表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/112

1話 ばか!

 こんにちは、こんばんは、またはおはようございます。

 九条鈴芽です。

 色々あって家族がほとんど捕まって、親は蒸発したけど――お兄ちゃんと二人、仲良く毎日を生きてます。



 違ったわ……。もう一人いたんだった……。



 『鈴芽ちゃ〜ん! 俺のこと忘れないでよ!』



 はい、こいつもいました。

 大樹です。おっさんです。

 信じられないわよね? 十代の女の子の中に四十のおっさんがいるなんて……。

 まぁいいや。そんなこんなで私たちは桜場アビスを解放したわけだけど、まさかまさかのお邪魔虫が現れちゃった。



 『品川アカリだね?』



 うんうん、その通りよ。

 品川アカリ――一見清楚な金髪の女の人。

 蓋を開ければ関西弁のガサツな人。

 そして大樹が言うには、二人目のメインヒロインだったわよね?



「そうそう。原作二巻でお兄ちゃんが攻略するメインヒロインだね〜。時系列的には来てもおかしくない時期だけど……」



 ってことは、この世界はあんたの見た通りの道筋を通ってるわけね。



 『若干違うのは鈴芽ちゃん周りだね。特別強化実習生になってから歪に改変されてるし……』



 特殊部隊の一員にもなっちゃったしね……。

 ちなみに私が自衛隊所属なことは、お兄ちゃんとアリス、あと学校で言ったら柳先生しか知らないはずなんだけど……。



 『まさかまさかのアカリが知っちゃってるんだよね〜』



 これってさ? 原作でもそうだったの?



 『いいや。品川アカリは関西の戦闘学校ブレイドから来たのは合ってるけど、自衛隊については何も知らなかったはずだよ? それにもう一つ、結由織沙織についても気になるね』



 新しく赴任した担任ね?

 原作にはいなかった、今のこの世界のトップウィザードよね。

 そういえばあんた、結由織先生の態度が豹変した時、何か気づいたっぽかったけど……なんなの?



 『あーいや。多分気のせいだから大丈夫……』



 怪しいわねぇ。

 ま、それはそれとして一番厄介な状況が今なんだけど……。



 大樹との脳内振り返りを程々に、突っ伏した机から顔を上げてチラリとお兄ちゃんの方を見る。

 そこにはお兄ちゃんこと――九条雪也が、噂(脳内)の品川アカリに言い寄られて顔を赤らめていた。



「え〜。雪也君って彼女おらんの〜? こんなに女子に囲まれとるんやから〜。一人ぐらい彼女作ったんやないの〜?」


「いやいや。俺なんかが烏滸がましいって」


「え〜。こ〜んなに逞しい体しとんのに……。勿体ないなぁ……。せや! ウチが雪也君の彼女に立候補しよっかな〜……なんて」


「うぇ!?」



 唐突に腕に抱きつかれたお兄ちゃんが、素っ頓狂な声を上げた。



「ちょっとちょっと! あんた何やってんのよ!」



 急いで席を立ち、品川アカリ――もとい泥棒猫からお兄ちゃんの腕を奪還した!



「え〜。ただのスキンシップやん? そんなカリカリせんとってぇな。お鈴ちゃん」


「お鈴言うなー! シャーッ!」



 挑発的な笑みを向けてくるアカリの手を、高速猫パンチで引っ叩いてやった。

 彼女は叩かれた手の甲を撫でながら、ニマァと私を見る。

 なによ。その目、めちゃくちゃムカつく!



「お鈴ちゃんはただの妹ちゃんやろ? 別にお兄ちゃんが誰と付き合おうが関係ないやん。それともなにか? お鈴ちゃんはお兄ちゃんを誰かに取られるのが嫌なんかな〜?」



 言われてびくりと肩が跳ねた。

 こいつ……分かってて私を挑発してるんだ!

 きー! まじでムカつく! ムカつくムカつく……ムカつくぅぅ!!



 『あらら。ここは俺が出ようか? 鈴芽ちゃん』



 そうだわ。こっちには、あんたのことを知り尽くした神の知恵を持つおっさんがいるんだった!



 『頼むわ大樹。こいつをバフン!と言わせちゃって!』


 『バフンって……。そんな馬のうんこみたいな……』


 『なんて!?』


 『いえ! なんでもありません!』



 体の主導権を大樹に譲る。

 今に見てなさい。四十の大人の余裕を、あんたに見せつけてやるんだから!



