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7話 虐めエンド回避

 ある程度生徒達を間引き、俺はアリステラの後ろに戻った。これ以上生徒の数を減らすとバレてしまうし、アリステラにピンチを与えることが出来ない……



「ドラグナート!」


「甘いわ! 風香!!」



 アリステラと女子生徒の戦機がぶつかり合い、炎と風の余波が辺りに拡散する。



 流石に「女子生徒」って呼ぶのも可哀想だな……メインヒロインのアリステラと渡り合ってんだ。名前は分からんが、見た目で“プリプリショート”って呼ぼう。



 怒ってるショートヘアーの生徒だからプリプリショート……安直過ぎるか?あとで仲良くなったら名前を聞こう。



「そこぉ!!」



 アリステラが足払いでプリプリショートの体勢を崩した!



「しまった!」

 


 あのままだとプリプリショートは間違いなく負けるな。だけどまだ負けてもらうには早い。アリステラの戦機稼働時間は残り5分……少なくてもあと3分は粘ってもらわないと困る!



 そう判断した俺はライトニングスパローの力を借りて高速移動し、プリプリショートの体を支え体勢を立て直させた。



「今のは……」



 アリステラに気付かれかけた!流石ドラグニカから来た優等生だ!次は無いな……あとは頑張ってくれ!プリプリショート!



 体勢を立て直したプリプリショートは扇を振り竜巻を放った!砂を巻き上げ、砂塵となりアリステラの体を飲み込む。



 これには流石のアリステラも苦悶の表情を浮かべていた。



「あはは! これが私達の実力よ! 分かったかしら! 貴方が大した事ないって言った私達の力を!」


「くっ……」 



 よしよし!アリステラも苦戦し始めた。恐らく次の一撃が最後に放てる技だろう。



 彼女の戦機ドラグナートは火力が高い代わりに燃費が悪い。基本は一撃必殺だからな。



 最初の攻撃で仕留めきれなかった時点で勝率は4割削られていた。



 まあ、俺が妨害した結果なんだけど……悪いな。これもあんたの学校生活と俺達の未来の為なんだ。



「これでお終いよ! 風香!! 巻き上げなさい!」


「ぐっあぁっ!?」



 砂塵が激しく舞い、中のアリステラを飛び交う砂利で傷つけて行く。



 だが傷付きながらも、その手に握られたドラグナートは火を絶やさず燃やし続けていた。



 それは一瞬の隙を窺うように……いつでも放てるように力を蓄えているように。 



「あはは! どう? もう諦めたらどう? もう貴方に勝ち目はないわよ!」


「勝ち目がない? 言ってくれるじゃない!」



 砂塵の中に炎の灯りが輝きを増す。



「貴方達の実力……確かに甘く見てたわ。それについては謝罪するわ……ごめんなさい――でも」



 ドラグナートの炎が解放され、砂塵を火砕流に変えた!



 竜巻はプリプリショートの制御を離れ、アリステラの制御下に入った!



「勝つのは私よ! ドラグナートッ!!」


「嘘!? 風が……言うことを聞かない!」



 決まったな……アリステラは竜巻の制御を奪えるだけの魔力をドラグナートに送り続けていたんだ。

 痛みに耐えながらな。流石メインヒロイン……俺の恋敵だ!



「うおぉぉぉぉぉ!!!」



 アリステラがドラグナートを振り下ろすと、火砕流はプリプリショートを飲み込んだ!



「キャァァァァァァァ!!!」



 プリプリショートは火砕流の中を舞い……地上に落下しHPが底をついた。戦闘終了だ。



「勝った……勝ったわよ! 鈴芽!」


「うん! やったわね! アリステラお姉ちゃん!」



 パチン!とハイタッチを交わし俺達は勝利を喜んだ! 



「完敗よ……貴方、強いのね」



 立ち上がったプリプリショートがアリステラにそう言った。

 


「いや。私の力はまだまだよ……慢心し過ぎてたわ……貴方達の実力も正しく測れず、あと少しでも力の差が開いていたら私の方が負けていたかも知れない……この程度とか侮辱する発言してごめんなさい……」



 そうアリステラは初めて頭を下げた。元々、日本の下町文化を調べていたぐらいだ。謝罪で頭を下げることも知識としては頭に入っていたんだろう。



「いいのよ? 頭を上げて? 貴方、噂の明日からくる転校生でしょ? 自己紹介するわね。私、2年の荒風穂乃果よ」


「私はアリステラ・バーンズウッドよ。良い勝負だったわ。ありがとう!」



 2人とも互いに健闘を称え合って良い雰囲気だ。

 これでアリステラが虐められるバッドエンドは回避だろ。



「ところで君は? アリステラさんの妹さんなのかな?」



 プリプリしてたはずの穂乃果さんが、優しいお姉さんになって俺に話しかけてきた。



「わ、私は……その〜……」


「鈴!?」



 穂乃果さんの質問に言い淀んでいると、俺の心臓が跳ね上がった。正確に言えば鈴芽の鼓動が早まった。



 そう。この呼び方は愛する大好きなお兄ちゃん……雪也の物だ。



「何やってんだ! 鈴、こんな所で……家で寝てないとダメだろ?」


「雪にい……あ、あはは。体調が良くなったから散歩してたら来ちゃった? テヘ」



 そう俺は頭をコツンと叩きながら舌をペロっと出した。



「ゆ、雪也くん! この子の知り合いなの?」



 穂乃果さんが頬を赤らめながら雪也に聞いた。

 この反応……穂乃果さんは雪也の事を意識してるな? メインヒロインでないにせよ要注意だ。



 ここは俺が知ってる本の世界であって、設定とは違うんだからな。穂乃果さんと雪也がくっつく未来も十分あり得る。



 そう考えると胸がズキンと傷んだ。嫉妬だ……鈴芽の諦めた恋心がまだ諦めきれず、他人を羨む心の痛みだ。



 ラノベの描写でもあったな。ヒロインと雪也が仲良くする度、鈴芽は影で心を痛めてた。



 だけど大好きなお兄ちゃんの幸せを思って目立たないように……自分の本当の気持ちに蓋をしてたんだよな。



 俺はそんな意地らしくもお兄ちゃん思いな鈴芽が好きなんだ。大丈夫……俺が鈴芽を幸せにしてみせるよ。



 任せな? お兄ちゃんと鈴芽が血の繋がった兄妹という壁を乗り越えた恋人になれるハッピーエンドを掴んでみせるから!



「うん。この子は俺のたった1人の家族……妹なんだ」


「「「えええええええええ!!!」」」



 俺の決意とは関係なく、雪也が周りに紹介し俺の周りを生徒達で囲まれた。



 たった1人、アリステラだけが雪也の存在に首を傾げていたが……それはまだ雪也が男にも関わらずこの学校に通っている事を不思議がっているからだろう。



 その理由を知るのは明日なんだけどな。



 俺はそれから10分ほど周りの生徒達に質問攻めにあった。質問の内容のほとんどは雪也関係だ……



 そのすべての質問に対し俺は嘘をついた。

 何故って? そりゃ少しでも恋のライバルを排除する為に決まってんだろ!



 これが転生した俺ができる唯一の推し活なんだからな。

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