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15話 結由織先生を探して

 一限目で茜に負けてから完全に意識を失って――もう放課後! というわけもなく、最も簡単に目覚めてしまった。

 今は五限目、数学の授業を受けながら体を鈴芽ちゃんに返している。

 なんで俺がこうも喋っているかっていうと――



 『いい加減教えなさいよ! 結由織先生の中に茜さんがいるって本当なの?』



 こう鈴芽ちゃんからの質問攻めにあっているからだ。

 目覚めてからずっとこの調子で食い気味に聞かれ続けると、さすがに疲れるよ。



 『本当だって。俺が妹の癖を見抜けないわけないでしょ? あの攻撃の癖に言動、なにより俺の存在に気付いて名前を呼んだんだから間違いないよ』


 『へぇ〜! へぇぇ! 茜さんが先生の中に……。これは話を聞いてみたいかも!』



 鈴芽ちゃん、なんでか茜に対して妙な憧れがあるんだよね〜。

 山賊だよ? 生まれが違ったら、膨らんだ腹にたくましい無精髭をこしらえて酒樽を担ぎ上げ、酒を飲むようなオヤジになってること間違いなしの野蛮人だよ?

 どこに憧れる要素があることやら……。



 だけど、話を聞いてみたいという案には賛成だ。

 前世で一体何があったのか、父さんに義母さん、二人がどうなったかも知りたいしね。



 『放課後、話を聞きに行こうか?』


 『ほんと!? やった! 絶対忘れるんじゃないわよ?』



 はいはい。忘れませんよ〜。

 忘れるよりも前に、向こうから接触してきそうだしね。


――――――――――――――――――――――


 あれよあれよと本日の授業がすべて終わり放課後。

 優しい人格の結由織先生のホームルームを終えて鞄を整理していると、お兄ちゃんとアリステラから声を掛けられた。



「ほら帰るぞ鈴。っていっても基地にだけど」


「あー。ちょっとごめん、私先生に話したいことがあって……」


「結由織先生に?」


「うん。ちょっと授業での質問! だからアリスとお兄ちゃんは先に基地に戻ってて? って、そういえばアカリは?」



 教室を見渡せど彼女の姿は見えない。

 一人で先に基地に戻ったのかな?

 いや、それはないか。

 あの性格だ。一人で寂しく帰るはずがない。



「アカリなら鈴と同じように先生に用があるって行っちゃったわよ?」


「そうなの!?」



 だとするとタイミングが悪いかもしれないわね。

 アカリの話が終わるまで待つか?

 それとも今日は諦めて基地に戻るか……。

 どっちにしよう……。



 『ごめんけど俺は話がしたいかな』



 まあ大樹はそう言うわよね。

 せっかく再会した家族なんだもの。

 ここは宿主である私も一肌脱ぎましょうかね。

 お兄ちゃんとアリスを二人っきりで返すのは不安だけど……今のアリスならお兄ちゃんとフラグが立つこともないでしょ。



「なら私、後でアカリと基地に戻るわ。先に帰ってていいわよ?」


「おっけー。ならまた後でな〜」


「また基地でね? す〜ず」



 ばいば〜い、と手を振って二人を見送る。

 教室を出たのを確認し、私はとりあえず職員室へ向かうことにした。

 先生がどこにいるか分かんない時は職員室に行けばわかる。常識よね。


――――――――――――――――――――――



 職員室に来てみたはいいけど、結由織先生はいなかった。

 代わりにいたのは副担任であり、部隊内の仲間でもある柳先生だ。

 基地でも仕事があるっていうのに、先生としての仕事もこなしてるなんてとんだ働きマンだよね。

 疲れないのかな?



「おや、鈴芽さん。どうしましたか?」


「先生。いや……結由織先生に用があって来たんですけど」


「結由織先生ですか? 確か品川さんと一緒に第三演習場に向かうと言っていましたよ?」



 第三演習場っていえば、あの室内にあるやつだよね。

 そこに二人っきりってことは、特訓でもしてるのかな?

 関西で二人は先生と生徒の関係だったらしいし。



 『だろうね。となると時間も掛かりそうだ……』



 諦めるか? そう頭をよぎったけど、アカリの戦闘もちゃんと見れていなかったし、ちょうどいいかも。

 とりあえず演習場に行こうかな。



「ありがとうございます、柳先生!」



 一礼して職員室から出ようとすると――



「あっ、鈴芽さん」


「ん?」



 柳先生に呼び止められ、振り返る。



「今日基地に戻ったら、今朝の模擬戦の振り返りと戦闘講座を開きますので、その旨を品川さんにもお伝えしておいてください」


「振り返りと戦闘講座……ですか?」



 聞き馴染みのない講座に首を傾げていると、柳先生は眼鏡をクイッと上げながら答えた。



「ええ。今朝の戦いは見ていられないほど酷いものでしたからね。雪也さんにアリステラさんは部隊員でないにせよ、私たちウィザードは即席で部隊を編成する場合もあります。なので、ここで詳しい知識を学んでおいた方がいいと隊長から通達がありまして」


「なるほど……」



 いつか言ってたっけね、そんなこと。

 まあ強くなれるなら聞いておいて損はないでしょ。

 でもここの授業の復習もしなきゃなのに、戦闘講座って……。

 私、特別強化実習生になってからずっと勉強に追われてない?



 『だね〜。さすがに戦闘講座は俺も関係ある事だし、そこは出るよ。だからその間は休んでていいよ?』


 『そうしたいのは山々なんだけど、いざ戦う時に話が頭に入ってないと困るから私も一応聞いとくわ。気を遣ってくれてありがとね』


 『す、鈴芽ちゃんが……デレた!』



 何を言い出すかと思えば……。

 もう突っ込む元気もないわ。

 とりあえず今は結由織先生とアカリのいる演習場に行かなきゃ。



「分かりました先生。ではまた後で。お仕事頑張ってください」


「ありがとうございます。ではさようなら」



 そうして私は職員室を出た。

 目指すは第三演習場。

 たしかこの職員室の近くだったはず……。

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