位置に設定されているみたい。

 アカリとアリスの二人の動きを見ると二人も教室の端と端に分かれるように向かっている。

 私はというと真ん中で、お兄ちゃんは一番後ろ。


 

『せこい真似するね。奴ら知り合い同士隣にならないように振り分けてるみたいだ』


『どうしてそんなことを……』


『奴らが怪しいってのは周知の事実だよね? だからこそ知り合い同士で近くに固まられると冗談話で面白がられておしまいになっちゃうでしょ? でも一人だけだと……』


『真面目に聞いてしまう人もいるってことね』


『そういうこと』


 

 大樹の説明で奴らが相当悪質な連中ということは分かった。

 とりあえず指定された席に向かう為、お兄ちゃんとは別れて席につく。隣に座ったのは本当に顔も名前も知らない生徒。

 この為に学年別にしたのかも……。同じクラスだけだと顔見知り程度になっちゃうしね。

 


「皆さん席に着いたみたいですね」


 

 前の男がネットリした声で周囲を見渡しながら言った。

 周りを見ると生徒達は全員席について静かに頷いている。

 どうやら少なからずこの二人が招かれざる客人であることは知っているようだ。

 さすが戦闘学生と言ったところね。


 

『鈴芽ちゃんが疎すぎるだけだと思うよ?』


『うっさい。ほらさっさと交代しなさいよね』


『へいへい』



 大樹の頼りない返事と共に肉体を大樹と入れ替わる。

 俺は首を軽く動かし体の感触を確かめた。

 暫くぶりの鈴芽ちゃんの体だ。

 下手な動きをして怪しまれたら元も子もない。

 ちょっと動かした感じ全く問題なさそうだね。

 


「まず自己紹介からしましょうか」

 


 目を前に向けるとスクリーンの画面が切り替わり二人の名前と役職が表示された。

 なんとこの日のためにパワーポイントを作成してきたらしく、それなりに見やすく作られているじゃないか。

 前世の俺でもここまで見やすいの作れた試しはないぞ?


 

『はいはい。分かったから集中!』

 


 鈴芽ちゃんに注意されて二人の仕事能力の嫉妬をかき消して耳を傾ける。


 

「まず私の名前はケリー・伊藤といいます。ファンタジア党員の広報を担当しています。気やすくケリーとお呼びくださいね」

 


 男はハット帽とサングラスを外しブルーの瞳を向けてウインクしてみせた。

 金髪碧眼って奴だ。悔しいけど……めっちゃイケメンだ。

 周りの女生徒達もケリーの素顔におぉと感心の声を漏らしたり、頬を赤らめている人もチラホラ見える。

 ダメでしょ!? ほら警戒して? あんな何やってるか分かんない怪しい政党のメンバーなんだよ? もっと警戒して!

 


 そんな俺の願いも虚しく隣の生徒は「素敵……」「これが大人の魅力よね……」とうっとりしている。

 嫉妬? してないよ? イケメンってだけでこうももてはやされるのが気に食わないだけだよ! ってこれが嫉妬って奴だよね……。

 


「続いて私はケリーと同じく広報の楓原イズナだ。今は党員としてファンタジアに所属してるが、以前は北海道支部のウィザードをしていた。いわば君たちの先輩だな。今日は戦う以外にも君たちの力を有効活用できる場を知ってもらう為にやって来た」

 


 イズナも同様にサングラスと帽子を外す。

 八重さんとまではいかないが、それなりにクールビューティーと言った人だ。

 少し青がかった黒髪に泣きぼくろが見えてセクシーだ。

 シュッとしたスタイルも良い……。


 

『見る目がいやらしいわよ? 集中してる?』


『してるしてる〜』


 

 と言ってみたものの絵に描いたクール系美人は何度見ても見惚れてしまうものだ。……絵に描いた世界なんだけど。

 


「今日はケリーに講義を進めてもらうが、私も何度か話に混じるつもりなのでよろしく頼む。ではケリー。始めてくれ」


「オーケー、イズナっち。って事で? これより二時間程度の講義に入ります。途中休憩を挟みつつ私たちの仕事内容、理念、これからの日本の向かう未来に向けて話していくので皆さんよろしくお願いしますね」


「は〜い」


 

 なんとあれほど警戒していた生徒達の大半がケリーの話にそんな軽い返事をしてしまっていた。

 これがイケメンパワーなのか? そうなのか?

 俺は前世でもう少し身だしなみに気を遣っていればと若干の後悔を抱えつつも講義に集中することにした。

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