「アカリさん。今お兄ちゃんが取られるのが嫌だって言ったわよね?」


「せや? 言ったで? なんや違うんか? ならウチらの邪魔せんとって欲しいな〜」



 挑発的な顔をこちらに向けながら、お兄ちゃんの腕にしがみついた。



「お、おい! 品川さん……いぃっ!?」



 むにゅむにゅと胸をお兄ちゃんの腕に押し当てだした。

 お兄ちゃんはアカリの慎ましやかでありながら確かに存在する胸の柔らかさに、ドギマギした様子で顔を紅潮させている。



 なんて羨ましいんだ! 俺もその胸で誘惑されたいぞ!



 『大樹……』



 はっ! いかんいかん……。我が女王陛下がご立腹だ。

 ここは迅速かつ丁寧にお兄ちゃんを奪還せねば!



「おほん! アカリさん、そういう淫らな誘惑はやめてちょうだい」


「え〜。ウチがどんなことをしようがお鈴ちゃんには関係ないと思うんやけど〜?」


「だめ! お兄ちゃんの腕と体は私のものなんだから!」



 そう言って俺はアカリの体を突き飛ばし、お兄ちゃんの腕を奪還!

 そして女王陛下に捧げる玉座(膝の上)を手に入れた!

 如何でしょう女王陛下……。この腹心――日向大樹、貴方のために全力を尽くし、愛する兄を奪還いたしましたぞ!



 『な、なななな……』



 感動のあまり言葉が出ないようだ。

 我ながら上手くやった。

 これは鈴芽ちゃんからのデレた褒め言葉をもらえるに違いない。



 『なにやってんのよぉぁ!』



 あり? 俺、何か間違えちゃいました?



「ぷっ! あはははは! お鈴ちゃんってお兄ちゃんのこと好きすぎやろ〜!」



 アカリは大袈裟に笑い出した。

 周りを見ると、この場を見ていたクラスメイトたちが微笑ましげにこちらを見ている。



 チラチラ聞こえてくる言葉は――「やだ、可愛い」だの「お兄ちゃんっ子だったんだ」だの、鈴芽ちゃんの新たな一面に気づいているようなものばかりだ。



 一番反応が気になったお兄ちゃんの顔を振り返って見てみると、はぁ……とため息を吐いて首を振っている。

 なんだよ! お前の大事な妹ちゃんが全力でアプローチしてんだぞ? 少しはドギマギしたらどうなんだよ!



「鈴……とりあえず降りような」



 言ってお兄ちゃんは俺の脇を持ち上げ、膝から下ろした。

 玉座が抵抗しよる……。なんて無礼な玉座だ。



 『無礼はあんたよ! この馬鹿!』


 『あひん! ごめんなさい!』



 おかしいな。俺、間違ってないよね?

 なんで怒られてんだろ……。



 『もういい! あんたに頼んだ私が馬鹿だったわ……。体を返しなさい! 今すぐにッ!』


 『は、はい!』



 言われて俺は魂の奥へと追いやられた。



 はぁ……。大樹のバカにも困ったもんだわ。

 さて、この場をどうしようか。



「まさかお鈴ちゃんがブラコンやったなんてな〜。悪い悪い。邪魔したな? でもウチが雪也君の彼女になっても恨まんとって〜な? 彼女を作る作らんはお鈴ちゃんやないんやからさ」


「う、うるさいうるさい! あんたなんか嫌いよ! あっち行って!」



 顔で焼肉ができそうなほど熱くなりながらも、アカリをこの座から追いやった。

 彼女は最後までニヤニヤしていて、お兄ちゃんに手を振っていた。

 お兄ちゃんときたら鼻の下を伸ばして手を振り返してる……。



「馬鹿お兄!」



 ギロリとお兄ちゃんを睨みつける。

 すると、ハッとしたお兄ちゃんは手を引っ込め、口を尖らせながら話し出す。



「な、なんだよ? 品川さんに手を振り返しただけだろ?」


「鼻の下伸びてた……」


「はぁぁ!? 俺だって男だぞ! 女の子からあ、あんなアプローチされたらそりゃそうなるって」


「えっち! ばか! 猿! 下半身天狗の鼻!」


「ばっ!? や、やめろ!」



 私は逃げるようにお兄ちゃんから離れて自席に戻った。

 ふんだ! お兄ちゃんなんか知らない!

 今日の晩御飯はツナ缶にしてやるんだから……。



 『だからって“下半身天狗の鼻”は言い過ぎじゃ……』


 『なによ! 文句あんの?』 


 『あ、ありません! 女王陛下!』



 私は再度机の上に突っ伏して、本日最後の授業開始を待った。

 お兄ちゃんの周りには、クラスメイトの女子たちが興味津々で下半身をチラチラ見ているのが見えた。

 このクラスには変態しかいないみたいね。

2部突入です。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

もし面白いと思って頂けたら

評価とブックマークをして頂けると励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