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8話 真のツンデレは打算なく普く全てにデレるのだ。

校庭で揉みくちゃにされた俺が解放されたのは10分後だった。次の授業の予鈴が鳴り響いたことで、皆急いで教室に戻って行ったのだ。



大好きなお兄ちゃんこと雪也も例外ではなく教室へ戻ったのだが……去る前に「帰ったら話聞かせてもらうからな!」と怒った様子で念を押されてしまった。



体調が悪いと言っておきながら模擬戦をしていたのだ。心配させた上に怒らせてしまった。



これには俺も反省だ……お兄ちゃんの鈴芽に対する好感度はカクンと下がったことだろう。次は気を付けないと。



今俺たちは約束通り、コロッケが売られている精肉店に足を運んでいる最中だ。



「鈴芽?どうかした?」



そんな俺にアリステラが心配して声を掛けてくれた。



雪也お兄ちゃんが絡んでいなかったら、アリステラはすっごく良い人なんだけどなぁ……



「もしかして、お兄ちゃんに怒られるのが怖いの?」


「あ〜。うん……今日熱あるって学校休んじゃったのに、外で歩いてるとこ見られちゃったから……」



近からず遠からず……怒られるというよりは好感度下落に落ち込んでいたんだけどな。



そう答えるとアリステラは「大丈夫!」と俺を見た。



「私も一緒に謝ってあげる!鈴芽を強引に連れ回したの私なんだもの!そうすればあまり強く怒られなくて済むはずよ!」



有難い提案だが、実際はどうだ?……一緒に謝ってくれたら確かに好感度下落は多少の誤差で済む。



だが、まだメインシナリオ前に雪也お兄ちゃんと出会うのはリスク的にどうだ?



考えてみろ?俺の今までのラブコメ知識にギャルゲー、エロゲー知識をフルにインプットした脳内CPUよ!



事前に出会う→知り合う→俺を通じて仲良くなる→翌朝転校生紹介→「あー!雪也!?」→周りの生徒達「なになに?知り合い?」→先生「知り合いか?なら九条、お前学校を案内してやれ」



こうなるに決まってる!!

そうなると、ここは1人で怒られて失った好感度を自分の立ち回りで挽回するのがベスト!!



これしかないッ!!



「アリステラお姉ちゃんの提案は嬉しいけど、私1人で謝るわ!だってお姉ちゃんに出会う前から外に出歩いてたし、それに!こういうのは私が1人で謝らなきゃ駄目だと思うから」



脳内CPUが弾き出した答えを鈴芽なりに変換された言葉でアリステラに話すと、彼女は「偉いッ!!」と圧強めに俺に言った。



あまりの圧に一瞬強い突風が吹いたようだった。



「鈴芽はまだ小さいのに責任感があって偉いわね〜」



ニコニコしながら俺の頭を撫で回してきた。

可愛らしい髪がグシャグシャになる!チャームポイントのアホ毛が乱れる〜!


「や、やめてよ。お姉ちゃん!」



俺を愛でるアリステラの魔の手からなんとか抜け出し髪を整える。



よしよし。アホ毛ある。これが無いと鈴芽力4割減だから大事にしないと。



「あら……逃げられちゃった」



残念そうなアリステラ。

何が「あら……」だ。誰でもいきなりガシガシ頭を撫でられたら逃げるに決まってんだろ!



ま、まあ?悪い気はしなかったけどね?



そうこうしていると目的の精肉店が見えてきた。

ようやくこれでアリステラから解放される……



そう思いアリステラの手を引き。



「お姉ちゃん!あそこよ?早く行こ!」


「え!着いたの!?」



走り精肉店まで引き連れた。

意気揚々と店の前まで来た俺たちは、コロッケの置かれているはずの棚を見るが。



「無いわね……」



アリステラががっかりした様子で呟いた。



そう、無いのだ!ここにあるはずの……1つ50円のゴロゴロコロッケが!



「おばちゃん!コロッケ欲しいんだけど……無いの?」



商品棚兼カウンターに手を置き、ピョンピョン飛び跳ねながら必死に店主のおばちゃんにアピールしながら聞いてみた。――が。



「あら鈴ちゃん。またコロッケが食べたくなったのかい?ごめんね〜。さっき来たお客さんが全部買って行ったのを最後に、もう材料がなくなっちゃったのよ。また明日買いにおいで?」


「え〜!そんなぁ〜……」



俺はガックリと地に手をついた……

その残念がりようは、一番楽しみにしていたアリステラ以上に。



そんな俺の様子を見たアリステラは――



「鈴芽……貴方、私の為にそこまで悲しんでくれるのね?」



良い感じに解釈された。本当はアリステラから解放されて、やり残した事をやりたかっただけなんだが……



「無いものは仕方ないわね……また明日買いに来るわ……案内してくれてありがとう、鈴芽」



彼女は取り繕った笑顔で俺に言った。

やった!解放だ!――と思うと同時に、その顔を見るとキュッと胸が締め付けられる。

 


この感覚……まただ。心が二つある感覚だ。



多分、鈴芽自身の心が「悲しい思いのアリステラお姉ちゃんを帰したくない」と言ってるんだ。



そうだった。鈴芽はいつもツンツンしてるのに他人の事を大事にする一面がある。デレの部分だ。



可愛らしいよな。そんな鈴芽に俺は何度も癒されたんだっけか……


「お姉ちゃん!」


「な、なに?どうしたの?」



アリステラが俺の前から去ろうと背を向けたのを呼び止めた。



推しキャラが「このままじゃダメ!」と言ってるんだ!なら俺もそれに応えなきゃな!推しキャラファースト!セカンド俺!だ。



「コロッケ!私が作るから……ウチに来ない?」



これが俺が惚れたキャラ……メインヒロインにも優しく手を差し伸べてしまう、本当に優しい子。それが九条鈴芽だ。

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